武器屋巡り
なんだかんだで学校が始まった。最初は座学ばかりである。
冒険者の心得その1から始まってとにかく冒険者に必要とされるであろう知識をつめ込まれた。内容はググれ。
そんなある日の休日。唐突だが武器屋巡りである。
世界通販で付加価値のいい武器買いたいんだが現在精霊貨の残高がほぼ0。精霊貨を稼ぐには魔物を倒さないといけない。
村で使っていた「伸縮金剛棒」はクリティカル補正の付いたいい武器だがちょっと体にサイズが合わなくなってきている。成長期だしね。帯に短し襷に長し状態だ。
魔力を込めれば大きさも変わるんだが待機状態での取り回しにちょっと不便を感じる。
せっかくなので贅潤な資金でのオフラインショッピングもいいだろう。
「鑑定」のスキルを使い数軒ひやかしてまわる。
まぁ武器の種類はいろいろあったが「伸縮金剛棒」に代わる物となるとこれまた見つからない。
ランクを数ランク落として探しても見たがコレもない。
これは伸縮金剛棒を使い続けるか?と考え始めたところでその店に出くわした。
「武」
ただその一文字が掲げられた看板は「あれって日本語じゃねーの?」と興味を惹かれるには十分なシロモノだった。
「おう、ぼーず。ここがなんの店だかわかってるのか?」
店に入るなりいきなりカウンターのおっちゃんに凄まれた。
まぁあの看板じゃ普通なんの店かわかんないだろうしね。
「武器屋じゃないのか?」と答えるとしぶしぶ中に入れてくれた。
「で、誰の紹介だ?」
おう…意味がわからない…ぶらついてて看板見つけたから入ったというと驚かれた。…そういやあの字は日本語でしたね。
とりあえず昔見た本にこの店の看板のマークのあとに武器の絵がズラリと並んでいたのを見たことがあるとごまかしておいた。
何でもこの店はおっちゃんの親父さんが建てた知る人ぞ知る店らしい。
個人ランク……要するにレベルの高い冒険者達が結構頻繁に利用しているそうだ。
もしかするとその親父さんは転生者か?とも思ったがそういや日本語って古代文字っぽかったんでしたね。
「で、何を探してるんだ?」
自分で見て回ろうとしたのだがおっさんがついてくる。
あーそりゃまだ12のガキにあちこちいじられたくはないか。
値段も高そうなのが揃ってるし。
仕方なく「使ってた武器のサイズが合わなくなってきたので代わりのものを探している」と伸縮金剛棒を取り出し見てもらう。
「ほー、こりゃたしかにお前さんの体格にはには合わなくなってきて…ってちょっと待て。コレ魔装武具か!」
精霊石を埋め込み魔力を込めて精霊の力を引き出し力を使用するのが魔剣等の魔武具。
に対して完全に使用者の魔力のみで力を引き出すよう設計されているのが魔装武具である。詳しくはググれ。
まぁなんで驚いてるかって言うと魔装武具っていうのは実戦で扱えるものが少ないっていうのと単純に数が少ないからだ。
って言うかひと目で分かるおっさんに驚きだよ。
「な、なぁちょっと使わしてもらってもいいか?」となんか興奮しながら言うおっさん。
「良かったら買い取ってもらってもいいんだぜ」と言ったらこの店の武具全部売っても足りんわと怒られた。そういや希少価値高いんだった。
にょんにょんと棒をゆっくり伸び縮みさせてるおっさん。おい、案内はどうしたんだ……まぁそれならそれでかってに見て回りますか。
ゆっくりと店内を見て回る。
ほーさすがに高レベルの冒険者がよく利用しているだけのことはある。
今日回った店の中でも段違いの性能だ。
…お値段も高いが。具体的には贅潤だと思ってた資金が軽く吹っ飛ぶくらい。
冒険者学校ではクエストを受けられるようになるのはまだまだ先だ。
対魔物戦闘の授業にしてももう少し先の事になる。
つまりはそれまでお金が稼げないわけで…ここで資金を全額つぎ込んでしまったら極貧生活確定である。
というか今住んでる寮を追い出される。
指をくわえながら見て回っているとある剣の前で立ち止まった。
―――美しい―――
一目見てそう思った。
光を受け白銀に輝くそれはそれだけでひとつの芸術品。それ以外の余計な装飾などいらぬとでも言うかのように佇んでいた。
しばらくぼーっと見惚れていると「ふん、それは失敗作じゃぞ。」と声をかけられた。
振り返ると頑固そうなじーさんが立っていた。
「ただ美しいだけの魔剣なんぞ戦闘でなんの役にも立たん。」
じーさんはそう言いながらおっさんの方へ歩いて行くと頭を小突いて説教を始めた。
「美しいだけねぇ……」と気になった俺はこの剣を鑑定スキルで見てみる。あれ……これって……
「おい、坊主。ちょっとこっち来い。」
おっさんではなくじーさんがお呼びだ。
