第14話 家路
「ふう~、疲れたな~」
俺は電車を降りて、地元駅のホームを歩く。
時間は午後七時。
夏は日が長い。
ようやく日が傾いて、殺人的な暑さが和らいできた。
もっとも、俺は一日ダンジョンにいた。
ダンジョン内は別世界で、過ごしやすい春くらいの気温だった。
ダンジョンから外に出て暑さに閉口した。
普段着に着替えてきたが、やはり外は暑い。
駅前のお弁当屋さんをふと見ると、ポイント利用可のステッカーが貼ってあった。
(あっ! お弁当屋さんでゴールドが使える!)
冒険者ギルドのポイント『ゴールド』が使えるのだ!
お昼ごはんは、上原さんと焼き肉をガッツリ食べた。
撮影に行く間に、家から持ってきた塩おにぎりを食べた。
それでも、腹ぺこだ。
ダンジョンで活動をすると、お腹が減るのだ。
今日はラッキーだった。
タップリ稼げた。
明日のためにシッカリ食べておこう。
「唐揚げ弁当大盛り、豚汁、サラダ、ポテト、冷やしうどん、プリンをお願いします」
「ありがとうございま~す!」
ああ、お金に余裕があるのはありがたいな……。
食べたい物が好きに食べられる。
お金がないと、食べたくても我慢しなくちゃならない。
冒険者は危険のある仕事だけど、こうしてお弁当屋さんでたくさん注文出来ると、冒険者になって良かったと思う。
お弁当を持って家に向かう。
茜色の空が徐々に暗くなり、雲は灰色に変わっていく。
月が出て、もう、日が沈みそうだ。
タワーが出現して日本は滅茶苦茶になった。
けれど、俺の生活は良い方向に変わった。
俺は穏やかな気持ちで、町を歩いた。