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駅前はダンジョン~派遣から転職したらパワー系魔法使いでした!  作者: 武蔵野純平
第二章 冒険者活動にもっこりを添えて
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第18話 上原さんの心配ごと

 俺と上原さんはギルド長の部屋を出ると、急いで装備品の販売店へ向かった。

 現在時刻は、九時三十分! 出発まで三十分しかない!

 俺は着替えればOKだけど、上原さんは装備を調えなければならない。


 冒険者ギルドを出て、百貨店のバックヤードに入る。

 装備品のお店は、バックヤードの奥にある。


 すると上原さんが、バックヤードの一角に俺を引っ張た。

 鉄製の大きなカートが置かれ段ボールが積まれた一角で、上原さんはキョロキョロとあたりを見回す。


 俺も周囲を見る。

 誰もいない。


「上原さん。どうしたの?」


「狭間さん。何があっても私を守って下さいね!」


 上原さんは、真剣な目で俺に問うた。

 一体どうしたのだろう?


「もちろん。何があっても俺は上原さんを守るよ。どんな魔物でも倒すし、最悪上原さんが逃げる時間を稼ぐから大丈夫!」


「自衛隊からも守れますか?」


「えっ!? 自衛隊から!? どういうこと!? 自衛隊は味方じゃないの!?」


 何を言うのだろう……。

 俺が驚いて大きな声を出すと、上原さんは俺の口を手でふさいだ。


「声が大きいですよ!」


「ムゴムゴ……。ご、ごめんなさい」


 上原さんが俺の口から手を離し、ひそひそ声で話を続ける。


「今回の調査隊はリスクが高いと私は考えています」


「リスク?」


「ええ。何があるかわからないです」


 それはそうだろう。

 ダンジョンで村が発見されたのは世界初だとギルド長の藤谷さんが言っていた。

 しかし、俺は上原さんが口にしたリスクが何を指すのかわからなかった。


「でも、リスクって……。ヤバかったら引き返せば良いんじゃない?」


「引き返せなかったら? 例えば、魔物に囲まれるとか、村の住人に囲まれるとか……。村の住人に囲まれたら、住人と戦って強行突破出来ますか?」


「それは……! 難しいかも……」


 なるほど。

 上原さんが、ギルド長の藤谷さんと厳しい表情で話し合っていた理由が見えてきた。

 上原さんは、この調査隊の仕事が相当厳しくなると考えているのだ。


 俺は思いきって言葉を選ばずに聞いてみた。


「上原さんは、生きて帰れないと?」


「そこまでは……。けど、最悪、死亡するリスクもある案件だと思ってますよ。もちろん、冒険者は絶対に安全な仕事じゃないですけど」


「まあ、そうだね」


 今のところ、俺はゴブリンとしか戦ったことがないので、死ぬほど危険な仕事とは思わない。

 せいぜい骨折だ。

 だが、強い魔物が出て来たらどうなるかわからない。


 それに俺は対人戦の経験はない。

 ケンカをしたこともないので、人を傷つけたことはない。

 だから、『村人に囲まれたら戦えるか?』と問われると、『村人と戦う』と即答出来ない。


 それに気になるのは……。


「ねえ、上原さん。自衛隊から守るってどういうこと?」


 上原さんは、深くため息をついた。


「あり得ないと思いますが……。私と狭間さんを口封じする可能性です」


「ファ!?」


 口封じ!?

 つまり、村の存在を知っている人を亡き者にして、秘密を守るってことか!?


「そこまでやる!?」


「ギルド長の藤谷さんは、穏やかな人柄ですから……。ないと思いますよ。ないとは思いますが……」


「そういう可能性も考えておけと?」


「ええ。頼れるのは狭間さんだけです」


 俺はドキーン! とした。


『頼れるのは狭間さんだけです』


『頼れるのは狭間さんだけです』


『頼れるのは狭間さんだけです』


 上原さんの言葉が頭の中でリフレインする。

 そうか! 俺って頼れる存在だったんだ!


 俺はドンと胸を叩いた。


「任せて! 命に代えても上原さんを守るから!」


「ありがとうございます。頼りにさせて――ん?」


 上原さんが下を見た。

 何だろう?

 上原さんの表情がブリザードのように冷たくなる。

 ええ!? なに!?


「もっこりさせながら言っても説得力ゼロですよ!」


「さーせん!」


 いつものように俺は上原さんにグーパンをくらい幸せだった。

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