6.隠れ里
俺はラプスについて行くと、段々辺りに霧が立ち込めた。
「すごい霧ですね…全然先が見えない…」
「あぁ、そうだ。村はもうすぐだ」
霧が出るなんて運が悪いなと思っていたが、ラプスの口ぶりからするとこの辺はよく霧が立ち込めているのだろうか?
そんな事を考えていると村の入口らしきものが見えて来た。
「着いたぞ…おーい!誰か手貸してくれ!」
ラプスが村の方に声をあげると3人ほどこちらに駆け寄って来たのが見えた。
男2人と女1人だ。
「コイツは?」
「多分ステニンだ」
ステニン…?何のことだろうか。
「多分って…まぁいい、オリヴィアの所に連れて行くぞ」
一際体の大きい男がそう言うと、俺の体をひょいと持ち上げてお姫様抱っこをして駆け出した。
周りを見渡したが、お世辞にも綺麗とは言えない村ではあったが、この村では皆自給自足をして暮らしているような印象を受けた。
「あれ…霧が…?」
ふとあれだけ濃かった霧がいつの間にかなくなってたのに気づいた、
「話は後だ…ついたぞ!」
大男はボロい小屋のドアを叩いた。
「オリヴィア!怪我人だ!手貸してくれ!」
ガラガラ…
扉を開けて出て来たのは50〜60歳に見える女性だった。
「おやまぁ、大丈夫かい?痛そうだ…さぁこっちに」
オリヴィアと呼ばれる女性は大男に指示を出して、俺を室内にあったベッドに寝かせた。
「まずは腕の傷からだね…清き力でその身に受けた毒を浄化せよ…ディスインフェクション!」
俺の傷に光がまとわり付いた。
恐らく解毒や消毒の類の魔法だろうか?
「神聖なる力でその身に受けた傷を癒せ…シーカットリザシオン!」
傷を受けた所が光だし、見る見る傷が塞がっていった。
「す、すごい…」
俺は安心すると急に強い眠気に襲われた。
「傷が治っても失った血は戻らない…体も限界だ。ゆっくり休むといい」
オリヴィアに言われるがまま俺は気絶したかのように眠りについた。
どれだけ寝ただろうか、目が覚めると外が明るかった。
「おや、もう大丈夫そうだね」
オリヴィアが俺の顔や腕の傷を見る。
「あの…」
「まぁ、話はご飯の後でも良いだろう」
そう言うとオリヴィアは奥から野菜を煮込んだスープとパンを出して来た。
「いただきます……ん!美味しい…」
「そうだろ?しっかり食べて体力つけるんだよ」
オリヴィアは肝っ玉母さんのような人だった。
「ご馳走様でした」
「それで、あんたは何で森の中に1人でいたんだい?」
「それは…」
何をどこから説明すればいいのだろう、勇者召喚なんてこの人たちに話して大丈夫なのだろうか?
モンスター合成士だと言う事をこの人たちに話していいのだろうか?
「アンタ、ステニンかい?」
「すて…にん?」
「ステニンを知らないのかい?アンタどこの人だい?」
「あの‥すごく遠い所に住んでたんですが、ある日突然ジェニスに連れて来られたんです」
嘘は言っていない。
「なるほどね…捨て人とは国から捨てられた人の事さ」
「………」
「心配しなくていいさ、この村のほとんどの人が捨て人さ」
「え?」
「この村はアルス様とメテス様が作った捨て人を隠すための隠れ里なのさ」
俺は混乱した。
「それってどう言う事ですか…?アルス…様が捨てたんじゃないんですか?」
俺は理解ができなかった。
俺は国王から捨てられたのだ。
普通に考えればアルスは2代目国王であり、この人達を捨てた張本人なのだ。
また、俺はたまたま守屋たちがいたから生き残れたが、本来であれば処刑されている。
そんな人が、こんな隠れ里を作るのだろうか?
