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駅前はダンジョン~派遣から転職したらパワー系魔法使いでした!  作者: 武蔵野純平
第三章 西新宿の首折り魔

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第41話 科学とは?

 俺はリヤカーを引いて、エイホックさんが住む村に向かった。

 ダンジョン一階層は、相変わらず新人冒険者が多い。

 ゴブリンを相手に四苦八苦している。


 俺、上原さん、モッチーの三人は、新人冒険者がゴブリンを相手してくれるおかげで何事もなくダンジョン一階層を進んで行く。


 リヤカーを引くにも大分慣れてきたの。

 俺はリヤカーを引きながら振り向き、後ろを歩くモッチーに声を掛けた。


「モッチー。昨日は焼き肉どうだった?」


 モッチーは、俺と上原さんから三メートルくらい間隔をあけて歩いてくる。

 昨日よりは近くなっている。

 一緒に戦ったので、昨日より俺に馴染んでくれたのだろう。


 モッチーは小さなホワイトボードに返事を書いた。


「特上カルビ最高!」


 モッチーは満面に笑みを浮かべてホワイトボードを掲げている。

 本当に満足したんだな。

 モッチーさんの嬉しさが伝わってきて、俺も笑顔になった。


「そっか! 特上カルビ! ふふ、良かったね!」


 上原さんもニッコリ笑った。


「焼き肉良かったですね!」


 一階層を和やかに会話しながら歩き、ダンジョンの出口へ到着した。

 ダンジョンの出口には、自衛隊の見張り二人立っている。

 上原さんが書類を見せて何事もなく通過だ。


 ダンジョンの外には、自衛隊のテントが建っていて十人ほどの隊員さんたちがいた。


「「「お疲れ様です!」」」


「「「「「「お疲れ様です!」」」」」」


 俺たちが挨拶をすると、自衛隊さんたちも挨拶を返してくれた。

 いざとなったら自衛隊がいると思うと、とても心強い。



 ドワーフのエイホックさんの家に着く。

 扉をノックすると、すぐにエイホックさんが出て来た。


「おー! よく来たな!」


 エイホックさんは、グローブみたいにぶ厚い右手をあげて俺たちを迎えた。

 エイホックさんがニカッと笑う。

 気持ちの良い笑顔だ。


「エイホックさん。こんにちは。お約束の金属を持ってきました」


「おう! ありがとうよ。嬉しいぜ」


 エイホックさんに金属のインゴットや一円玉など加工された品が引き渡される。

 それぞれの金属について上原さんがエイホックさんに口頭で説明する。

 文字が違うし、言葉が違うので、書類が作れないから説明するしかない。

 上原さんは結構詳しく、原料や製造方法を説明している。


 エイホックさんは上原さんの説明を聞き、自分の手で作業場の棚にインゴットや加工品を並べ始めた。

 俺は手伝いを申し出た。


「手伝いますよ」


「いや、自分でやる。こうして自分で触って整理しねえと覚えられねえんだ。ありがとな。気持ちは嬉しいぜ」


 エイホックさんはリヤカーから大切そうに金属のインゴットを運び出す。


「しかし、鉄一つとっても、作り方が俺たちと違うな……」


 上原さんの説明を聞いて、エイホックさんがブツブツとつぶやき、上原さんが応じる。


「私たちの国は科学が発展しているので、科学者も多いです」


「カガク? カガクシャ?」


 エイホックさんが日本語で聞き返した。

 翻訳が行われていない。

 どうやら科学という概念が存在しないようだ。


「カガクって何だ?」


「科学とは……」


 エイホックさんに問われ、上原さんが言葉に詰まる。

 俺も何と説明すれば良いのかわからない。

 俺たちにとって、あまりにも当たり前の概念を質問されたので、とっさに説明出来ないのだ。


 すると俺の背中にコツンと小石があたった。

 モッチーだ。


 振り向くとモッチーがホワイトボードに文字を書いている。

 何回かに分けて、科学の説明を書いてくれた。


 モッチーが書いた文章を俺がエイホックさんに話す。


「科学は世の中の真理を探究すること。科学者は錬金術士と薬師をあわせた職業、だってさ」


「なるほどな! 鉄についてよく調べてるってことか!」


 エイホックさんが納得してウンウンとうなずく。

 そして、モッチーを指さした。


「ところであの魔法使いのお姉ちゃんは話せないのか?」


「いや、物凄い人見知りなんだ」


「それであんなに離れたところに立ってるのか……」


「そう。でも、悪気はないんだよ」


「いや、構わねえ。人それぞれ色々あるよな」


 エイホックさんは引き取り作業を続けた。


 上原さんから金属の受け渡しを済ませ、リヤカーには俺からのお土産が残った。

 エイホックさんが怪訝な顔をする。


「これは何だ?」


「これは俺からのお土産だよ」

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