第38話 マナポーション
俺は望月さんと一緒に二階層で戦闘を重ねた。
敵ゴブリンが手にする武器は変わるが、初戦のパターンを踏襲しているので危なげなく勝利をつかむ。
俺が突っ込み、ゴブリン一体にケリを見舞い体勢を崩す。
望月さんが風魔法ウインドカッターで仕留める。
残り一体のゴブリンに俺が組み付く。
首をひねって仕留める。
ノーダメージで連戦連勝を続けて、二階層のボス部屋前に到達した。
俺はボス部屋に突入しようと思ったが、望月さんから反対意見が出た。
『上原さん、意見聞け』
俺は『なるほど』と納得した。
確かに上原さんから客観的な意見をもらってから、二階層のボス部屋挑戦を判断した方が良さそうだ。
俺と望月さんのコンビ初日は、二階層を周回してひたすらゴブリン狩りを行った。
望月さんから休憩のリクエストが時々入った。
例のホワイトボードにでかでかと文字が書かれる。
『休憩』
俺は体力バカ系のパラメーターなので疲れないが、望月さんは連戦で疲れを感じるのだろう。
さらに望月さんのMP回復もある。
俺は望月さんのリクエストを受け入れ、時々休憩を入れた。
MPは時間経過で自然回復する。
MPといっても具体的に数値が表示されるわけではないので、あくまで本人の感覚頼りだが、レベル一桁なら一時間でかなり回復するらしい。
なぜか二階層はあまり冒険者がいない。
おかげで獲物はタンマリいる。
朝から夕方まで、俺と望月さんはタップリ活動した。
冒険者ギルドへ戻ると受付の上原さんがニッコリ笑顔で迎えてくれた。
「お帰りなさい。パーティー結成初日はどうでしたか?」
「バッチリです! たっぷり稼いで来ましたよ。」
「望月さんは、どうでしたか?」
上原さんが、ちょっと離れた壁際に立つ望月さんに声を掛けた。
望月さんは、無言でスマホを操作する。
すぐに上原さんのスマホがブルブルと振動した。
望月さんのメッセージを受信したのだ。
スマホを見た上原さんが、ニッと笑った。
「望月さん、何て言ってますか?」
「狭間さんと相性が良いって言ってますよ」
「おお! 俺もそう思います!」
「では、今日の戦果を見せて下さい」
俺は大き目のレジ袋に入ったゴブリンの魔石をドンと置いた。
「おお! かなりありますね!」
「数えてなくて申し訳ないですが」
「大丈夫です。こちらでカウントします」
「それからこれもドロップしました」
さらに俺はドロップアイテムを取り出した。
ドロップ品は小さな瓶に入った紫色の液体だ。
オーラスでドロップしたのだ。
「これ、ポーションとは瓶の形も液体の色も違いますよね?」
「そうですね……。これは……鑑定……」
上原さんは鑑定スキル持ちだ。
上原さんがドロップ品の小さな瓶を鑑定する。
「おめでとうございます! マナポーションですね! MPを回復させるアイテムです! 買い取り価格は五十万円です!」
「おお!」
どうやらアタリを引いたようだ。
以前ドロップしたポーションの買い取り価格百万円には及ばないが、五十万円なら望月さんと山分けして二十五万円ずつ。
一日の稼ぎ、ボーナスとしては上等すぎるだろう。
俺はガッツポーズ、ちょっと離れたところにいる望月さんは飛び跳ねて喜んだ。
「わーい! わーい! 焼き肉食べるぞー! ビールも飲むぞー!」
望月さんがメッチャ喜んでる。
ふふふ、良かった! 焼き肉楽しんで!





