13. 人間らしい食事と新しいメイド
場所:前話と同じ
やっと肉がきた。
「こちらステーキになります」
前世で嗅いだことのある匂い。
焼いた肉の匂い。
血の匂いがしてこない。
赤くない。
…不味そう。
「いただきます」
とりあえずナイフで私の口に合う大きさに切り取ってちまちまと食べてみた。
一口目、思っていたのと違う。前世の記憶のお陰で懐かしいとは感じるものの、美味しくは無い。
二口目、血の味と匂いが全然しないし、硬い。
三口目、もう食べたくない。
気を紛らわすため人間に話しかけてみた。
「これって…血の匂いとかって?」
「当店ではしっかりと血抜きと消臭をしておりますので、全くしないでしょう?」
まるで自慢かのようにそう言ってのけた。
「え…えぇ、はい。全くしませんね」
何が良いのか全くわからない。
この人間の感性がおかしいの?
私の感性がおかしいの?
四口目、辛い
五口目、不味い
六口目、辛い
…辛い
…不味い
…不味い
…辛い
…
…
…
…
…こんなの肉じゃない。
「貴女の味覚はもはや人間と同じじゃないの」
そっか、もう人間らしい食事は摂れないんだ。
「そう。そんな栄養の無い無駄な物さっさと捨てて、もう帰れば良いんじゃない?」
でも、私が自分で選択した結果なのだから、人間に迷惑をかけないよう、ちゃんと食べないと。
「…そう」
少し不満げに相槌を打たれた。
結局、人間の料理をちまちまと食べ完食し、代金を支払って宿屋へ戻った。すっかり肉を食べたいという欲は削がれて、意気消沈していた。
夕食は…もう良いかな
鍵を使って部屋に入る。
白を基調とした、いかにも貴族の寝室っぽい壁に囲まれている大きな部屋。
中心に鎮座する大きなベッドに頭からダイブした。
「少し寝たら?」
そうしよう。ゆっくりと目を閉じようとした。
コンコン
「人間ね。言われてたメイドじゃない?」
忌々しい…今寝ようとしてたところなのに
「はーい」
仕方がなく応えドアを開ける。
そこには、黒色の長い髪に切れ長の目、碧い目をした女…人間らしきものがいた。
人間らしきものは素っ気なく言った。
「メイドのアマネです。1週間、よろしくお願いします」
そしてぺこりと頭を下げた。
「いかにも大和撫子と言った感じね。着ているのはメイド服だけれど。転生者かしら」
…匂いが人間と違う。とりあえず返事しよう。
「こちらこそ1週間よろしくお願いします」
次回、同類との奇妙な邂逅




