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4.離脱

どれだけ歩いただろうか、出発した時は明るかったのにもう辺りは真っ暗だ。

ジェニス領から出たのか、まだ領地に居るのかもわからない。

普段運動しない俺の脚は悲鳴をあげていた。

道中何度か銭湯があり、また慣れない足場のせいか浦原達の体力も限界を迎えていた。


能力値の差だろうか、俺は戦闘もせずにただ歩いてるだけでも限界なのに素直に凄いと思ってしまった。

騎士達はキャンプを張り、食事と寝床の用意をし始めた。


「えぇ…ここで寝るのぉ〜?」

浜松が更に不機嫌になる。


「大丈夫、俺が守ってやるからよ!」

「え〜勇人めっちゃ勇者って感じ〜!」

浦原と浜松は何やらイチャつき始めた。


そうこうしていると騎士が食事を配りに来た。

硬いパンと干し肉だ。

そして、浦原、浜松、守屋、椎名と配られて行き、最後騎士が俺の方に来た時、浦原が口を開いた。


「お前戦ってないのに何でご飯食べようとしてんの〜?」

「そーそー、働かない人は食べちゃダメ?って言うじゃん〜?」

「それを言うなら働かざる者食うべからずな?」

「それそれ〜!勇人頭いい〜!」

浦原と浜松が文句を言って来た。


「し、しかしそれでは餓死してしまうのでは…?」

流石に騎士も戸惑った。


「はぁ?戦力にも何ないやつは死んでも良くね?」

実際何も役に立ててないので、俺は浦原に何も言い返せずにいた。

守屋と椎名も黙っている。

あいつらは何を思ってるんだろうか。


「つーか、何だよその目!イラつくんだよ!」

浦原が立ち上がって近づいてくる。


「おらぁ!なんか言えよ!」

浦原の鋭い蹴りを喰らった。

以前とは比べ物にならないほどの威力だった。

モンスターとの戦闘でレベルが上がってたのだろう、この世界で人は短期間でここまで変わるのかと思い知った。

蹴られた衝撃と疲労と空腹で起き上がれずにいた。

浦原がもう一度蹴りを入れようとした時、守屋が止めに入った。


「おい、いい加減にしろ。やり過ぎだぞ」


「あ?」

浦原が守屋を睨んだ。


「周りを見てみろ」

守谷に言われるがまま、浦原が周りを見渡した。

そこには浦原の行動に引いている騎士達がいた。


「ちっ…しらけたわ」

そう言うと浦原は浜松と一緒にテントへ入って行った。


「大丈夫か?」

守屋に体を起こされる。


「これ、飲めるか?」

守屋から手渡されたのは回復薬だった。

回復薬を飲み干すと、疲労困憊で重かった体が軽くなり、歩き疲れた脚や蹴られた体の痛みが引いていった。


「あ、ありがとう…」

取り敢えずなぜ助けてくれたのかわからなかった。


「ちょっとこっちいいか?」

守屋は少し離れたところまで歩くと手招きをした。

何だろうと思いつつも、守屋の方へと歩いた。

騎士達が見えないところまで来ると守屋は足を止めた。


「そうだな…何から話そう…」

守屋は頭を掻きながら考え事をしているようだった。


「その、なんだ…浦原を止められなくてごめん」


「えっ?」

意外な言葉だった。

いや、心のどこかでは期待していた言葉だった。

なんだかんだいつも守屋は浦原を止めてくれていた。

おかげで大きな怪我を何回も免れていた。

やはり守屋は俺へのいじめは積極的ではなかったのだ。


「アイツとは昔からのダチでさ、腐れ縁みたいなやつなんだ。だからいつも一緒にいたけど、正直最近のアイツは度が過ぎてた」


守屋は淡々と語り出した。


「最初は俺も少し面白半分なところがあったけど、最近のアイツには俺もついていけなかった。そして俺はアイツを止めることができなかった」

どうやら、守屋はいじめに対して悔いがあったようだ。


「その、椎名の時ありがとな…。アイツももしらしたら西郷みたいな目に遭ってたかもしれねぇ。アイツもお前には感謝してた」

どうやら、俺が椎名のジョブを言い当てたことで、椎名が救われたようだった。


「今の浦原は危険だ、このままアイツと一緒にいたらお前はいずれ死んじまう。これ持ってここから逃げろ」

守屋はそう言うと俺にパンと干し肉を手渡して来た。


「これは…?」


「さっき騎士がお前に渡そうとしていた分だ。俺がその騎士から貰っといた」


「でも、逃げるだってどこに…」


「歌詞の人から聞いたんだけど、あっちの方に小さな集落があるらしい。きっとそこならお前を受け入れてくれるかも知れない」


守屋は森の奥を指差したが、奥は真っ暗で何も見えない。

その集落までの距離もわからない。

集落に着く前に魔物の餌になるのがオチだろうと思った。

しかし、もう選んでられる状況ではなかった。


「ありがとう…俺、守屋のこと誤解してた」


「今までごめん、これでチャラになるとは思わないけど、今の俺にできるのはこれくらいしか…」


「大丈夫、俺頑張って集落目指すよ!」


守屋からもらったチャンスだ。

もし集落にたどり着いて平穏に過ごせるのであれば、もう俺は浦原に怯えて過ごさなくていいんだ。

そう思えば少し気が楽になった気がした。


「じゃ、また会えたらいいね」


「……そうだな、生き延びろよ」


「守屋こそ、魔王に負けんなよ?」


「そうだな、次会う時は魔王を倒した後だ。皆でお祝いのパーティーでもしよう」


そこまで言うと俺は守屋に背を向けて走り出した。







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