14.同類との奇妙な邂逅
場所:宿屋、ヘマの宿泊部屋内
とりあえず、アマネというメイド?を部屋に迎えた。
「どうしてここでメイドの仕事を?」
なんとなく聞いてみた。するとアマネは少し考えるような仕草をした後、
「色々ありまして、としか言いようがありませんね」
と答えた。
するとエジェルさんは何か察したかのように言った。
「あの子、多分吸血鬼ね」
この世界って吸血鬼なんているんだ。
「あ、えっと…」
アマネは唐突に何か焦ったかのように声をあげた。
ん?何か私今、変なことを口走った?
「…もしかして私の声が聞こえているのかしら?」
エジェルさんが突拍子もないことを言う。
「ええ、聞こえます」
アマネがまるで本当に聞こえているかのように言った。
もしそうならどうして?
「ふふ。どうやら"人間ではない、前世の記憶を保持している転生者"なら全員守護天使の声が聞こえる設定のようね」
エジェルさんは面白がるように言った。
…どうして?
「そもそも守護天使というのは、人間が記憶を保持した状態で非人間存在に転生した際の補助役として付けられる存在なの」
そうなんだ。ならどうして私にはアマネの守護天使の声が聞こえないの?
「それは恐らくアマネが後天的に非人間存在と成ったからじゃない?」
つまり初めから非人間存在というわけではないから、転生時、守護天使を付けられなかったのね。
「…はい。私は今世でも元々は人間でした」
アマネはそう応えた。
「面白いわね。どちらも転生者で、人外で、人間の血肉が好みで、その癖、どちらも人間の社会で生活しようとするなんて。まさに同類って感じ」
揶揄うように、嘲笑うようにエジェルさんは言った。
すると、そのことを寧ろ喜ばしいとでもいうかのようにアマネは言った。
「偶然にも同類と出会えるなんて…とても嬉しいです」
その後、朝が来るまでアマネは、これまでの孤独を払拭しようとするかのように、私とエジェルさんを相手に色々なことを語った。例えば、前世のことや吸血鬼になっての苦悩等。
まぁ、人間には語れない愚痴が基本だった。
「あ、もうこんな時間。朝食用意しなきゃ。少し失礼しますね」
アマネはそう言って、部屋を出て行った。
「いってらっしゃい」
緊張や孤独感が減ったおかげか、同類の私に対し、砕けた態度をとってくれるようになった気がする。
面白い一週間となる予感があった。
次回、吸血鬼の魔法




