31.真乃と碧菜
場所:前回と同じ
「ふーん。前世の記憶…ね?」
エジェルさんに見た夢のことを話した。
「で、気になったの。"ヘマ"って名前」
…碧菜と真乃の頭文字を合わせたもの?
「偶然よ。それに、例え私がそのことを知っていてもアドバイスとかはできないわよ。貴女にしか解決できない問題なのだし」
理想の未来へ歩む為のサポート役であるエジェルさんはどうやら過去のことに関して、手を貸してくれないらしい。
その日の夜も夢を見た。
「真乃〜起きて〜」
ペシペシと頬っぺを軽く叩かれる。
瞼を開けると、そこは二人乗りのスポーツカーの車内だった。
私が座っているのは助手席で、運転席には声の主である香菜がいる。
「おはよ…」
大きく伸びをする。外を見ると日が落ちていた。
「もうすぐメンバーとの合流時間だからね?」
と言いながら香菜が撫でてくる。そっか。
確か今日は動画投稿グループ「カルロ・アルマート」の撮影手伝いをするみたいな理由で、香菜にメンバー宅に連れられて来たんだっけ。
香菜はグループの中で撮影役をやってるらしい
どうでも良いけれど。
「碧菜…体調大丈夫か?」
すごく寒い…汗が吹き出てくる。
「お…おはようございます…」
「無理に答えなくて良いからな…水分摂るか?」
ペコリと頷き、水を貰う。
「ゆっくりで良いからな…」
優しい…
「ちゃんと…病気…治します…から」
早く治してちゃんと学校に行かないと…
「そうか…頑張れよ…いつでも看病してやるからな」
迷惑…かけたくないのに
私は今、暇つぶしのために、スマホで最近あげた動画の評価を確認したり、検索エンジンで世情について調べたりしている。
「動画伸びてる」
「貴女が全て作ってるわけだし当然でしょ?」
当然なんだ。
「バルト連邦なんてできたんだ」
「もう3日も前の話だよ?」
私は少なくとも知らなかったわけだし、そう言う時間の話はやめて欲しい…
「あら、来たみたいね」
4人ほどの集団が車を降りて家に入っていく。
それに続くように香菜が車を出て家に入る
私はそれに付いて行った。
家のリビングで集合する。
「この子が言ってた"マノ"だよ」
香菜に両肩を後ろからがっしり掴まれて、「カルロ・アルマート」のメンバーの前に突き出される。
「こんばんは。初めまして…真乃です」
今回の撮影内容は実写料理動画らしい。
「どうして香菜は料理を作らないの?」
台所の固定カメラしか基本使わないこの動画は、食事の時以外、あまり香菜の出番がない。
だからリビングで私と一緒に待機していた。
「まぁ、普段あまり出ない撮影役が料理をやってもね?」
「…美味しいのに」
その後、暇になったメンバーの人と喋ったり、編集の画面を眺めていたりしたら料理が出来た。
お腹が空いていたので、撮影外で私も少し食べた。
「…不味い」
どうして香菜は作らなかったんだろう。
次回、記憶の割合




