第15話 もっこリーノ男爵
翌日、冒険家二日目の朝が来た。
いつも通り朝六時に目を覚まし、納豆ご飯を食べ、塩おにぎりを作って家を出る。
電車に乗っていると神宮司君からスマホにメッセージが届いた。
SNSへの誘いだ。
電車の中はヒマなので、早速見てみる。
(おっ! 早くもスレッドが立ってる!)
神宮司君は優秀だ。
テーマごとにスレッドを立てていた。
・日々の活動
・雑談
・メンバー募集
・悩み相談
・ダンジョン攻略情報
・ジョブ情報
・スキル情報
・モンスター情報
・レベルアップ情報
・装備情報
俺はスレッド『日々の活動』を見てみた。
神宮司君たちは、すでに一階層のボスを撃破して今日から二階層の探索を始めるそうだ。
一階層のボスは、『レッドゴブリン』で赤い肌をしたパワータイプのゴブリンらしい。
(なになに……。『力が強いので石斧を盾で受けると手が痺れる。スピードで攪乱して倒した』。なるほど~!)
これはありがたい情報だ。
俺は一階層のドロップでポーションが出たこと、高額で売れたことを書き込んだ。
情報をもらう以上は、こちらも情報を提供しないと。
相互情報提供は大切だ。
だが、村のことは上原さんから口止めされていたので秘密にした。
そう、これは秘密なのだ!
俺と上原さんの秘密!
ああ、なんか胸がときめくなあ~。
俺は頼りにされる冒険者になるのだ。
そして、上原さんと……。
「ぐふふ……」
俺が声に出して笑うと、近くのサラリーマンが気持ち悪そうに俺を見た。
どうもスミマセン。
続いて悩み相談を見てみた。
(あっ!)
とんでもない書き込みを見つけてしまった。
『もっこりの変態が出現しました!』
『もっこリーノ男爵と名付けました!』
『もっこリーノ男爵は、スキニーみたいにピタッとしたパンツをはいて、ジャケットを羽織っています。股間をもっこりさせて、ゴブリンに襲いかかっていました』
とんでもないことである!
誤解である!
俺はスレッドの続きを読む。
『それ、大丈夫なの?』
『ギルドに報告した?』
『報告済みです』
これは昨日出会った女性三人組の誰かに間違いない。
(くっそう! あいつら!)
俺は満員電車の中で憤る。
(おっ! 神宮司君が返信してるぞ!)
『とんでもない変態がいるのですね! 皆さん注意して行動しましょう。危険な場合は、近くにいる冒険者同士で力をあわせて対応しましょう!』
神宮司君! オマエもか!
何だかすっかり俺が露出狂のような扱いになっている。
不名誉過ぎるぞ!
『違います! 変態ではありません! 説明させて下さい!』
俺はピタッとした冒険者専用の装備であること、ランチに焼き肉を食べて元気になりすぎたことをスレッドに書き込んだ。
これで誤解が解けることを祈ろう。