現状確認
長らく請け負っていた案件も終わり俺は寮の部屋でくつろぎながらこれからのことを考えていた。
ちなみに結納金はそこそこ払ってきた。払わなくても良かったんだが、んーなんというか男の甲斐性?というか…わかるだろ?
ただまぁ…いくらスキル「獲得資金アップ」でレアドロップ率が上がっているとはいえ……
学校の授業じゃ村でやってたような出会う魔物片っ端から殲滅なんて真似はできないわけで……
おまけに最近までミームのドレインに苦しめられてたしな。
活動時間が短かったためあんまりお金は稼げていない……ため、ポンとお金を出してかっこ良くとはいけなかった。
それでも金剛棒のメンテの時に提示された価格の2倍は払ってるんだよー…とまぁ関係ない話か。
ミームが人型に顕現したのはだいたい一ヶ月くらい前の話だ。
そこから対話を持って色々取り決めをし今に至るというわけだ。
例を上げればかってに俺から魔力をドレインしないとかだな。
おかげで戦闘はずいぶんやりやすく「シジー」んーミームが呼んでるな。
「魔力ちょうだい」
と、剣から体を伸ばしてここまでって……足の部分がスライムみたいにうにょーんと伸びて俺のそばまでやってくる。ちょっと気持ち悪い。
剣のそばでは完全な人型を投影することができるが離れたり触れたりするなら電気のコードみたいに精霊石とつながっていないといけないらしい。
「んー」と人差し指を差し出してやると指をペロペロと舐め始めた。別に舐めなくても接触だけで魔力は吸い取れるはずなんだがなぁ…
今のミームの大きさはだいたい手のひらサイズ。雰囲気も武器屋での姿よりちょっと幼い感じだ。
しばらくして満足したのか「ごちそうさまでした。」といったあと「えへへっ」っと顔を手のひらにすりつけてきた。
うん、二人っきりの時のミームはかなりのあまえんぼさんだ。
具体的に言えば寝るときに剣と一緒に布団に入ることを要求してくるぐらいに。
まぁいちおう育ての親?にはなるのでこの行動も理解できるのだが、武器屋の一件は本気なのかからかってるのかわからない。
もっとも俺は武器屋の時の美人だけどちょっと鋭さのある雰囲気のミームよりはこっちのどちらかと言えばかわいい系のあまえてくるミームのほうが好きだ。
娘みたいな感覚である。
それはさておきこれからのことである。
冒険者学校も2年目になり迷宮が開放された。
迷宮ってなんだって?ググれ。
だいたいそんな感じでモンスターと宝箱の生産装置みたいなもんだ。
迷宮のモンスターは全部魔素で出来てるらしいので精霊貨を稼ぐにはもってこいっぽいんだがここで障害がひとつ。
「ダンジョンには3人以上のパーティで挑むこと。」
……コレである。このせいで俺は未だダンジョンに挑戦できていない。
ちなみにこの一年を過ごした俺のまわりの評価は
レアドロップの多い幸運男
魔力喰い(マジックドレイン)の邪剣使い
生き物から命を奪う吸精鬼
……うんまともなの最初のやつだけだな。
一つ目は魔物を倒した時の結晶部位の当たり率が多いことからだ。コレも結構妬みかってる。
二つ目はミームがまだ成長してなかった時の影響だ。
ミームの本体、無明はとても美しい剣なので盗んでいこうとする奴が頻発した。
だがそれを片っ端から魔力欠乏症にしてしまったので邪剣……中の精霊が悪意を持って人に仇なすようになった物……と勘違いされてしまったのだ。
俺はまだ中の精霊が成長途中だしそういう意志がないのはわかっていたから気にせず使い続けていた。
だが無明を使っている時の俺の顔色がひどく悪かったのがその噂に拍車をかけているらしい。
コレも邪剣使いというのでいつ精霊に意識を奪われ暴れられるかわかったもんじゃないと恐れられてる。
三つ目は……うん、あれだ。俺はギフトで精霊貨というものを入手できるようになっているんだが、これは倒した魔物から光の粒子が出てきて俺の中に吸収されるというプロセスを取る。
……これが魔物の命を吸い取っているようにみえるらしい。
んで上の評価と当時の悪評(無明がらみであることないこといろいろ)も合わさって今もこそこそ噂されていると。
コレ誰だよ!吸精鬼だなんて言い出したやつ!俺はインキュバスや吸血鬼じゃねーぞ!
というわけでつまりは最悪である。ちなみに友達はいない。いたらさっさと迷宮に行ってる。
「仲間探しか…」
つぶやきつつそれが簡単には行かないであろうことを予感し溜息を付くのであった。