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駅前はダンジョン~派遣から転職したらパワー系魔法使いでした!  作者: 武蔵野純平
第四章 渋谷奪還作戦

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第61話 宮益坂

 ――翌日!


 無線から上原さんの声が聞こえた。


「オペレーターの上原です。間もなく宮益坂です。宮益坂からは、二手に分かれます。宮益坂では白騎士と超獣が先頭に立って下さい。現場指揮は白騎士の神宮司さんです」


「白騎士、神宮司、了解です」


「超獣、狭間、了解」


 俺は短く返事をして通信を終えた。

 渋谷奪還作戦もいよいよ大詰めだ。

 国道246号線を進む部隊は宮益坂にいる。


 宮益坂は渋谷駅から青山へ向かって伸びる坂で、宮益坂の下は渋谷、上は青山だ。

 宮益坂を下れば渋谷だ。


 自衛隊の戦車は国道246号線を進むが、宮益坂は冒険者と自衛隊の歩兵部隊が担当する。歩兵は自衛隊では普通科というらしい。

 宮益坂は国道のように広い道路ではないので、戦車で進撃するには向かないのだ。


 また、上原さんの声が無線から聞こえる。


「宮益坂のオペレーターは、引き続き上原が担当します。国道246号線は、有坂が担当します。246を担当する冒険者は有坂のチャンネルに変更をお願いします」


 ここで冒険者も二手に分かれる。

 俺たち宮益坂担当の冒険者グループは、数が多く強い連中が多い。


「ついに来たな」


 俺は国道246号線から宮益坂を見下ろし、誰ともなくつぶやいた。

 モッチーが俺の隣に立ち低い声でこたえた。


「いよいよオーラス」


 坂の下に渋谷駅が見える。

 周りのビルはボロボロになっているが、あそこがゴールだ。


 渋谷駅前にはダンジョンが二つある。

 渋谷駅前に到達し、魔物を排除し、ダンジョンの入り口を鉄板で封鎖する。

 その後は、時間をかけて渋谷駅周辺の魔物の生き残りを駆除し、ようやく一般解放だ。


 渋谷が解放されれば、東京西部、神奈川から都心方面へ人が移動出来るようになる。

 完全復興に一歩近づく。



 さて宮益坂だ。

 宮益坂の上から渋谷駅は歩いて五分かからない。

 だが、今は……。


「魔物の姿が見当たりませんね……」


 神宮司君が宮益坂を見ながらいぶかしむ。

 俺とモッチーも『むうん』とうなる。


 神宮司君の言うとおり宮益坂に魔物の姿はない。

 宮益坂は不気味なほど静かなのだ。


 レオ君と神宮司君が何やら話し出した。


「建物は残ってるんだな……」


「駅が近いからね。自衛隊の爆撃対象から外れてる」


「じゃあ、道路沿いのビルに隠れているとか?」


「あり得るね」


「チッ! ここの牛丼屋、よく使ってたんだけどな。ボロボロじゃねえか!」


「僕も駅近の定食屋によく寄ってたよ。けど、もう、ダメだろうね」


 レオ君の視線の先には、牛丼屋の看板があった。

 あちこち割れてしまっているし、店のガラスも割れている。

 坂の上から見る限り魔物の姿はないが、店の奥に隠れているかもしれない。


「なあ、モッチー。魔物って隠れて不意打ちするくらいの知能はあるよね?」


「ある。待ち伏せは何度もやられてる」


「じゃあさ。集団行動はどうだろう? 自衛隊みたいに連携して攻撃してくるかな?」


「それはどうだろう? うーん……」


 宮益坂にいる魔物が、魔物単体の判断で隠れているだけなら問題ない。

 あぶり出して一匹ずつ倒すだけだ。


 だが、宮益坂にいる魔物全てが一つの大部隊として行動しているとなると厄介だ。

 これまで魔物の集団に襲われたことはあるが、十匹程度のグループだった。

 だから、宮益坂の魔物が一つにまとまることはない……とは思うが……。


「あり得るんじゃないですか?」


「神宮司君?」


 神宮司君が俺とモッチーの会話に加わる。


「ほら、アニメなんかでゴブリンキングやオークキングみたいに指揮能力のあるモンスターが出てくるじゃないですか。現実にいても不思議はないですよ」


「そりゃそうだよな。じゃあ、宮益坂がこれだけ静かなのは……」


「僕たちの気配を感じて、伏せているんでしょう」


 誰かがゴクリとつばをのみ込んだ。

 宮益坂の両サイドはビルが林立している。

 あのビルに沢山の魔物が手ぐすね引いて待ち構えていると思うとゾッとする。


 神宮司君、レオ君、モッチーも俺と同じ考えのようで渋い表情だ。

 だが、ここで立ち止まるわけにはいかない。

 作戦は進行中なのだ。


「とはいえ、腹をくくるしかないな。渋谷はすぐそこなんだ。行かなくちゃ」


 俺はパチンと右の拳を左手に打ちつけた。

 腹の底からフツフツと熱い物がわき上がってくる。


「神宮司君、俺が切り込むよ」


「やってもらえますか? かなりリスキーですよ?」


「やる。こういうのは、俺みたいなバカの仕事だ」


「わかりました。こちらで段取りを組みます」


 神宮司君がテキパキと指示を出す。

 魔法使いと自衛隊の普通科の人たちが動き出した。


 しばらくすると上原さんがやって来た。


「狭間さん。望月さんから聞きました。先陣ですよね?」


 俺はチラリと上原さんを見て、視線を宮益坂に戻した。


「ああ、最初に突っ込むよ」


「そう……」


 上原さんが黙り込んだ。

 俺も言葉を発しない。


 周りでは神宮司君が指示を出して、魔法使いと自衛隊がガチャガチャ何かやってる。


「無事に帰ってきて下さいね。焼き肉行きましょう!」


「いいね、おごるよ」


「約束ですよ!」


「ああ」


 上原さんは指揮車両へ戻って行った。


 焼き肉……絶対に行こう。

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