第64話 戦場にて
俺は雑居ビルの一階入り口から外をそっとのぞき見る。
宮益坂は、魔物と人――両者の攻撃が交錯していた。
魔物陣営はオークアーチャー、ゴブリンアーチャーが矢を放ち、人間陣営は魔法と銃弾で対抗する。
魔物陣営は高所――ビルの窓から攻撃するので位置の優位性があり、人間陣営は物量――銃の連射や魔法を放つ回数で対抗している。
宮益坂を駆け下りてくる一団が見える。
冒険者と自衛隊あわせて二十人ほどだ。
盾役の冒険者が大楯を掲げて魔法使いと自衛隊を守っているが、どうしても隙間が空く。
隙間に魔物の放った矢が滑り込み、自衛隊員の太腿を貫いた。
「痛えぇぇぇ!」
「止まるな!」
矢を貫かれた自衛隊員に、一人の自衛隊員が手を差し伸べ、大盾を持った冒険者が矢を防ぐ。
「急いで下さい! 矢の量がハンパない……」
「歩けるか?」
「なんとか……クソッ!」
見ていられない。
俺はビルから飛び出し全力疾走した。
俺は立ち上がろうとする隊員に駆け寄り、両手ですくい上げた。
こういう時は、怪力に感謝だ。
「そこのビルです! 走ります!」
「了解!」
「上をカバーします!」
盾役の冒険者と自衛隊員と一緒にビルへ向かって駆ける。
ほんの数秒のはずだが、やけに時間が長く感じた。
矢が背中に当たる。
幸い高性能ボディスーツが矢をはじき返してくれたが、衝撃が骨まで響く。
無事ビルの入り口に飛び込んだ。
「ありがとうございます」
「問題なしです。ポーションは?」
「持ってます。矢の処置をしたら飲みます」
矢を喰らった自衛隊員さんは問題なさそうだ。
無線から神宮司君の声が聞こえた。
「神宮司です。狭間さん。第二陣を送ります。今の感じでフォローをお願いします」
「狭間了解」
神宮司君は、このビルを宮益坂の橋頭堡にするのだ。
このビルから魔法使いや自衛隊員が、魔物が選挙しているビルへ攻撃を行う。
魔物の攻撃が緩んだ隙に他のビルを制圧する。
一つずつ丁寧に潰していく。
俺など気が遠くなりそうだが、優秀な神宮司君は迷いなく作戦を立て指揮している。
年下だけど凄いなと素直に感心してしまう。
坂の上から第二陣が駆け下りてきた、大盾を掲げた盾役、魔法使い、自衛隊員の組み合わせだ。
ただ、盾役と魔法使いは顔に見覚えがある。
まだ、キャリアの浅い冒険者だ。
顔は真っ青で動きが悪い。
「ブモウ!」
ビルの三階からオークが事務机を放り投げた。
盾役の冒険者は、盾が邪魔で見えていないようだ。
俺は駆け出し、事務机が魔法使いに激突する寸前にはじき飛ばす。
盾役の冒険者と魔法使いは、俺が事務机をはじき飛ばしたのに驚き足が止まった。
「は、狭間さん!」
「えっ!? 机が落ちてきた!? ウソ!?」
二人とも血の気が引いている。
無理もない。楽しく冒険して、ガッツリ稼ごうと思っていたら、こんな極限状態に放り込まれたのだ。
俺はせめて優しく接してちょっとでも体が動くようにしようと、二人に笑顔を向け手を引く。
「大丈夫! 大丈夫! 問題ないから! 俺についてきて!」
「はっ……、はい!」
「いっ……、行きます、行きます」
二人は足をもつれそうにしながら、なんとか走り出した。
ビルの上では激しく銃撃と魔法が味方から放たれている。
「あのオークを撃て! 机を落させるな!」
指揮官の指示が頭上で聞こえる。
状況をしっかり把握し的確に指示を出す様子に、俺はホッとする。
(よし! 神宮司君の作戦はいけそうだ!)
俺は手応えを感じていた。





