40.ウォトラントの三国会戦
ボナパルトのアウステルリッツって思ったそこのあなた
ご明察。
ただ似てるって程度ですけれどね
場所:第6軍司令部
「第6軍隷下第8歩兵旅団の旅団長より通報。オストヘルムの第1軍が我々の防衛線を超えルーサル連邦軍へ向け進軍を開始しました」
その報告に司令部は絶句した。
「…どうする?」
叔父上が私にそう問いかけてくる
つまるところ軍事的に、政治的に、どう対処するのが正解かと私に答えを求めている。
「仕方ありません。側面防御を目的として近隣の魔術騎兵を向かわせましょう」
名目上も事実上も主力である魔術騎兵を向かわせるのは政治的にも軍事的にもそこそこ良い…はず
「近くにある魔術騎兵部隊は第601だが」
私の育てた部隊…まぁ妥当な結果を残してくれるかしら
かくしてオストヘルム帝国第1軍と統一王国第601独立浸透戦闘団の臨時混成兵力によるルーサル連邦軍に対する攻勢が始まった。
初めはオストヘルム第1軍も快進撃を続け、順調に敵を攻撃し、敗走に追い込んでいたものの、やはり旧時代的な装備のせいか早くも停滞し始めていた。
この勇敢で、そして無謀極まりない攻勢は、終局に向け、急速に収束し始めていた。
ルーサル連邦の一大平原地帯"ウォトラント"に。
「防衛線の再構築に関してはどうする」
後方の司令部で第601への最低限の司令だけをし、防衛線維持をしているだけの第6軍で私はそう問われた。
攻勢で得た土地に関しての話。
「当然無駄ですし再構築などしません。戦線が引き伸ばされたことで魔術騎兵の稼動範囲が広がり戦線全体が手薄になりますしね。あと何より、現状完璧な兵站体制ができている以上これを崩す意味がありません」
「…そうか」
第601独立浸透戦闘団とオストヘルム帝国第1軍の指揮官達が会議を開く。
ウォトラントでの作戦に関して
「魔術騎兵部隊には側面からの強襲を頼む。我々は真正面から敵と戦う」
オストヘルム帝国一の猛将こと、ヴァルブア第1軍総司令官が言う。
「了解しました閣下」
と第601独立浸透戦闘団の副団長であるバイパー少佐がそう応える。
「全隊進め!」
お行儀の良い綺麗な紺服の戦列がウォトラントを進む。
ルーサル連邦の赤服に向けて。
先に攻撃を始めたのはルーサル連邦側だった。
グラウエンブルク式を模した銃型魔法杖を構え、
一斉に軽爆発魔法を放つ。
紺服の戦列は吹き飛ばされる。
本来なら魔法盾で大した効果も出ない攻撃で、多くが吹き飛ばされた。
「突撃!突撃!」
焦り気味に第1軍の将校たちがホイッスルを鳴らし、突撃させる。
長距離戦では全滅させられると悟ったらしい。
火薬と弾丸が詰まったままの銃を構え、紺服達がバラバラに駆ける。
迎え撃つためルーサル連邦の赤服達も駆け始めた。
第601独立浸透戦闘団はその時を待っていた。
速度強化魔法と防御魔法を発動させた魔術騎兵部隊が側面から前線にある敵司令部に殺到。
混乱状態の司令官含む司令部の人間ををひたすら刺し、撃ち、蹂躙した。
その後、白兵戦をしている敵部隊を後方から攻撃し、数のほとんど残っていない第1軍部隊を救った。
第1軍司令部は攻勢を断念し撤退。第601は撤退を援護しつつ後退した。
「"オストヘルム帝国の"第1軍が少数の魔術騎兵に援護されながら、ルーサル連邦会戦戦力と激突。甚大な被害を被りながらもこれを壊滅させ、敵将を討った」
この報は世界を駆け巡り、情勢が一気に動いた。
まぁ、一言で言えばそれで「歴史が動いた」
各大国首脳達は内心、異音同義にこう言葉を放っていたに違いない。
「時代遅れのオストヘルム軍に負けるルーサル連邦軍など恐るるに足らず」と
数日後、これまで傍観の立場を示していた各国、ノイエ帝国、リヴォルツィオーネ共和国、アストノ立憲王国がなんの示し合わせもなくルーサル連邦に「国際秩序の破壊者に対する防衛戦争」という共通の事由で宣戦布告をした。そしてフーロイ=ゼン統一王国に全面協力の姿勢を示した。
これが後の世で皮肉気に語られる"ルーサル競技戦争"である。
なんでしょうこれ。
シベリア出兵ぽくもありますしナポレオン時代の対仏大同盟っぽくもあります。
次回、ルーサル競技戦争・上




