8.あなたの名前は?
場所:ユーラブルク西部、ノネトリ村周辺
私は人と会うためひたすら歩いていた。
ずっと歩いていてもお腹が空かない。
「貴女は自力回復型魔法存在という分類の存在だから、もう何も摂らなくて良いの」
そっか、不老不死を目指してるのだし段々そんな感じになっていくのかな。
「怖いの?」
全然。ただもうお腹が空かなくて済むのは、少し嬉しいかなって。
「…そう」
「ところで貴女、名乗る名前はどうするつもり?」
あ、そっか。人間っぽく振る舞うにあたって名前は重要だよね。
うーん、どうしよう。
「血液を意味する"ヘマト"から取って、"ヘマ"なんてどうかしら」
ヘマ…それっぽいかも。
じゃあそう名乗ってみる。
「姓はどうするつもり?」
それは…レアさんのシヴグラードという姓を貰っちゃうとかどう?
「まあ良いんじゃない?」
じゃあ私はこれから「ヘマ・シヴグラード」って人間ということで。
「もうそろそろ発声練習でもしておいたら?」
あ、そうだ。それもしなきゃ
「あと名前だけじゃ設定薄いし、それっぽい過去を捏造しなきゃいけないと思うけれど」
あ、あ〜色々しなきゃ…
結局、村の近くで1晩明かすことにした。
夜中、発声練習や過去設定捏造をしていたおかげか、それなりに人間っぽく振る舞うことができるようになった。
「おはよう私」
なんとなく声を出してみる。
年齢相応の、しかし若干掠れ気味の声。
昔の私の声に似ているように感じる。
「もはや人間と見分けつかないわね」
そう守護天使さんは言い、こう続けた。
「ちゃんと過去設定は組んだの?」
私は声を出して答えた。
「はい。私は、都市エストブルクにて商会をしているシヴグラード家の分家の子。親に"経験を積むため"と送り出された徒歩旅を今していて、この服とマスケット銃は親が用意したもの。性格は内気で、運動は苦手。という感じの人間です」
「完璧ね。発声も問題ないようね」
感心したかのような雰囲気で守護天使さんにそう言われた。
「あ、あの…守護天使さんって名前とかあるの?」
「いえ?無いけれど」
夜中の内に考えていた案を思い切って出してみる。
「エジェルさんって呼んで良い?」
「あぁ、エンジェルをもじってみたいな感じかしら?良いわよ。好きに呼べば」
やったっ。両手で軽くガッツポーズをしてみる
「そんなに嬉しいの?忘れてるかもしれないけれど、私は貴女の心が読めるのよ?"エル"とか"シュゴテンちゃん"とか色々案を考えていたの全部聞いてたのよ?」
あっそういえばそうだった。
まあいっか。
「とりあえず…村に行ってみる」
「相変わらず切り替えが早いのね」
即席寝床から出て、
私は村へ向け、歩き出した。
次回、初めての生きた人間との遭遇




