表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
駅前はダンジョン~派遣から転職したらパワー系魔法使いでした!  作者: 武蔵野純平
第三章 西新宿の首折り魔

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/53

第30話 忘れてしまう男

「らららら~♪ ただいま戻りました~♪」


 一階層を突破し俺は上機嫌で冒険者ギルドへ戻ってきた。

 まだ、お昼を過ぎたばかりで、冒険者ギルドは閑散としていた。

 新宿西口といえども、この時間はヒマなのだろう。


 受付カウンターの女性に声を掛けると、『すぐに上原を呼んできます!』と奥へすっ飛んでいった。

 すぐに上原さんがやって来る。


 上原さんはお昼休憩中だったようで、頬を膨らませモグモグと何か食べている。


「あー、上原さん。休憩中にごめんなさい。お食事中でしたか?」


「いえ、もう食べ終わったので問題ありません」


 俺と上原さんは、受付カウンターで向かい合う。

 愛があるから、目と目で通じ合うはずだ。

 俺は笑顔で上原さんをジッと見つめた。

 俺の愛がこもった熱視線に上原さんもメロメロのはずだ。


「狭間さん……。笑顔で無言だと、キモイです。さっさと報告して下さい」


「ええっ!? なぜ、俺の愛が通じないのか!?」


「はい、はい。そういうのもう良いですから! さっさと買い取りを出して下さい!」


「なんか冷たいなぁ~。」


「ああ、ウザい!」


 上原さんに嫌われるのは困る。

 これでは職場の女性にセクハラする困ったおじさんではないか!


 俺は観念して戦利品を取り出した。

 一階層ボス戦レッドゴブリンが残した液体の入った瓶だ。

 これは相当良いモノなんじゃなかろうか?


 俺はフンスと鼻息荒く腕を組みドヤ顔を決める。


 だが、上原さんはコテンと首を傾げた。


「あれ? 狭間さん? 魔石は?」


「え?」


「魔石ですよ。魔石」


「マー・セッキさん?」


「違いますよ! 魔石です! ま、せ、き! 魔物を倒したら体内から魔石を取り出すでしょう? 研修で教えましたよね? 一日目はやってましたよね? ゴブリンの魔石を持って帰りましたよね?」


 俺は上原さんの言葉に青ざめる。

 何てことだ!


「あー! 忘れてた!」


「何やってるんですか! 魔石は冒険者の収入源ですよ! 冒険者ギルドの収入源でもあるんです! しっかり回収してきて下さい!」


「ソーリー……」


 俺はしょぼんとしてしまった。

 そういえば、昔から仕事先でやらかすことがあったよな。

 つい、うっかり、忘れてしまう。

 メモを取っても、メモを取ったことを忘れてしまう。

 ああ、世界はなんて過酷なんだろうか!


「まあ、狭間さんならやらかしそうですよね……。それで、コレがドロップ品ですね。どこで手に入れたんですか?」


 上原さんがフォローになってないフォローを入れ、俺に報告を求める。

 もっと優しくして欲しいなと思いながら、俺は上原さんに今日の活動を報告する。


 すると上原さんは眉をひそめた。


「うーん、ボス戦単独突破ですか……。おめでとうございます。でも、一人でボス戦はリスクが高いですからね。今後の活動を考えるとパーティーを組んで方が良いです」


「上原さんも知ってるでしょう? 俺のステータスとスキル構成がチグハグで、同期の冒険者に敬遠されてるんですよ」


「あー、それは気の毒ですよね」


「おまけに変態だとか、モッコリーノ男爵だとか、性犯罪者的な噂が流れていて――」


「それは狭間さんにも問題がありますよね? 先ほども私にジッと気持ち悪い笑顔で視線を送ったりして、軽いセクハラですよ。慎ましく行動して下さい」


「サーセン!」


 おかしいな?

 俺の愛はどこへ?


「ギルドの方でパーティーメンバーになってくれる人がいないか探してみます。狭間さんも探して下さい」


「了解です!」


 さすが上原さん! 頼もしい!

 俺の気持ちはグッと上がった。

 やはり俺への愛に違いない。


「しかし、スピードの速いレッドゴブリンですか。レアボスにあたりましたね。そして魔石を取り忘れたと」


「うぐ!」


「一階層のレアボスの魔石って、まだ取り扱い実績がないんですよ。高値で買い取りだったと思います。惜しいことしましたね」


「上原さん。もう、止めて。俺のライフはゼロですよ」


「でも、この瓶は良い物です。パワーアップポーションですね。飲むと10%パワーアップします。効果は一時間続きますね」


 上原さんはアイテムを鑑定するスキルを持っている。

 上原さんが言うなら間違いないのだろう。


 ただ、10%のパワーアップってどうなんだろう?


「10%パワーアップって微妙じゃないですか?」


「いえいえ。レベルの高い冒険者はパワーも高いでしょう? だから一割はバカにならないですよ。強力な魔物相手なら切り札になるアイテムです」


「なるほど! 確かに!」


 上原さんの説明に、俺は納得した。

 どうやらアタリを引いたようだ。


「そうすると売らないで、自分で持っているのもアリですね?」


「はい、もちろんアリですよ。ちなみに買い取り価格は、十万ポイントです」


「売ります!」


 俺は即売却を決断した。

 だって、日給十万円になるんだもん。


「狭間さんならそう言うと思いました。ありがとうございます。強い魔物と戦っている人からリクエストが多いアイテムなのでギルドとしてもありがたいです」


「お役に立てて光栄です!」


 今日も稼いだな、帰りに何を食べよう。

 上原さんを誘おうかなと考えていると、上原さんから重要な指摘が。


「ボスを倒したならレベルアップしたんじゃないですか?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

■クリックで応援!■

★★★小説家になろう 勝手にランキング★★★


■お知らせ■

m3xp8tkadjxaklfuf50kcny8up9_qa2_dw_jq_94mv.jpg

【蛮族転生! 負け戦から始まる異世界征服】がコミカライズされました!
マンガ一巻発売開始です!
全国の書店、Amazon、電子書籍サイトにて、ぜひお買い求め下さい!

蛮族転生! 負け戦から始まる異世界征服1(Amazon)

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