「モンスターに関わるジョブが処刑されるのはもう知ってるだろ?」
「はい…」
「でも、初めはそんなのは無かったんだ」
オリヴィアは一口紅茶を啜ると続けて話す。
「元々この世界には凶暴な魔物は居なかったんだ。モンスターと人間は良好な関係を気づいていた」
「あのモンスターが…?」
「そうだ。だが、ある時段々と凶暴なモンスターが現れるようになったのだ。それがアルス様が国王を務めていた時だった」
俺はただ黙ってオリヴィアの話を聞いた。
「モンスター達が人間を襲うようになって、ある時から国民達がそんなモンスターと仲良くしているモンスターテイマー達を危険視するようになったんだ」
「つまり、モンスタータイマー達を追い出したのは…」
「そう、同じ国の民だった。モンスターテイマー達は差別を受け、生活することができなくなっていた。それを見かねたアルス様はメテス様と共に隠れ里を内密に作った」
オリヴィアはそこまで言うと、棚から地図を引っ張り出した。
「ここがこの村の位置だ。丁度ジェニスとメテスの中間にあるだろう?この村の霧はメテス様の魔法によって村を隠すために施されたものだ」
段々と話がつながって来た。
「建前上アルスは国民達に国外追放と言う名目で追い出したと話したが、実際は一部アルス様の家臣と一緒にモンスターテイマー達をこの村に隠したのだ」
「でも、それならなぜ今は処刑することに…?」
「本来アルス様は次期国王にこの話を伝えるはずだった。しかし、次期国王はモンスターに関わるものを酷く嫌った。これは教育したからと言って全て払拭出来ないと考えたアルス様は自身とメテス様内だけ秘密とした」
「し、しかし次期国王に話していたらもう少し変わっていたかもしれないのに…」
「確かにそれはあるかもしれん、ただ話した事によって次期国王にこの村を破壊される事を恐れたのだろう」
確かに、誰かに話すと言うことは相応のリスクが付き纏う。
「私達はそんなアルス様への感謝を忘れない為に、代々子孫に語り継がせているのだ。それが唯一私達からできるアルス様への恩返しと考えた」
きっとアルスの判断は正しかったのだろう、今の国王の態度を見ればいやでも納得せざるを得なかった。
「それで、お前さんもそう言うジョブだったんか?」
この人たちになら話してもいい、今ならそう思えた。
「実はモンスター合成士と言うジョブなんです」
「モンスター合成士?はて、聞いたことないなぁ」
やはり、このジョブはこの世界では未発見のようだった。
「モンスター同士を合成して強くすることができるんです」
「なんと…つまりラプスの連れてるモンスターを強くすることができると言うことかえ?」
「はい、理論上可能です。ただ、合成するのにレベルが最大でないとダメなようですが…」
その時、玄関の扉が開いた。
「オリヴィアおばあちゃん!遊びに来たよ!」
「遊びに来たよ!」
入って来たのは男の子と女の子だった。
男の子は女の子の言葉を真似るかのように話す。
年はどちらも6〜7歳くらいだろう。
「おや、メイとカエじゃないか」
どうやら女の子の方はメイで、男の子の方はカエと言うらしい。
「その人だあれ?」
「だあれ?」
「この人はセージさんだよ」
「セージ?さん?こんにちは」
「こんにちは!」
よく見ると2人の後ろには2匹のスライムが居た。
「この子らは双子でな、どちらもモンスターテイマーなんだ」
俺はスライムを鑑定してみる。
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名前:プルリン
親:メイ
スライム 【⭐︎】
Lv.1/10
体力10/10 魔力8/8
力4 魔4
防4 速1
【固有スキル】
『消化液』
【魔法スキル】
なし
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名前:サイキョー
親:カエ
スライム 【⭐︎】
Lv.1/10
体力10/10 魔力8/8
力4 魔4
防4 速1
【固有スキル】
『消化液』
【魔法スキル】
なし
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「この子はプルリン!一昨日捕まえたばかりなの!」
「コイツはサイキョー!パパとママが手伝ってくれたんだ!」
子供達が初めてのペットかのように、スライムを自慢して来た。
「その‥モンスター合成を使えばこの子らのモンスターを強くすることもできるのかえ?」
「えぇ、出来るはずです」
「え?!お兄さんこの子を強く出来るの?!」
メイとカエは目を輝かせた。
「出来るけど、まずはレベルを10にしないといけないな」
そこまで言うとふと気付く。
スライムは最弱のモンスターだ。
どのようにしたらレベルを上げられるのだろうか。
野良のスライムはもう少しレベルが高かった。
きっと方法があるはずだ。
「オリヴィアさん、モンスターのレベルを上げる方法はわかりますか?」
「それなら、モンスターの魔石を取り込ませたらレベルが上がるはずだ」
「なるほど」
それなら戦わせなくても、魔石を集めて取り込ませるだけでいい。
俺は助けてくれたこの村のためにモンスター合成士として村を助ける事を決意した。




