第21話 ダンジョンの出口?
俺たち調査隊はダンジョンの一階層から村へ向かって移動した。
ダンジョンの入り口を南、ダンジョンの奥を北とすると、村があるのは北東の方だ。
俺たちは北東へ向かって歩いた。
ゴブリンが現れるが自衛隊が秒殺!
隊長の新田さんが教えてくれたが、自衛隊の調査隊参加メンバーは、ダンジョン調査専門の隊員らしい。
あちこちのダンジョンに潜って、情報収集をしているそうだ。
「それで装備がバラバラなんですか?」
「そうです。自分のジョブやスキルにあった装備を身につけています」
「新田さんの制服も?」
「いえ。私は別です。今回、村で何が起こるかわからないので、きちんとした服を着てきました。装備品は別に持っていますよ」
隊長の新田さんは、俺の質問に答えてくれた。
歩いていてヒマだから色々聞いたが、なかなか参考になる。
先行している自衛隊員が、時々双眼鏡で巨木の方を見ている。
「新田さん。あれは何をしているんですか?」
「村の方角を確認しています。狭間さんが上った巨木に自衛隊員を上らせていて、我々が村の方向に進めるよう指示を出してもらっています」
「へえ~! 用意周到ですね!」
さすが自衛隊!
俺は新田さんたちの段取り力に感心する。
ちらりと後ろを見ると、上原さんは女性隊員さんと和やかに話している。
(この雰囲気なら大丈夫そうだ)
上原さんの表情もリラックスしている。
出発するまで、かなり警戒していたが大丈夫そうだ。
歩き続けること一時間。
先行している自衛隊員が手を上げた。
俺たちは停止し、隊長の新田さんが声を掛けた。
「どうした?」
「隊長。ここがダンジョンの壁です」
「ふーむ……村へは行けないのかな?」
新田さんが空間に手をあてると、ピタリと手が止まった。
透明な壁があるみたいだ。
俺は振り返って上原さんに話しかけた。
「上原さん。何のことがわかりますか?」
「こういうフィールド型のダンジョンは、透明な壁があるそうです」
「壁が?」
「ええ。ダンジョンの階層によって広さはマチマチですが、フィールドがずっと続いているわけではないそうです」
何やら不思議な話だが、ダンジョン自体が不思議のかたまりなのだ。
「じゃあ、俺たちが見ている壁の向こうに続く光景は……、CGやVRみたいなものなのかな?」
「どうでしょう? 色々な説があるそうですが、ハッキリわからないみたいですよ」
「ふーん……。不思議だな~」
俺も透明な壁に触ってみた。
コンクリートをさわった硬質な感触だ。
透明だがガラスやアクリルではない感触に、俺は違和感を覚えながら壁を叩いたり、寄っかかったり、触れたまま移動してみたりしてみた。
新田さんたち自衛隊は、色々議論している。
上原さんも議論に加わって、撤収するか、ここで調査するのか話し合っている。
俺は退屈になり、透明な壁に寄りかかった。
「うわっ!」
すると、俺の背中に壁はなく、俺はひっくり返ってしまった。
(あれ? 太陽?)
ひっくり返った先は外だった。
太陽がまぶしい。
俺は立ち上がると辺りを見回した。
俺が立っているのは、見通しの良い草地だ。
ちょっと先に木が立っている。
振り向くと崖。
崖には大きな洞窟の入り口がある。
入り口は真っ黒で先は見えない。
(なんだこれ!? 上原さんや自衛隊のみなさんは?)
俺はキョロキョロと辺りを見回すが、一緒にいた調査隊の面々がいないのだ。
「ひょっとして……」
俺は洞窟の入り口に触れてみた。
何も感触がない。
そのまま黒い闇の中に進んでみるとダンジョンの一階層に戻れた。
上原さんと自衛隊の人たちが驚き、俺を見ていた。
俺はテヘヘと照れ笑いしながら告げた。
「あの~、ここから外へ出られるみたいですよ?」





