15.吸血鬼の魔法
場所:前回と同じ(途中で移動)
朝食として出されたのは、野菜を炒めたスープと幾つかにちぎられて食べやすくなっているパンだった。
昨日、肉で痛い思いをした私としては肉が出ないのは非常にありがたいと思った。
肉では無い、転生後初の人間らしい食事。
前世では、どちらかと言えばこういう食事を好んで食べていた記憶がある。
それが理由か分からないけれど、肉よりも"不味い"とは感じない。
どちらかといえば"薄い"といった印象。
「お気に召しましたか?やはり血を用意すべきでしたか?」
アマネがそう問いかけてくる
「美味しい」
そう言って笑ってみる。
「良かったです」
満足したようにアマネはそう言った。
「私の魔法の練習相手になってくれませんか?」
食後、アマネは唐突にそう言い出した。
「どちらも血液魔法が得意な種族だし、練習相手には最適ね」
エジェルさんもそう同調する。
「そっか。じゃあやってみよう」
それに私はなんとなく、そう応じた。
練習に際して、誰にも見られなくてかつ広い場所を確保することになった。
私は即決で生まれ故郷である戦場跡地に行くことにした。
「転移魔法でも使ってみたら?」
とエジェルさんに言われたので、試しにアマネごと転移しようと使ってみたら上手くいった。
戦場跡地に着いた。
「メイド服だと動きにくいので少し着替えてきますね」
そう言ってアマネが私の視界外に消える。
「血液魔法が何か、今の内に貴女に教えてあげる」
と、私が魔法について何も知らないことを理解しているエジェルさんは言った。
「まず、前提として、用いる血液は造血魔法で創り出さないといけないの。」
なるほど
「通常の水魔法が魔力により無から水を創り出して発動することも可能なのに対し、血の魔力浸透性のせいで、血液魔法は無から血を創り出す工程が難しくて造血魔法が必要。」
つまり血液魔法って水魔法の下位互換?
「どちらとも言えないわね。威力とその汎用性だけ見れば血液魔法は水魔法の堂々たる強化発展型と言えるけれど、その分、造血魔法を使えなければ、せいぜい体内の血を利用してナイフを作る程度しかできないの」
…なら何故水魔法ではなく血液魔法なんかの話を?
「貴女達、血液摂取を好む種族は造血魔法と血液魔法の運用に関して極めて優れているの。技術を高めれば1段階上の種を殺害できるほどに」
要するに私達にとっての血液魔法は"欠点の存在しない、堂々たる水魔法の強化発展型"という訳ね
「そういうこと。これから更に進化していくにあたってそういった得意魔法は重要でしょう?」
「始めましょうか」
着替え終わったアマネの衣装は結構派手だった。
漆黒のベルベット生地で作られた膝丈のタイトなドレス。アウターは肩から流れるようなロングケープで、裏地が鮮やかな赤色。黒い編み上げブーツを履いていて、首元には心臓を象った大きな魔法石のネックレスがある。
…正直メイド服と動きやすさは大差ないように感じる。だから多分本当は、メイド服を汚したくない、或いは衣装に拘りがあるといった理由なのだと思う。
閑話休題。
アマネは現在、エジェルさんの指導の下、技を鍛錬している。
私はそれを見てその魔法を真似てみている。
「"ク・ルファヴィロク"!」
アマネはそう詠唱し、自分の武器を創造した。
深紅の日本刀。
格好良い、私も詠唱魔法やってみたい。けれど初めから無詠唱魔法をしていたせいで、詠唱魔法の基礎を何も知らず、その上、無詠唱ができる時点で詠唱魔法の需要が無いという理由でエジェルさんは教えてくれない。
とりあえず、武器を創造してみる。
"武器創造"
この魔法は自分の魂に刻み込まれた最適な武器の形を血が勝手に形作り顕現するというものらしい。
出てきたのは深紅のハルバート(っぽいもの)。
ハルバートなんて私に扱えるのだろうか。
次回、血液魔法
ハルバートとは→斧槍って表現される武器。2~2.5mの長さで、槍と斧の特性を持つ。多様な用途があるらしい。




