65.夕食には人肉を
場所:首都のヘマ邸
アマネとスミレはどちらも寸分違わない服装をしていた。
襟元にフリルの付いた白いブラウスと、髪飾りには赤いリボン。ドロワーズ風の膝丈かぼちゃパンツと短めな紺色の巻きスカート。
普通に前世で見かけても不思議に思わないコーデ。
「2人とも似合ってるよ」
そう声をかける。
黒髪も相まって本当に前世に居そう。
「良いものが手に入ったので夕食にどうでしょ〜?」
そう言ってアマネが収納から取り出したのは全身傷まみれで血まみれな人間の死体だった。
「…何かあったの?」
つい聞いてしまう。
おそらくアマネがやったのだと思う。
「実はお姉ちゃんが誘拐されかけまして。つい手を出してしまいました」
しれっとアマネはそう言う。
…なるほど。連れ去られそうになったから、つい手が出たのね。
「それは仕方の無いことだから、別に気負う必要は無いよ」
自然とそう言葉が出てきた。
私だって同じ立場に置かれたら問答無用で斬るし。
「アマネとっても格好良かった。シュババ〜って」
血に酔っているのかいつもより緩い雰囲気のスミレがそう言う。
「2人ともよく頑張ったね」
私は2人に手を伸ばし、頭を撫でた。
頭を触るのが癖になっているのかもしれない。
久しぶりの人肉ということで5人総出で料理することになった。
まず最初は血抜きをするらしい。
血を抜いてそれをまとめて掻き混ぜて、凝固しないようにするとか何とか。
"バチッグチョグチョッボトボトボト…"
「こんなところで良いですかね」
アマネがそう言う。
次は皮を剥いで不純物を除くのだそう。
"ベリッボトボト…ペリペリ…"
たくさん斬られていたおかげか表面を剥がすのはあんまり苦にならない作業だった。
「次で下準備は終わり」
カナがそう言う。
最後に綺麗に部位分けするらしい。
"グチャッザグザグッベチョ…"
難しくて、料理の得意なカナとアマネの補助くらいしかできなかった。
…そういえば。前世で父親をバラバラにして葬ったことのある私とカナはさておき、アマネとスミレはこういうのに耐性があるのだろうか?
「吸血鬼として生きているうちに慣れました」
聞いてみると、アマネはそう答えた。
私と出会う前から吸血鬼として生きていたのだから、当然なのかもしれない。
「よくわかんないけど抵抗無い〜」
スミレの場合は、私の身体の複製体だからとかだろうか。
次は本格的な調理。
まず頬肉と舌を一口大に切り分け、ネギと一緒に串に刺したものを幾つか用意する。
次に太もも肉と前腕を5cmほどの厚さでスライスして用意する。
用意した2種類に抜いておいた血をほどよくかけて、強火で表面だけ焼き、血の濃厚な匂いを閉じ込めて…ということで2品完成。
次は赤身の多い上腕肉を使った刺身。
表面部の筋膜を綺麗に剥ぎ取って口当たりが悪くならないようにした後、肉の繊維に垂直な形で、少し厚めに切る。
これで3品目完成。
カナに味見をさせてもらった。
プリプリとした歯ごたえと脂っこくない旨み…とても美味しい。血に付けて食べれば多分、もっと美味しくなると思う。
私達が刺身を作っている間アマネとスミレは首筋にあたる部分の調理をしていた。
頸部のカルパッチョと項の芯肉の低温グリル、そして喉肉のスープ。
これで合計6品。
こんなくらいで良いかな。
残りは、他の何かに使う時のためにも収納して置こう。
5つの小皿と幾つかの大皿、それぞれにほどよく料理を分けていって、グラス5つには血を注ぐ。
全員が席に着いて、私がグラスを掲げると、それに合わせてみんながグラスを掲げる。
「乾杯」
私の声を聞いた後、みんな一口グラスの中身を飲む。
口いっぱいに濃厚な血の味が広がる。
美味しい。
「いただきます」
私はそう言って夕食に手を付け始めた。
次回、酔いと晩餐




