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駅前はダンジョン~派遣から転職したらパワー系魔法使いでした!  作者: 武蔵野純平
第三章 西新宿の首折り魔

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40/50

第40話 再び異世界へ

 ――夜。


 寝ようかなと思うと、スマホが鳴った。

 スマホの画面を見ると上原さんだ!


 まさか夜のお誘い?

 グフフフ!


 俺は期待に胸を膨らませ、ダンディーな声で電話に出た。


「狭間です」


「狭間さん。夜遅く電話してすいません! ちょっと急ぎの案件です。今、お時間よろしいでしょうか?」


 案件ということは仕事か……。

 ガッカリして一気にテンションが下がる。


「あー、はい。大丈夫です」


「明日、午後からエイホックさんのところに訪問します。狭間さんと望月さんに護衛を依頼したいです。報酬はお一人五万円ずつと魔石の買い取り割り増し期間を三日延長です」


 おっ!

 悪くない話だ。

 報酬五万円も大きいが、何より割り増し期間延長はデカイ。


「俺はオーケーですよ」


「ありがとうございます。望月さんには私から説明しておきます。では、明日午後一時に冒険者ギルドに来て下さい」


「了解です」


 俺は望月さんに明日は午後からとメッセージを送って眠りについた。



 ――翌日。


 俺はちょっと早めに家を出て、冒険者ギルドが入っている百貨店で買い物をしていた。

 エイホックさんへのお土産である。


 前回、魔法使い用のグローブをもらった。

 エイホックさんは代金不要と言っていたが、俺としては本当に嬉しかったしありがたかったので、お礼にお酒を持っていこうと思うのだ。


 百貨店の食料品売り場をブラブラしてエイホックさんへのお土産を探す。


 ドワーフといえば、やはり酒だろう。

 ギフトセットでよくある缶ビールの詰め合わせを選ぶ。

 アルミ缶に入っているので、金属好きなエイホックさんなら興味を持つだろう。


 それから国産高級ウイスキーを店員さんに選んでもらった。

 木箱に入ったウイスキーで、お値段は一瓶三万円。

 高いけど、昨日ガッツリ稼いだので問題ない。


 それからオツマミだ。

 北海道産高級ウイスキー用チョコレート、スモークチーズ、パウチに入ったスモークサーモン。


 結構な出費で、今日受け取る護衛費用が吹っ飛んだ。

 それでもエイホックさんが譲ってくれた装備には及ばない。

 なにせ、欲しくても日本では売ってない装備品なのだ。

 このくらいはさせてもらいたい。


 エイホックさんのお土産を携えて、冒険者ギルドへ。


「おはようございまーす! よろしくお願いしまーす!」


 今日も挨拶から入る。

 挨拶は大事。

 挨拶しているだけで、ちゃんとした人と勘違いしてもらえる。

 いや、勘違いではない。

 俺はちゃんとした人だ。


 大きな声で挨拶をすると、冒険者ギルドのホールのあちこちから挨拶が返ってくる。


「おはようございまーす!」

「ウィーッス!」

「チース!」


 おお! 今日も日本は平和です!

 俺はプチ挨拶運動を終えると受付カウンターの上原さんに突撃した。


「上原さん! おはようございます! 今日はバッチリ上原さんをお守りします! 神様仏様上原様に誓います!」


 俺が鼻息を荒くすると、上原さんがジトッと冷たい目で俺を見た。


「あー、ありがとうございます。護衛としての気持ちは嬉しいですが、そのモッコリはどうにかして下さい」


「ハッ! いつの間に!」


「警備を呼びましょうか?」


「イエ、ダイジョウブ、デス」


 俺は無念無想、色即是空、空即是色で悟りの境地に至った。

 アミダ・ドライブで気分は上空三千メートルだ。


「狭間さん。その荷物は?」


 上原さんが、俺の持つ百貨店の紙袋に気が付いた。


「エイホックさんへのお土産です」


「多くないですか?」


「まあ、ミスリルを使った装備品をもらいましたから」


「ああ、確かにそうですね。わかりました。後でリヤカーに載せましょう」


 はて? リヤカーとは?


「上原さん。リヤカーとは?」


「行けばわかりますよ。あ、望月さんも来ましたね。行きましょう」


 俺たちは冒険者ギルドを後にして新宿西口ダンジョンへ。



「はい! しっかり引いて下さい!」


「むおおおおお!」


 俺はダンジョンの中でリヤカーを引いている。

 リヤカーには金属のインゴットが山と積まれていて重い。

 パワー系の俺が引いても重いのだ。


 リヤカーもギシギシ言って悲鳴を上げている。

 あきらかに重量オーバーだろう。


「う、上原さん! こ、この荷物は?」


「エイホックさんへ渡すんです」


「お、重い!」


「さっきモッコリさせていたでしょうが! 元気が余っているんだから頑張って下さい!」


「むおー!」


 俺と距離を置いて、モッチーこと望月さんがゲラゲラ笑っていた。

 ま、まあ、力仕事ならがんばりますよ!

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