第9話 焼き肉!
――お昼の十二時。
俺と上原さんは、タワーから戻ってきた。
最初のゴブリンを倒した後、上原さんもゴブリンを倒して戦闘研修は終了した。
もっとも、上原さんは、俺が手助けをしてゴブリンを倒し、倒した後再び失神してしまったが……。
冒険者ギルドへ戻ってきて、上原さんに諸々手続きをしてもらった。
冒険者の研修が終了し、冒険者登録が完了した。
俺の担当は、上原さんになった。
そして、ドロップアイテム『ポーション』の売却。
冒険者ギルドのロビーで待っていると、上原さんが俺を呼んだ。
「狭間さ~ん! 手続き終りましたよ~!」
「はい、は~い!」
俺は受付カウンターに向かう。
制服を来た上原さんが、ニコニコと笑顔で俺を迎える。
「売却手続きが終ったので、アプリを確認して下さい」
「ウッス!」
俺はスマホを取り出し、冒険者アプリを起動する。
すると、バッチリポイントが入っていた。
「こちらが明細ですので、ご確認下さい」
上原さんが書類を一枚俺に差し出し、明細を読み上げる。
ポーションの売却が、百万ゴールド。
冒険者登録が、二十万ゴールド。
ゴブリンの魔石買取が、一万ゴールド。
デイリーボーナスが、千ゴールド。
合計、百二十一万一千ゴールド。
源泉徴収と保険料が一割差し引かれて、手取りが百八万九千九百ゴールド。
「百万超えキター!」
「声が大きい! 静かにして!」
「あっ! サーセン!」
一気に金持ちになってしまった!
金がない、仕事がないと悩んでいたのは何だったのだろう?
俺はニッコニッコ笑った。
「狭間さん。良かったですね!」
上原さんが、優しく俺を労ってくれた。
俺は上原さんに感謝の気持ちで一杯だ。
「はい! ありがとうございます! 上原さんが、誘ってくれたおかげです!」
「じゃあ、感謝の印は焼き肉で!」
「ご馳走させて下さい!」
「ちょうど私もお昼休憩です。ここのレストランフロアに焼き肉店があるから行きましょう!」
俺は上原さんと連れだって、焼き肉店に向かった。
新宿西口冒険者ギルドは、百貨店のビルに入っている。
エレベーターで百貨店のレストランフロアへ。
「このフロアのお店はゴールドが使えますよ」
「へえ。便利ですね!」
なるほど店頭に『冒険者様歓迎! ゴールド加盟店!』とステッカーが貼ってある。
俺と上原さんは、高級な焼き肉店に入った。
カルビ、ロース、タン、ミノ、ハラミ。
次々と肉を頼んで、ジュウジュウ焼く。
「「いただきまーす!」」
俺と上原さんは、大盛りライスを片手にガンガン肉を食べ始めた。
「上原さん(モグモグ)」
「何ですか?(モグモグ)」
「何だか、凄い食欲があるんですけど?(モグモグ)」
「ダンジョンで活動するとエネルギー消費が凄いらしいですよ(モグモグ)」
「そうなの?(モグモグ)」
「まだ、研究中ですけど。みんなすぐお腹が空くそうですよ。携帯食を持参した方が良いですよ(モグモグ)」
「良いこと聞いた(モグモグ)」
俺と上原さんは、タップリ焼き肉を食べた。
なぜ、焼き肉はこんなに美味しいのか?
脂がしたたるカルビ。
肉感溢れるロース。
淡泊な中に旨味があふれるタン。
味噌味が癖になるミノ。
そして、上原さんの胸にかじりついた感触の柔らかいハラミ。
あくまで胸だぞ! 腹ではない!
食後のコーヒーを飲んでいると、上原さんが真面目な顔で聞いてきた。
「今日、稼いだお金はどうするんですか?」
「毎日焼き肉を食べようかな!」
「はぁ~……」
上原さんが、ため息をつきながら首を振る。
俺はキョトンとした。
「えっ!? ダメ!? 一日でこんなに稼げるんだから、毎日焼き肉を食べても大丈夫でしょう?」
「ダメですよ! 今日はたまたまドロップアイテムが出ただけでしょう? 初日だから登録のポイントがついただけでしょう?」
上原さんから怒濤のダメだしをくらった。
イチイチお説ごもっともで反論出来ない。
どうやら俺は浮かれていたらしい。
「うう……ごめんなさい」
「わかればよろしい。じゃあ、行きますよ!」
「えっ? どこへ?」
「装備を買いに。今日、稼いだお金で装備を調えましょう!」