ころころと……。
5日目、午後。
拓己にメールをすると、いつもどおりの返事が帰ってきた。
悩んでいる私が阿呆らしかった。
少しデートではしゃいだ事を思い出して、ふと笑えた。
あの時、制服を着た女子高生に「えー?」と言われたのを覚えている。
何でだかは知らないけど、たぶん拓己が私の隣にいたからだろう。
だって、彼女達の目は私達を見てはいても、私には向けられていなかったから。
あと、これは女子の感だけど、あの子達の目は男を見定める目だった。
拓己がすごいイケメンじゃなくてよかった。
言いよってくる女子もいなくて、本当によかった。
というか、人の彼氏を勝手に見定めないでほしい。
……とか、思ってる私が失礼?
そうだよね、私に対して、えー?って言ったのかもしれないし。
別に構わないけど……というか、同年代の子達は、やたらに男を見てる。
私が気付くと常に見てる。
そして批判してたりする。
顔が第一の世界にすむ彼女達は、性格なんて二の次なのだろう。
私は性格が一番。でも、やっぱり外見も少しは気になるから二番……かな?
あとは、特にどうでもいいや……。
それから、月日はながれ、唐突にその感情は訪れた。
私は、きっと拓己とはずっと一緒にいられない。
居たくないとかじゃなくて、きっと居られなくなってしまう。
人は、自分にないものに惹かれやすいという。
私と拓己は、よく似ていて、きっと、私達が学生だから出会えた人だと思えた。
拓己は、とても暖かい人で、ドキドキしないけど一緒にいるのは凄く心地よかった。
ずっと一緒にいたいとすら思えた。
だけど、わかってしまった。
ずっと一緒にはいられない。
きっと私と拓己は、結婚なんて出来ない。
形式が変わって、恋人から友達になっても一緒にいることはできるかもしれない。
私達はあまりにも価値観が似すぎているから、悲惨な別れ方だけはしないとわかるけど、一緒にいることはできないんだと、目の前が真っ暗になったような気がした。
一度は、もう人を好きになりたくないと思った。
一度は、もう誰かを傷つけたくないと思った。
そして一度は、また人を好きになるのも悪くはないと思った。
だけど、こんなに幸せで、こんなに目の前が真っ暗になるなら、人を好きになりたくないと思った。
思ってしまった。
何も感じない方が良いと思ったのにどうしてだろう、人は人を好きになる。
子孫を残すためだけなら、こんなに複雑な感情を埋め込まなくてよかったのに。
ただ、目の前が真っ暗になって、またいつもの時間が訪れる。
今、机に向かい、筆記用具を握る手も、ルーズリーフを押さえる手も、目の前に移る景色も、すべてに切り離されたような気がした。
まるで孤独を体感した時となんら変わらなかった。
時間が過ぎれば、きっとこのままではいられないことが嫌でもわかってくる。
わかってしまう。
私はその場に崩れて、空気と一体化して消え去ってしまいたかった。
拓己のいない日常は、つまらなくて、拓己と付き合ってからの日常は、楽しくて、幸せだと思えた。
どんなに距離が遠くても、ちゃんと私の事好きなんだなって伝わってきた。
会えないことも、半年が過ぎれば苦じゃなくなった。
織姫でもよかった。
でも、私達はいつまでも織姫と彦星でいることはできない。
私の周りに存在する光彩は、私にはあまりにも、あまりにも美しく、眩しかった。
この日常に、私は住んでいた。
きっとこれからも住み続けていくだろう。
だけど、私は……これ以上拓己を好きになりたくないと思ってしまった。
手を伸ばせばキリがなくなることは分かり切っていたから。
いつかどうせ訪れる別れが存在するなら、私は、これ以上拓己を好きにはならない……。
なりたくない。
それでも、また月日がすぎると人間っていうのは不思議なもので、いつか別れが着ても、それが今でないならそれでいいかなんて思えてしまうのである。
長い月日を経て、私たちは問題を越えていった。
きっと、これからも変わっていけるよね?
私はそう信じてる。




