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第3話 ステータスやジョブ

 ズンと説明会の空気が重くなった。


 魔物を間引く……。

 つまり魔物と戦うということだ。


 俺は冷蔵庫で押しつぶしたゴブリンを思い出した。

 緑色の体液が出て気持ち悪かった。

 アレをまたやるのかと思うと気が重いな。


 俺は気を紛らわせるために、左隣の神宮司君に話しかけた。


「わかってはいたけど、生き物を殺すのは気が重いね」


「ですね。仕方ないとは思いますが、精神的にキツイですよね」


「俺……、仕事先でゴブリンに遭遇して倒したことがあるんだよ……」


「えっ!? 凄いじゃないですか!」


「いや……、それが……、重い物を運んでいたからさ。運んでいた重い物でグチャッと……」


「あー……」


 神宮司君は、口をへの字にした。

 右隣のマイルドヤンキー兄ちゃんにも、俺と神宮司君の話が聞こえたみたいで、『マジかよ!』って顔で俺をチラチラ見ている。


 マジなんだよ。

 他の出席者さんを見ると、『生き物を殺す』って実感を持てないみたいで、みんなノンビリした顔をしている。

 ピンと来ないんだろうね……。


 自衛隊の田中さんは、変わらずハキハキした口調で話を進める。


「タワーの中はダンジョンになっています。タワーの中、ダンジョンでは銃が使えません」


「「「「「えっ!?」」」」」


 俺は驚いて声を出してしまった。

 他の出席者も驚いている。


「みなさん驚きますよね? 本当に不思議ですが、タワーの中では銃、爆薬、電子器機が使えないのです。拳銃、手榴弾、無線、スマートフォン、懐中電灯すらダメでした」


「「「「「……」」」」」


「原因はわかりません。何らかの妨害が行われているのか? それともタワーの中は物理法則が地球とは違うのか? 現在、大学の先生や研究機関の職員によって調査しています」


 田中さんの言葉に会場がざわついた。

 若い人の中には、『配信出来ない!』と叫んでいる人もいる。

 動画配信者さんなのかな?


「神宮司君。知ってた?」


「SNSで見かけたことはありますが、公式情報は初めてですね」


「銃が使えないとなると、剣で戦うのかな?」


「SNSの噂じゃ魔法があるみたいですよ」


「魔法!? あるの!? うわっ! 凄い楽しみ!」


「狭間さん。さっきの重い空気は何だったんですか!」


 俺がはしゃぐと神宮司君からツッコミが入った。

 スマン年甲斐もなくはしゃいでしまった。


「お静かにお願いします! モニターを見て下さい!」


 田中さんが手を叩いて説明会場を静めて、モニターの画面を切り替えた。

 モニターには、何かの文字が映し出された。

 出席者から疑問の声が出る。


「えっ!?」

「何これ?」

「ゲームの画面?」


 モニターには、『スキル』、『ジョブ』、『パワー』といったロールプレイングゲームのステータス情報が映し出されている。


 これってまさか……。


「みなさん。銃が使えないと聞いて不安になった方が多いでしょう。ですが、安心して下さい! ダンジョンに入ると、この画面に映っているような『スキル』や『ジョブ』が付与されます!」


 ザワリと会場が揺れる。


「ジョブやスキルは戦闘向きが多いです。ジョブやスキルを得ることで、ダンジョン内の魔物と効率的に戦うことが出来ます。我々自衛隊が検証済みです。例えば、私のジョブは『剣士』。スキルは『スラッシュ』。一撃で魔物を倒すことが可能です」


「「「「「おお~!」」」」」


 これは頼もしい情報だ。

 ゲームみたいでちょっと信じがたいが、ジョブやスキルがあるなら銃がなくても魔物に対抗出来るかも……。


 ちらりと左隣を見ると神宮司君が両手を組んで喜びに震えていた。


「これだ! これだよ! これをやりに来たんだ!」


 どうやら神宮司君は、リアルでゲームをプレイする感覚で冒険者になりに来たようだ。

 いや、なんというか……、スゲエな!


