第62話 フラグを立てるな
モッチーがやって来た。
「どう?」
「……俺、この戦いが終ったら上原さんと結婚する」
「フラグを立てるな!」
「痛っ!」
モッチーにボコンと叩かれた。
「いや、でも、さっきの雰囲気だと上原さんとゴールだろう?」
「それでも、戦いの前に口にするのは不吉」
俺とモッチーがわちゃわちゃやっていると、神宮司君とレオ君もやって来た。
「そうそう。お楽しみは戦いの後に取っておかないと」
「いやいや。一人で良い思いなんてズルイッスよ」
打ち合わせが終ったらしい。
魔法使いと自衛隊が、ぞろぞろと俺のそばにやって来た。
俺の隣にレオ君が並び、神宮司君が俺に指示を伝える。
「狭間さんは先頭をお願いします。よろしいでしょうか?」
「ああ、やるよ。ひょっとしてレオ君も?」
俺は隣に立つレオ君を見た。
するとレオ君は、クッと笑った。
「おっさん一人でイイカッコするのはナシでしょ。俺も付き合うよ」
コイツ……イイヤツだな。
冒険者研修同期のよしみで付き合ってくれるのか。
「ありがとう。心強いよ」
俺はレオ君に礼を述べる。
神宮司君の指示が続く。
「レオは、右側の牛丼屋に飛び込んで中を制圧。狭間さんは左側のあのビルに飛び込んで下さい。上の階へ行けるようなら上へ」
神宮司君が指示したのは、俺が立っている場所から十メートルほど先にあるビルだ。
一階は店舗で、店舗の横に階段がある。
階段を上がれば二階に上がれるだろう。
「ビルの中を制圧すれば良いんだね?」
「お願いします。狭間さんたちが宮益坂に突っ込んで、ビルから魔物が顔を出したら魔法攻撃と自衛隊の射撃を行います。ある程度削ったら、後発が宮益坂に進入。通りを制圧します」
「わかった」
「作戦開始は五分後です」
俺は坂の上からジッと通りを見つめた。
あいにく気配察知のようなスキルは持っていないので、魔物がどこにいるのかわからない。
しかし、渋谷駅は魔物の本丸であるダンジョンがあるのだ。
魔物は必ずいる。どこかに潜んでいるはずだ。
無線から上原さんの声が聞こえた。
「宮益坂の冒険者に通達。突入まで、あと三分です。各自突入に備えて下さい」
隣でレオ君が屈伸を始めた。
あちこちで冒険者が体を動かす。
自衛隊は銃を最終点検している。
俺は集中力が高まってくるのを感じた。
両手を握り、開く。
意識して呼吸を深くする。
無線から上原さんの声。
「突入まで一分……。あと三十秒……。十秒……、五、四、三、二、一、突入!」
俺とレオ君が宮益坂に突入した。





