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助かる方法は!?

「アリス!!」


 俺は横たわるアリスに駆け寄る。体のあちこちにヒビが走り今にも崩れ落ちそうだ。その隙間からは血のような赤く鈍い光が漏れている。


「え、えへへ。やられちゃった……」


 力なく微笑む笑顔が痛々しい。


「すまない。俺が目を離したばかりに」


 俺は空間収納からいざというときに用意しておいた「蘇生薬」を取り出しアリスにふりかける。

 これは死にかけている人間を全快にまで回復してくれるとっておきだ。

 だが俺の思惑に反してアリスに刻まれたヒビは治らない。どういうことだ?


 訝しがる俺に、アリスは俺の目を見つめ、


「手、握ってほしいな」


 とつぶやく。俺はなんだか嫌な予感がし拾っておいた女の腕を握らせる。


「そうだ!あいつの一部を切り落としたんだ!これさえを取り込めばこんな怪我すぐに「ダメだよ……」 え?」

「もう……そんなチカラ……ノコってない」


 俺を見つめながら淡々と言うアリスに俺の血の気が引いていく。


「嘘だろ!嘘だと言ってくれ!!」


 そう取り乱す俺にアリスは微笑むばかり。くそう!どうしてこんなことに……俺のせいだ!俺があの時アリスを守ることに徹していれば……

 アリスの手が力なく空を掻く。俺はその手を両手で包み込むと思考の海に没頭していく。





 蜜林さんで回復薬の検索をする。悪魔を回復する薬と指定。

 HIT!あった!「万能復活薬」。値段は……高すぎる!

 「復活薬」ですら迷宮都市に出かけた時に手に入った精霊貨を2回分ほどつぎ込んで手に入れたものだ。それの10倍以上とか……とても手が届かない!

 他にはないか蜜林さんを探しまわる。いくつかあったが悪魔にも効果があると謳っているのは「万能復活薬」だけだ。もしくはそれよりも効果の有りそうな名前の物……残念ながらそれらも高すぎて手が届かない。


 ぐぐーるさんはどうだ?

 「悪魔 回復方法」で調べる。出てきたのは


「生贄を捧げるという……」

「生贄を捧げてみても……」

「生贄を捧げた結果……」

「生贄を捧げたのですが……」


 頭のなかでページをめくるがどれも出てくるのは「生贄」の文字ばかり。くっ!……それに他の悪魔を取り込むとかの情報が出てこない!

 明らかにそういった情報が隠されている。そのことに憤慨しながらも他のワードで検索を続ける。


「悪魔 回復」

「悪魔 蘇生」

「悪魔 復活」


 ……くそう!どれもこれもこの場で役に立つ情報が出てきやしねぇ!


「シジ……あたしこのままシンジャうね。

 でも、サイゴにシジにイッておきたいことが……」


 「違う」「ちがう」「チガウ」そうじゃない!お前は助かる!助かるんだ!今必死にその方法を探してるんだ!なのにどうして俺の思考の邪魔を……違う。落ち着け。冷静になれ。

 俺は深呼吸を一つして心を落ち着かせる。アリスがなにか言っているようだが頭に入らないように追い出す。集中!集中するんだ!


 アリスは悪魔だ。俺はアリスと出会ってからのことを必死で思い出す。何かそこに手がかりはないか?何かそこに助ける方法はないか?悪魔には何が必要だった?


 契約……そうだ!契約だ!契約によって魔素を集めることによって力を……って魔物のいないこの場でどうやって魔素を集めればいい?くそう!これもダメだ!


 魔素……魔素を集める方法……俺はアリスの手からこぼれ落ちたあの女の腕を見つめる。アリスはこの腕を吸収できない。なら俺がいつもミームにやっているように一旦俺が取り込んでアリスに譲渡のスキルを使えば!!


 はっと気がつけば俺が包み込んでいるアリスの手の上にミームが乗っていた。アリスとなにかしゃべっているようだ。……魔素を取り込んでも大丈夫か?魔物化してしまうのではないか?そうなったら残されたミームはどうするんだ?そもそも魔物化して理性を保っていられるのか?


 くそう。俺が譲渡のスキルを使うというところまではいい考えなんだが……いや待てよ。ミームにいつも与えている精霊貨は何だった?魔物を倒して出てくるあの光の正体は何だった?あれは魔素を浄化したものだ!





「アリス!今から渡すものがある。少し辛いかもしれないが受け取ってくれるか?」


 精霊貨は魔素を浄化したもので魔素そのものではない。もしかしたらアリスの体に不調が起こるかもしれない。最悪……俺は頭を振りその想像を振り払う。


 アリスは頷くと目を瞑る。若干唇を前に突き出してるが……何だ?いいや今はそれよりも!

 俺は余計なことを追い出すように頭を振るとアリスを包み込む手に意識を移す。


 「どうかこれでアリスが助かりますように!」との思いを込めて譲渡のスキルで俺の中にある精霊貨をアリスに送り込んでいく。

 それに対してアリスはうめき声を上げ続ける。本当にこれでよかったのか?他に方法があったんじゃないのか?不安と後悔に押しつぶされそうになりながら俺はアリスの手を強く握り続けた。





 どのくらいの時間、祈るようにそうやっていただろうか。


「うーうううう……まずぅー」


 譲渡を行っていた間ずっとうなっていたアリスがうめき声以外の声を上げる。アリスの体を見ると今にも崩れそうに入っていたヒビが跡形もなく消え去っていた!やった!成功だ!


「大丈夫かアリス。どこかまだ具合の悪いところはあるか?」

「大丈夫……というか延々嫌なものを食べさせ続けられたような……うっぷ。きもちわるい……」


「よかった……」


 俺はそのまま勢いに任せてアリスを強く、強く抱きしめる。


「ちょっちょっと、痛い!痛い!ちょっと緩めて!」


 叫ぶアリスを無視してそのまま抱きしめ続ける。

 よかった。本当によかった……

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