……話の内容はよーするにお前この武器、伸縮金剛棒を扱えるのか?という話だった。
というわけでちょっとしたお披露目である。
俺は両手で構えるには少し短くなってしまった金剛棒(待機状態)に魔力を通し長さを調節する。
今の自分にちょうどいい長さにしてから壁から10メートルほど離れる。
その場所から両手で構えて壁に向かってドドドンと3連撃。
すべて金剛棒の伸縮機能を利用した連撃であr……痛ー!頭を小突かれた。
「阿呆!うちの壁を壊す気か!」
……怒られた……やれって行ったのあんたじゃねーか。
「まぁこのレベルなら実戦でも十分通用するじゃろうな。」
……本気じゃないですよ?手加減してますよ?……とりあえず爺さんのお眼鏡にはかなったようだ。
「体に合わなくなったということじゃが……待機状態を調整してやればまだまだ使えるじゃろ。」
お、まじですか?お値段の方は?……うん結構取られますね。資金の半分くらい。
それにしても魔装武具をメンテナンスできる人間がいようとは……あ、ググればよかったのか。
なんかトントン拍子にうまくいきそうなので気になってたもう一つ、失敗作と言われたあの美しい魔剣はいくらなのか聞いてみる。
「あーあれはな、魔力を通さない魔剣なんだ。希少な金属、珍しい精霊石を使わせてもらって打ったんだけど結果はご覧の有様さ。材料費だけでこの店のどの武器よりも高い。だがなにぶん人目だけは引くからな。戒めとして見える場所に飾ってあるのさ。」
と、バツの悪そうなおっさん。あれ?だけども鑑定の結果は……
「ふん。おおかた鑑定のスキルでも使ったんだろうが無駄じゃぞ。確かにあの魔剣に宿ったのは『魔力を喰らう精霊』で『未覚醒状態』じゃ。盾にでもしておればまだ使えたんじゃろうが……お前さんのような使い手じゃと「美しいから」だけで購入するようなバカではないじゃろう。おおかた「覚醒させてやればなんとかなるんじゃないか?」とでも思ったんじゃろうが……そもそも精霊を……」……長い。説明だから後でググっとけ。
要するに「精霊の覚醒には長い年月がかかる」「覚醒させても魔力を喰らう精霊だから魔力で力を引き出すことはできん」「魔剣としては失敗作だから諦めろ」と。
だが我に秘策あり。と言うかチート使うんだけどね。「俺に任せてくれれば1年。1年で覚醒させてみせる!」なーんて言って説得してみた。
なんか面白そうだし。転生テンプレでいうならイベントはこなさないとね。
長い話し合いの結果最終的にしぶしぶ納得してくれた。
ただし魔装武具の伸縮金剛棒を担保に持って行かれたが。
もしバックレたとしてもコレなら捨て値で売っても十分すぎるくらい元が取れるとか。
どんだけ価値あるんだよ。これじゃ兄貴に渡した「身代わりの精霊石」もやばくね?
といっても今兄貴がどこにいるのかわからんが。騒動に巻き込まれてないことを祈ろう。
……金剛棒を担保にされると言われた時、内心ぶっちゃけて言えば「持って行かれても最悪世界通販でまた買えばいいし~」と思っていたのは秘密だ。
というわけで俺は新たなおもちゃを手に入れたのだ!……あれ?俺武具買いに来たはずだよね?
さてここで俺のギフト。転生特典の精霊貨獲得について説明しよう。
俺が神様に願ったうちの一つは「敵を倒したら前の特典(ギフトで言うなら世界通販がそれに当たるな)で使える仮想通貨を入手できるようにしてくれ」というものだった。
俺が魔物を初めて倒した時光の粒子が魔物から出てきて俺の体の中に吸収されていくのを見た時には驚いたものだ。
そして特典で頼んだ「世界中のものを手に入れることのできる通販」で使えるお金が増えていた。
だからこの光は経験値獲得の光でそれと一緒に特典の通貨も手に入れてるんだろうと考えていた。
実際は他の人が倒した時に光の粒子なんて出なかったわけだが。
そしてしばらくして「鑑定」のスキルを覚えてからこの光の粒子を鑑定してみたらこんなのが出てきた。
精霊触媒:
魔物に含まれる魔素が浄化され精霊の側に近しくなったもの。精霊の好物であり精霊の成長を促進させる。
精霊の好物が貨幣になるなんて…なんて思ったりもしたが特に自分に害があったりするわけではないのでスルーしていた。
例の借り受けた剣…あくまで借り受けただけである。
名を無明。キラキラと輝く剣なのに無明とは…あのおっさんなりの皮肉なのだろう。
剣の中の精霊が未だ覚醒していない。つまりは未成長な状態であると見る。
そこへ精霊の成長を促進させる精霊触媒を与え続ければどうなるか?なかなかに楽しみである
……だがしかし
「魔物との戦闘訓練は少なくとも3ヶ月後なんだよぉー」
……期間もうちょっと多めにとっておいたほうが良かったかな?




