8.初日
誠司は固まっていた。
「ちょっと散らかってるけど、こっちに物置あるからこの部屋使っていいぞ〜」
案内されてついて行くと、ちょっと散らかったブロディアの家にたどり着いた。
(これのどこがちょっとやねん!!)
しかし、こんな見ず知らずの自分を受け入れてくれる人に、とてもじゃないが文句など言えない。
屋根があるだけありがたいと思う事にした。
「えっと…この村では洗濯物とかどうしてるんですか?」
誠司は散らかった衣服を横目に質問した。
「あー、洗い物は村の川の下流の方でやってるんだ。後で案内しとくよ」
そう言うとブロディアは部屋の奥の扉を開いた。
「取り敢えずまずは、お前の寝室を準備しないとな」
部屋を覗くと物置のようになっていた。
部屋には武器や防具、使ってない雑貨などが置かれていた。
「この人は誰ですか?」
誠司の目に留まったのは一枚の写真だった。
「あぁ、それは俺の妻と子供だ。今頃はお前と同じくらいの歳になってるんじゃないかな」
写真を見ると、子供は大体5歳前後くらいだろう。
「奥さんのお子さんは今どこに…?」
「さぁな…ジェニス以外のどっかで生活してると思うが…」
ブロディアの表情が心なしか暗い気がした。
あまり触れてはいけない話題なのだろう。
そう誠司は感じ、それ以上詮索することをやめた。
「ふぅ、こんなもんか」
物置だった部屋が3〜4時間ほどで質素な寝室へと変貌していた。
「腹減ったし、飯にでもすっか!」
誠司も言われてお腹が空いてることに気づく。
「俺は料理が苦手だから簡単なのしか作れねぇけど、いいよな?」
「あ、はい…」
ただでさえ転がり込んでる居候だ。
内心何が出るか不安ではいたが、ご飯の要望なんてとてもじゃないができない。
ブロディアは台所に置いてあった布で包まれた物をほどいていく。
中から出てきたのはパンと干し肉だった。
その隣にあった袋からは芋を取り出して、皮を剥いて切っていく。
「火を灯せ…エンセンディード!」
ブロディアは牧と藁に火をつけると、フライパンを出して干し肉と切った芋を焼き始めた。
火が通ったところで、軽く塩を振って、パンを焼き始め、ブロディアはこんがり焼き目のついたパンに、焼いた干し肉と芋を挟んで皿に盛り付けた。
「ほら食え」
「あ、ありがとうございます…」
干し肉は加熱したせいか噛み切れやすく、芋とパンに肉の香りと微かな塩っけが相まって素朴な味わいながらに美味しかった。
「取り敢えず、明日あたりに村のみんなに挨拶しにいくか」
「そうですね」
この村ではどんなモンスターがテイムされていて、どんな仕事が手伝えるのか、しっかり見て考えないといけないと誠司は考えた。
「そう言えば、ブロディアさんって魔法使えるんですか?」
「なんだ?おめぇ生活魔法しらんのか?」
「生活魔法?」
「そうだ、誰でも使える簡単な魔法の事だ」
ラノベとかで聞いたことはあったけど、この世界にもあるのか。
誠司は続けてブロディアに質問した。
「それって俺でも使えるんですか?」
「んー、そうだな。使えた方が便利だろうし、あとで練習しにいくか!」
ブロディアはそう言うと皿を片付けて着替えの服と大きめの布を取り出した。
「取り敢えず生活の基本を教えるから着いてこい」
誠司はブロディアに言われるまま着いていくと、川が見え始めた。
「よし、この辺でいいだろう。まず生活魔法と言うのは…」
ブロディアの魔法授業が突然始まった。
「まず生活魔法とは主に3つあってな、火と水と光の魔法がある」
そう言うとブロディアは腕を前に突き出した。
「火を灯せ…エンセンディード!」
すると手のひらから火がボッと出た。
「これが火の生活魔法『エンセンディード』だ。見ての通り、火をつける最低限の火しか出ないから、攻撃には向かないぞ」
「あの、前に火を灯せって言う必要はあるんですか…?」
「なんだ、そんなことも知らないのか?前の詠唱も含めて発動の鍵なんだ」
「な、なるほど…」
「さ、真似してやってみろ」
「火を灯せ…エンセンディード!」
すると、誠司の手のひらから同じように火が飛び出た。
「うわ!」
誠司は突然目の前に出た火に驚き尻餅をついた。
「なんか、体から抜けた感じが…これが魔力…?」
「次行くぞ、次は水の魔法だ。水よ出ろ…アクア!」
ブロディアの手から大きな水の玉が現れ、そのまま下へ落下して辺りを濡らした。
「水よ出ろ…アクア!」
ブロディアの時と同じように誠司の手のひらにも大きな水の玉が現れた。
「いいぞ、最後は光だな。暗闇を照らせ…ルーズ!」
ブロディアの手のひらから光の玉が現れ、暗くなった辺りを明るく照らした。
半径大体5mくらいは明るくなっただろうか。
「暗闇を照らせ…ルーズ!」
誠司の手のひらから光の玉が現れた。
二つの光の玉で少し眩しくなった。
「よし、これで大丈夫そうだな?じゃあ汗を洗い流すか。体洗うのに丁度いい照明になったな、ガハハ」
ブロディアはそう言うと服を脱ぎだし、川へと入って行った。
誠司も少し恥ずかしながら、服を脱ぎ後をついていく。
足に川の水が当たると、予想以上に冷たかった。
「こ、こんなのに入るんですか…?」
「なんだ?男なのにだらしないぞ!」
「うぅ…あったかいお風呂に入りたい…」
ブロディアは太ももくらいまで浸かるところまで入っていたが、誠司は脛あたりで限界であった。
持ってきたタオルを川の水に濡らし、体を拭いていく。
「早いところこの村にお風呂作らないと…」
誠司の目標が1つ決まった瞬間であった。




