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F
「あー、肩こる」
気がつくと、いつもの口癖が出ていた。
「何それ、自慢?」
この返答も、耳が腐るほど聞いてきたものだ。
「違うって。いつものだよ」
「いつもの、ね」
ふーん、と鼻を鳴らしている。あ、虫の居所が悪いんだな。
「本当にね。大きくたって、いい事ないよ」
「私、胸の事なんて言ってないけど」
えー、そんな分かりやすい態度でそういう事言っちゃいますか。まあいいや、下手に逆らっても仕方ない。
「でもさ、アンタの方がスラッとしてて、洋服なんでも似合うから羨ましい」
「そうかもね。前に温泉で見たおばあちゃんなんて、可哀想な位下に垂れ下がってたし。私絶対ああなりたくない」
その時はお前も梅干しババアになってるよ。
そう思っても口には出さない。
全くこいつは、三年前の旅行の話をいつまで蒸し返すんだ。
逆に面白かったけどなぁ。私もいつか、振り回して遊びたい。
「いやホント、年取るのって怖いわぁ」
年取ったら、私もこいつも更に偏屈になってんのかなぁ。