秦野夢人という人間
前書きに代えて、自分の半生と少しフィクションを足し、永遠に失われた故郷を描いて行きたいです。時は1996年 私は海にも山にも近い町に生まれた。あの頃はまだ地区に活気が溢れていた…。
―小学1年―
幼稚園をとりあえず卒園して、小学校に入学した。
「夢人!幼稚園のお友達の大河くんと隆太くんと同じ組じゃないのー。よかったねー。」
母親が言う。そんなのどうでもいい。とりあえず誰にも邪魔されなければいい。そう思っていた。母親と一緒に教室までの道を歩く、手を繋ぎながら。そして教室に入る…。
//がらっ…!
ガヤガヤガヤガヤ…
まだ担任は来ていないようだ。そして席につく。
「美咲〜おっはよー。」
「栞ちゃん?はじめましてだね。よろしくね?」
「おー。さとかいじゃん。小学校でも鬼ごっことかしような。」
等々、声が氾濫しているなかで席につく。俺に話しかけてくる人は本当に少ししかいない。幼稚園が同じでも、一言も話さない人もいる。そんな中、ただ一人だけが話しかけてくる…。
「秦野夢人くんだよね?はじめまして!佐倉翔平です。よろしくね。」
知らない名前だった。
「うん。よろしく、」
まあ…そう返すしかない。だが。翔平はこの後中学終わりまでの長い友達となる。どうして仲がそこで切れることになったのかはいずれ書く。
そんなこんなで、担任が来た。
「はーい。皆さんはじめまして!担任の小野千佳と言います。これから一年みんなと過ごして行きます。よろしくお願いいたします。はい。起立」
注目、礼。 着席。
これは、この県独特の朝の挨拶。注目は朝の挨拶で普通言わないことを知ったのは高校生になってからだ。そしてここから、長い長い小学校六年間が始まる。