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駅前はダンジョン~派遣から転職したらパワー系魔法使いでした!  作者: 武蔵野純平
第三章 西新宿の首折り魔

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第32話 魔法ファイヤーの検証

 俺が魔法スキルを得たので、俺と上原さんは新宿西口ダンジョン一階層に入った。

 周りに人のいない場所まで移動して早速魔法スキルの検証だ。


 まず、上原さんが魔法の説明をしてくれた。


「初級の火属性魔法はファイヤーです。火炎放射器のように炎を放つ魔法です。みなさん、こういう具合に指先から発射していますね」


 上原さんが右腕を伸ばして一般的なファイヤーの発射態勢を見せてくれた。


「この姿勢で『ファイヤー』と唱えれば魔法が発動します」


「ほう、ほう。簡単そうですね」


「ファイヤーの射程距離は約三メートル。これは知力やジョブのレベルによって長短があるそうです。的に当てることを意識すると良いそうです」


 上原さんの説明は分かりやすかった。

 さすがギルド職員!


 俺は魔法を試してみたくなった。


「じゃあ、やってみます。まず姿勢をとって、的を絞って、呪文を唱える……」


 俺は右手を正面に伸ばした。

 二本指にして指先から炎を放つイメージをする。

 的は正面だ。

 とにかく真っ直ぐ炎を放ってみよう。

 そして呪文。


「ファイヤー!」


 指先から炎が出た!

 確かに火炎放射器のような強烈な炎だ。


 だが、射程距離は二メートル程度。

 さらに、炎の方向が安定しない。

 正面を狙ったのに、右、左、上、下とあさっての方向へ炎が飛んでいく。


 炎が指先から吐き出され、数秒で消えた。


「炎自体は強烈ですね。ゴブリンは火だるまになるだろうし、毛皮のある魔物なら黒焦げだ」


「そうですね。けど、狭間さんのコントロールが……」


「そうなんですよね。器用さが低いから?」


「おそらくそうでしょう。射程距離も短いですよね? 多分、魔法使いとしてのレベルが低いことと、知力が低いことが原因じゃないかと思います」


「それはどうにも改善のしようがないですね」


 俺は苦笑する。

 まあ、予想していたことではあるけれど、ちょっと悔しい。


 それでも、大事なのは俺も上原さんも、魔法がノーコンであろうことは予想していて、バッチリ対策出来ていることだ。


 そう!

 ドワーフのエイホックさんにもらった魔法使い用のグローブ!


「じゃあ、次はグローブに魔法を発動してみましょう」


「うす!」


 俺は右手を握ったり開いたりしてみた。

 ドワーフの名工エイホックさん謹製の魔法使い用グローブは、しっかりと手に馴染んでいる。

 行けそうだ!


 俺は自信を持って右手をスッと前に突き出した。

 手のひらのミスリルを意識して、ミスリルから炎を放つイメージを持つ。


「ファイヤー!」


 ゴウッと音がして、俺の右手の手のひらに炎が宿る。

 生まれた炎は真っ直ぐに進み空気を焼き切る。


「おお! 狭間さん、良い感じですね!」


「そうですね。このグローブから魔法を放つと真っ直ぐ炎が出ます。ただ、射程は短いですよね?」


「一メートル二、三十センチだから、射程は短いですね。槍より近い距離ですね」


「使えないかな……?」


「いえ、いえ。接近戦で使ったら必中ですよ。間違いなく敵は火だるまですね。普段はパワー系として戦って、強い相手と出会ったら――」


「これか! ファイヤー!」


 今度は左手から魔法を放ってみた。

 左手でも同じように魔法を放てる。


 色々と制限はあるが、ちょっと魔法使いらしくなってきたぞ!


 だが、すぐに問題に気が付いた。

 いや、俺の魔法は問題だらけだけど、さらなる問題だ。


 俺は困惑し、上原さんを見た。


「上原さん。MPが切れたみたいです……」


「うーん、三発ですか……。普通レベル2の魔法使いなら十発は放てるんですけど……。まあ、でも」


「でも?」


「魔法が使えるだけ儲け物ですよ」


 上原さんがニヤリと笑った。

 ふふ。そうだな。

 魔法を放つチャンスは三回だけ。

 だが、三回もチャンスがあると思えば、御の字だ。


 俺はガツンと両の拳を打ちつけた。


「上原さん。ありがとう! やれそうな気がするよ!」

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