73.玩具の世界
スミレ視点
場所:玩具屋
前世ではおもちゃなんて買ってもらった記憶が無い。
だから私は私自身の想像以上に興奮している。
「あれ…?」
興奮に身を任せ駆け回っていたら、いつの間にかここに辿り着いた。
しかしここへ来た方法も、道筋も覚えていない。
…そもそもここはどこ?
段々恐怖が込み上げてくる。
ヘマとカナはどこ…?アマネは…?
とりあえず店員さんを探して、戻り方を聞こう…と…今になって思い出した。
私はこの世界の言語を話せないのである。
「どうしよう…」
怖い…またアマネと離れ離れになって、このまま消えてしまうのだろうか、死んでしまうのだろうか。
むしろ…一生このままなのだろうか。
…涙が込み上げてきた。
私にとって、永遠とも思える時間が経つ
(実際に経っていたのは3分ほど。恐らくは無駄に思考加速が発動したせい)
「お姉ちゃん〜!」
遠くからアマネの声が聞こえてきた。
「ぁ…アマネ…」
私を助けに来てくれた…
アマネが膝を抱えていた私のところまで来る。
「だっ…大丈夫…?」
私の顔を見ると焦り気味にそう聞いてきた
「ひぅ…ひっぐ…うん…大丈夫…!だって私は…アマネのお姉ちゃん…なんだから!」
私は自分に言い聞かせるようにそう言う。
「今度こそ迷子にならないよう、ちゃんと手を繋いでいこう?」
アマネがそう言って手を差し出してくる。
「…うん」
大人しく手を握る。私の手より大きい。
これじゃ…どっちが姉か分からない。
「お姉ちゃんはどれが良い?」
アマネとぶらっとこの大きな玩具の世界を歩き回る。
「このぬいぐるみとか…可愛いし、欲しいかも」
私がそう言って手に取ったのは熊のぬいぐるみだった。
全体的にグレーな色合いの、ボタン目なぬいぐるみ。
「アマネは何か良いのあった?」
アマネは少し思案するような顔をした後、さっきのぬいぐるみを売っていたスペースに戻り、私のと同じぬいぐるみを持って戻ってきた。
「これかな、お揃い」
なんだか姉妹らしい感じがして、心がポカポカしてきた。
「…そういえば…私が消えちゃった後って、どうなったの?」
前々からなんとなく気になっていたことをしれっと聞いてみる。
私が死んだ後もアマネは生きていたわけで、何か家庭に変わったことはあったのか気になっていた。
私が死んだことであの女も少しは子供を大切にするようになっただろうか。
「お葬式があって、お母さんも出てた。けど、それだけ」
少し寂しそうな笑みを見せた後、そうアマネは語った。
「それ…だけ?…変わらなかったの?」
「…………少しも」
段々あの女への怒りが込み上げてきた。
「ねぇ…もしこの世界にあの女が生まれ落ちてたらさ…………殺さない?」
私はいつもより低い声で平坦に、静かにそう言う。
「………まぁ…ヘマ様が許可してくださったら…ね」
アマネはそう応えてくれた。心做しかその声も低く平坦なように聞こえる。
「…まぁそんな奇跡、起こるわけないよね〜」
アマネと共に、ヘマとカナのところへ戻る。
2人お揃いのぬいぐるみと、ちょっとした秘密の約束事を抱えながら。
次回、玩具と思い出
スミレとアマネのお話の裏で展開されてた、ヘマ達の、こっちもまたちょっぴり暗いお話。




