12.ヘマの第二の武器(借り物)と人間らしい食事
場所:ノネトリ村
武器屋の中は、かなり雑な整頓のされ方をしていた。
剣、槍、銃等、一応分別はされているものの、商品として並べられているのではなく、山のように積み上がっているだけで、中には折れているものや錆びているものなんかもあった。
「好きなものを選べば良い。一つだけな」
何が自分に合っているか分からず、とりあえず聞いてみた。
「私、武器にあまり詳しくなくて…何か私みたいな人間に最適な武器ってありますかね…?」
そうすると人間は、自分の手に持っているマスケット型魔法杖から視線を逸らさない状態で告げた。
「俺の新作"スカジノス"なんか合うんじゃないのか?」
するとエジェルさんが反応した。
「げっ、この人間もしかして自分の作った武器全てに名前を付けてるタイプ?」
そういう人間がいるんだ。
「そのスカジノス?ってどこにあるんですか?」
そうとりあえず聞いてみた。
すると人間はチラリとこちらを見て剣の山の上の方を軽く指差した。
剣の山の前に行き、1番上にあったサーベルっぽいものを取ってみた。
「それだ。大事な愛娘だからくれぐれも傷付けたりするなよ」
するとまたエジェルさんが反応した。
「"愛娘"なのね。あの人の愛娘達はみんな箱入りみたい」
今日のエジェルさんはいつもより不機嫌みたい。
「当然でしょう?"腐ってる癖に無駄に技能のある人間"に私は虫唾が走るの」
…?そっか。とりあえず人間に返答をしないと
「はい、大切にします」
両手でサーベルっぽいものを包むように抱え、ぺこりと頭を下げた。
「どうせ見てないし、そんなことしなくて良いでしょ」
エジェルさんの言う通りかもしれない。けれどなんとなく、やっておきたかったから。
「…まぁ良いんじゃないかしら」
武器屋を出て、借りた武器を変に壊さないよう村の中で1週間暇を潰すことにした。お金はあるし、宿屋とレストランでも行こうかな。
宿屋に着いた。そこそこ大きくて、屋敷っぽい。
1週間予約ってどれくらいかかるんだろう
ノックを4回
「お邪魔します」
金髪の人間が微笑みながら、迎えてくれた。
「いらっしゃいませ。宿泊を希望ですか?」
「はい。1週間ほど泊まりたいのですが、価格はどれくらいですかね」
「1週間ですか。わかりました」
少し私の容姿を眺めるように見た後言った。
「えー1番良いプランが1泊6000銀レルで、6泊は3金レルと6000銀レルになります」
「1番良いというのは?」
「お風呂とトイレ付きで、この宿で1番大きな部屋に1人のメイドと朝食付きのプランです」
「随分と豪華ですね」
「実はエストブルクと貴族の避暑地を結ぶちょうど中間の地点にこの村はありまして」
「なるほど」
だからこんな豪華なのか。
「じゃあそのプランでお願いします」
そう言ってお金を出す
「3金レルと6000銀レルちょうど頂きました。こちらがキーとなります。メイドは後ほど伺う形となりますのでご了承ください」
鍵を受け取った後、部屋へ行かず、1度レストランへ行くことにした。
レストラン"ガトッフェ・ズップス"
「"じゃがいものスープ"なんて名前、どんな理由でレストランに付けようと思ったのかしら」
ガトッフェ・ズップスは昔の人間が用いていた言葉らしく、意味はじゃがいものスープらしい。
ノックを4回
「お邪魔します」
「いらっしゃいませ。お1人様でよろしいでしょうか」
白い服を着た茶髪の人間が迎えてくれた。
「はい」
「こちらの席へどうぞ」
言われた通り席に着くと
前世で嗅いだことのある"人間の食事の匂い"が漂ってきた。
「こちらのメニューからお好きなものをお選びください。注文は私が受けますので、ご注文の際はこちらのベルを鳴らしてください」
そう言って人間は私の目の前にある机にメニューと小さなベルを置いた。
メニューにはステーキやじゃがいものスープ、サラダといったものがあった。
とりあえず肉を食べようかな。
ベルを鳴らす。
「はい、ご注文は何でしょうか」
先程の人間が来る。
「ステーキを1つ。だけで、お願いします」
「わかりました、ステーキを1つですね。少々お待ちください」
そう言って人間は厨房へ行った。
前世ではあまり肉を食べることがなかった。けれど転生して以来、肉の美味しさを理解した気がする。
濃厚な血、漂う独特の鉄っぽい匂い、柔らかい食感。
そういえば、人型になって以来、肉は食べてない気がする。
「元同族さん達なら食べてたけれどね」
それは、つい癖で…
久しぶりの肉。楽しみで待ち遠しくすら感じる。
「大丈夫?口角が上がってるみたいだけれど」
あ、人間に引かれないようにしないと
口角を直す。
無表情、無表情。
…早く来ないかな…………肉
次回、人間らしい食事と新しいメイド
レストランの人間が食べられちゃうかは五分五分です。人間自身の料理の腕によるんじゃないですかね。知らないですけれど