 会場が大騒ぎになっている。

 自衛隊の田中さんが、両手を上げて場をおさめようとしている。


「ただし! これらの情報は公開していません。面白半分にダンジョンに入って犠牲者を出さない為です。今後、冒険者ギルドが全国展開されて、ダンジョンの管理態勢が整ったら、政府が情報を公開するそうです。それまで内密にお願いします。ご家族にも話さないで下さい」


 俺は腕を組んで考え込み、神宮司君に聞いてみた。


「どうなんだろう? 秘密にしておいた方が良いのかな?」


「うーん……。妥当な判断……かもしれなせんが……。既にSNSで色々噂が出ていますからね」


「そうなんだ? まあ、今時秘密にしてもネット経由でバレちゃうよね……」


「情報をオープンにして攻略ウィキを作れば、効率が良いと思うんですよ」


「それ良いね! モンスターの弱点とか知りたいよね!」


「でしょ? 何かやりたいですね! 情報共有!」


 話す人が冒険者ギルドの女性に交代になった。


「はーい! みなさん! 注目してくださーい! ちょっと怖い話が続きましたが、良い話もあるんですよー! こちらのモニターに注目ぅ!」


 軽いノリのお姉さんが出て来て、ぱあっと華やかな雰囲気になった。

 大型モニターには、『こんなにお得! 冒険者優遇政策!』と大きな文字。

 続いてズラズラッと優遇措置が書かれている。


「本日、冒険者登録をして冒険者アプリをダウンロードしていただくと二十万円分のポイント、二十万ゴールドを差し上げます! ゴールドは全国のコンビニ、スーパー、ドラッグストア、ファーストフード店でご利用いただけます!」


「「「「「おお!」」」」」


 冒険者ギルドのお姉さんが、何か宝石のような物を指に挟んで高く掲げた。


「これは魔物の体内から採れる魔石です。この魔石が魔物の討伐証明になります。この魔石の買い取り額を、冒険者登録から一週間は一万ゴールドにアップ!」


「「「「「おお!」」」」」


「さらに! さらに! 冒険者として活動をしていただくと、デイリーボーナスが毎日千ゴールド! 五日目に五千ゴールド! 十日目に一万ゴールド 二十日は五万! 三十日で十万ゴールド!」


「「「「「うおおおお!」」」」」


「その他、保険は冒険者ギルドの組み合い保険で格安! 国民年金は免除! 所得税、住民税も安くなりまーす! さあ、ここまでの説明を聞いて冒険者になる人は、こちらで手続きをお願いします!」


「やります!」

「俺も!」

「年齢制限ないですよね? やりますよ!」


 一気に会場のボルテージが上がり、どうっと希望者がお姉さんのところに殺到した。


 俺も興奮している。

 頭の中でいくらもらえるか、パチパチと計算している。

 右隣のマイルドヤンキー兄ちゃんは、スマホを取り出して露骨にいくら稼げるかカウント中だ。


「ちょっと注意が必要ですね……」


 左隣の神宮司君がボソリとつぶやいた。

 どういうことだろう?


「えっ? 何か気になることが?」


「いや、水を掛けるようで申し訳ないですが……。話がうますぎると感じました」


「そういえば……そうだね……」


「!?」


 俺と右隣のマイルドヤンキー兄ちゃんは、神宮司君の言葉でピタリと動きを止めた。

 確かに神宮司君の言うとおり待遇が良すぎる。


「まあ、デイリーボーナスは交通費の補填として納得出来ます。初回登録二十万ゴールドと買取額アップも、採用経費や宣伝費としてわかります。けど、年金免除とか、税金が安くなるとか、ケチな日本政府にしては、いくらなんでも大盤振る舞いが過ぎると思います」


「それもそうだね……。神宮司君としては、何か裏があると?」


「そこまでは言いませんが。政府は相当追い詰められているのでしょう。年金や税金を下げるから冒険者として活動して魔物を倒して下さい……という感じでしょうか……」


「なーるほど。それか、余程危険で冒険者のやり手がいないとか、すぐ死んでしまうとか?」


「その可能性もありますよね。危険度が非常に高いから、やりたい人があまりいない。だから報酬が良い」


「納得出来る話だね」


 神宮司君の予想は説得力がある。

 日払い派遣だって、仕事がキツくて不人気な現場は時給が高い。


「まあ、いくらステータスがあるとはいえ銃を使わずに魔物を倒せという時点でハードですよね」


 神宮司君がつぶやくと、俺の右隣に座るマイルドヤンキー兄ちゃんが話に入って来た。


「アンタ。頭が良いんだな。すげえ参考になったよ。ありがとな。俺は、入江レオン」


「よろしく!」


 おお! 二人がガッツリ握手している!

 何だかしらないけど、若人同士で友情が芽生えてるぞ!

 ちょっと羨ましいぜ!


 色々と怪しい点はあったが、俺、神宮司君、マイルドヤンキー兄ちゃんのレオン君、三人とも冒険者登録をした。


 さて、これからダンジョンで実地研修だ!

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