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買い出し

 買い出しを忘れてた……食材を切らしていた俺達は朝食を保存食で済まし買い物に出かけることにした。


 借家からほど近い王都西区の通称西の市場へと足を運ぶ。

 途中魔物退治の買い出しに来ていたロンデリカの姐さんと一緒に回ることにする。

 ロンデリカさんは茶髪のくせっ毛を肩のあたりまで伸ばした姉御肌の人だ。

 武器屋の縁で何度かパーティーも組んでいたりする。

 なんでも竜種の下位に位置するギーターリザードの頭を退治に行くそうで今回の買い出しはそのためだとか。


 普通こういった魔物退治の準備には冒険者御用達店などを利用するのだが、今回の必要な品はあいにく扱っていないらしい。

 今回用意するのは高純度のお酒。

 人が飲むようなのではなくドワーフが好んで飲むような高度数のやつだ。

 竜種は総じて酒好きではあるが下位の竜種は酒に弱い。

 で、そういったものが入ってきてないか王都各所の市場をチェックしている最中なのだとか。


 「このへんの酒屋じゃ取り扱ってないからなぁ……」とロンデリカさん。

 酒場などでまれにドワーフ相手に振る舞われたりすることはあるらしいが、そもそも王都でも数の少ないドワーフにしか飲まれないため流通に滅多に乗らないのである。


 市場で食材の買い出しをしながら酒を扱っている店が出てないか探す。

 買い物をしながらハニーウッド製の携帯食を幾つか融通してくれとロンデリカさんに交渉された。

 ……あれ普通の携帯食より美味しいからね。

 先日の依頼で使った分で残っているので良ければと答えておく。姐さんは満足したのか俺の背中をバンバンと叩く。ちょっ、痛いんですけど!


 一通り見て回り今回はダメそうか?と思っていたところで市場の端っこの方で瓶の並んだ露店を見つけた。


 「ここはなんの店だい?」とロンデリカさんが聞くと「酒」と短く返ってきた。

 どうやらあたりのようだ。


 ロンデリカさんが店主と交渉を始めたため俺は待っている間分体を出しているミームと話をする。

 ここは珍しいものも多いのでミームはきょろきょろとして今にも飛び出して行きたそうだ。

 露天の品を指さして「あれはなんですか?」と聞いてくる。

 俺はなるべく女性を目に入れないようにしてそれに答えていく。

 ……せっかく機嫌が良さそうなのにわざわざ悪くすることもないしね!


 なんてことをしながら交渉が終わるのを待っているとロンデリカさんから「ちょっと……」と声がかかった。


 ……なんでも「せっかくの酒を魔物に食らわせるとは何事か!ほしいならちゃんと飲めることを証明して見せい!」とか言われたらしく……ええ!俺が飲むの!?


 「もしぶっ倒れてもあなたの家なら知っているから送っていけるし」「それともあなた、私を送って行ってなにもしないでいられる自信ある?」と挑発的な物言い。

 正直姐さんは筋肉多くて女性としてみた場合……なんてことは言わない。俺も命は惜しい。

 それにしてもまわりから見たら俺そんなに飢えた風に見えるのかなぁ?……実際飢えているんだが。


 ガラス製の銚子に注がれる赤黒い液体。

 強いアルコールのツンとした匂いが鼻につく。

 「火竜殺し」と呼ばれるその酒はドワーフの酒にしては強さの割に比較的安いらしい……酒に慣れていないと悪酔いするらしいが。


 「はぁ……貸し1ですからね」といって俺は銚子を取る。

 なんでも載ってる辞書を片手に持っているだけの俺と、実際の経験に裏打ちされた冒険者というのでは、やはりとっさの判断力で助けられることも多く…まぁ姐さんを始めとした武器屋経由の冒険者の人たちにはなんだかんだ言って貸しが多い。

 ……おちょくられることも多いが。

 姐さんなら面倒見がいいからぶっ倒れても俺をほっぽり出していくなんてことはしないだろう。


 俺は覚悟を決めると銚子をクイッと一気に煽った。

 アルコール独特の焼けつく痛みが喉を焼く。

 周りが早いのか、すぐにに心臓の音がやたらと耳につく。

 ふ~と息を吐き出し呼吸を整えると、ロンデリカさんに「これでいいですか?」と声をかけようとして……俺は意識を失った。

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