第12話 村が見える!?
「くっそう! 最高の装備だが、思わぬところに落とし穴だぜ!」
俺はブチブチと文句を言いながら、倒したゴブリンの解体を始めた。
俺の身につけているボディスーツは、サイバーパンクでカッコイイが、体の線が出てしまう。
専用ジャケットを羽織っているが、俺の燃え上る情熱ハートは隠しようがない。
女性三人組に変態扱いされてしまった。
「そもそも! ゴブリン! オマエが悪いぞ! 正々堂々と戦ってくれれば、こんなことにはならなかったんだ!」
まあ、上原さんなら『もっこりさせてるオマエが悪い!』とか言って、グーで殴ってくれるだろう。
「ハッ! いつの間にか、上原さんに殴られることを期待している! イカンよ!」
ブツクサ文句を言いながらだが、さっさと解体が終わり、魔石を手に入れた。
「えっと……。魔石ヨシ! ドロップアイテム……なし! 怪我……なし!」
指さし確認して戦闘終了だ。
俺は上原さんにプリントアウトしてもらった地図を持って歩き出した。
ダンジョン内はスマホが使えないので、ローテクに頼らざるを得ない。
メモ帳、ボールペン、地図は必須だ。
「次の目印は、三本の巨木だな。アレか!」
一階層の出口は、このフィールドの奥にある。
ひたすら真っ直ぐフィールドの中央を歩いて行けば良い。
俺は目印の三本の巨木を遠くに見ながら草原を歩く。
今回の戦闘は変態扱いされるイレギュラーはあったが、一つ良かったこともある。
戦闘パターンを得たことだ!
ゴブリンに組み付き、グランドに持ち込み首をひねる!
見た目は残酷だが確実に一撃で倒せる。
俺はスキル【精神耐性】があるから、まったく痛痒を感じない。
ちょっと固いペットボトルの蓋をひねる感覚だ。
色々と考えごとをしながら歩いているが、ゴブリンとは遭遇しない。
(一階層は冒険者が多いのかな……)
歩いていると横たわるゴブリンを見かける。
ゴブリンの胸は開かれているので、魔石を取り出された後だ。
ゴブリンには青いスライムがひっついて、ゴブリンを消化している。
(スライムを倒せれば、また、違うんだろうけどな……)
スライムはダンジョンで倒した魔物の残骸を食べてくれる『掃除屋』なのだ。
研修ではスライムは放置するように言われた。
スライムは益虫扱いで、これから研究するそうだ。
「到着!」
俺は三本の巨木に到着した。
地図によると、ここがボス部屋への中間地点だ。
感覚だが十五分くらい歩いただろう。
スマホは使えないし、腕時計も電池式なので使えない。
だから、時間が分からないのだ。
ダンジョンは本当に不思議な場所だ。
(デカイ木だなぁ~)
巨木は本当に大きな木で、幹に抱きついてみたが手が回らない。
見上げると、てっぺんは枝に隠れて見えない。
俺は巨木を上り始めた。
特に何か意味のある行動ではないのだが、ゴブリンが狩り尽くされていて戦闘が出来なくてヒマに感じた。
それで、ちょっと前に流行ったマンガで主人公が巨木に上るシーンがあったのだ。
何となく真似してみた。
ステータスのおかげでスタミナ切れが起きず、てっぺんまで上ることが出来た。
「おお! 眺めが良いぞ!」
巨木の上から見る景色は、なかなか良い。
草原や丘が広がり、あちこちに森が見える。
ここがダンジョンの中だとは、本当に信じられない。
相当な高さなのだが、スキル【精神耐性】のおかげでまったく恐怖を感じない。
「あれ?」
遠くに煙が見えた。
目をこらしてみると、数軒の家が見える。
「えっ!? 村!?」
俺はポケットから地図を取り出した。
地図を見てみるが……。
「村なんて書いてないぞ? これ……ギルドに報告しないと不味いよな……」
俺は大急ぎで巨木を下りて、来た道を走って戻った。