19.初めてのダンジョン・下
場所:ダンジョン第3層(途中で移動)
パッと目が覚めた。
大きな満月が真上にある。今は夜?
周りを見渡す。口に血を付け満足そうに寝ているアマネと巨大な死体があったと思しき血溜まり。
段々思い出してきた。
ここはBランクダンジョンの第3層で、確か私はここにいたボスか何かを倒し、アマネと食べていた。
で、食べきったくらいで眠くなってそこから意識が無い。
とりあえずアマネを起こそう。
「起きて」
揺すってみる。
むにゃむにゃとアマネが目を開ける。
「攻略を続けよっか」
寝起きのぼんやりとした顔でアマネが頷いた。
第4層に到着。
魔法石の原石の天井は相変わらずで、月っぽい魔法石の塊も第3層と変わっていない。
「ここは先程のタブ・アクアの家族が住む場所なのでしょうか」
第4層には岩製の住宅らしきものと小さな湖が複数あった。
「さっさと狩って食べよ?」
さっきのモンスターと同じようなものをまた食べられるなんて機会、普段だとあまり無いだろうし。
ハルバートを構える。
「分かりました」
アマネもそれに合わせて刀を構えた。
第4層にいる魚人達はあまり強くなかった。
肉片を拾い上げ口に入れてみる。
あまり美味しくない。魚の匂いが強い上に旨みが無い。
どうして?
比較的魔力の濃い下層にいるはずなのに美味しくない。
まだ成長段階だった?それを守るために第3層であのタブ・アクアは独りきりで私達とやり合っていた?
…まあいいや
「さっさと第5層に行って終わらせよっか」
第5層の天井は全て月のように光り輝いていた。
「よ くぞ こ こま で来た」
…脳に響いてくる声。不快。
「お 前は 私を 殺 せ るか?」
天井を突き破り禍々しい魔力の塊のようなものが降ってくる。4本の手を持った大柄な人型の存在。顔は無く、全身をどす黒いオーラが覆っている
「"ダンジョンの主"ですね。膨大な魔力量がそのまま体力として使われるという性質のせいでかなり厄介な相手です」
"膨大な魔力量"…美味しそう。
「一撃で仕留めちゃおっか」
相手の生命を、魔力は維持させつつも一撃で破砕するイメージでハルバートに魔力を込める。"魔力から生命力への変換を行う機構と生命力それ自体だけを刈り取る"イメージ。
名前は…うーん"血蝕斬撃"で良いかな。
"血蝕斬撃"
私の振ったハルバートから白く光り輝く斬撃が放たれた。
着弾。命中後、固体として着弾位置に残り、その白い光が瞬時に紅くなる。そして紅くなった斬撃がパリンと割れる。
「…… …み ごと」
そう言い残して"ダンジョンの主"は絶命した。
そのままガクリと倒れるかと思いきや、禍々しい魔力がその死体から溢れ出て、そのまま霧散してしまった。悲しい、失敗しちゃったかな。
魔力を残しての捕食を目指していた私の意図を察したのか、アマネが慰めてくれた。
「元々、"ダンジョンの主"はその膨大な魔力に対して、肉体が脆いですから…他のモンスターにならきっと極めて有効だと思いますよ」
そっか。また今度、頑張ってみよう
第5層の奥には光の反射で虹のような輝きを放つ透明な魔法石があった。
回収する。
「おめでとう、攻略完了よ。よく頑張ったわね」
試験が終わったのか、出てきたエジェルさんに褒められた。嬉しい。
「じゃあ、帰ろっか」
私はそうアマネに声をかけ、第4層へと続く階段へと歩を進め始めた。
次回、アマネの決断




