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2.追放

王様の喜ぶ声に反応したかのように、浦原達が起き上がる。


「な、なんだ…ここは」

浦原をはじめ、他の3人も状況がわからずに混乱している。

しかし、俺はこの状況に覚えがあった。

散々読んだラノベの異世界物語によくある展開だ。

そして、きっとこれは勇者召喚の儀であると半ば確信していた。


「勇者パーティに選ばれた…?」


心が少し踊った。

世界から認められた気がしたからなのか、はたまた弱い自分を変えるチャンスを手に入れたからなのか、単に異世界の世界に興奮していただけなのか。


しかし、ふと気付く。

いじめっ子の4人組もいると言うことは、コイツらも選ばれたと言うこと。

これから浦原達(こいつら)とずっと旅をしなきゃいけないと言う事実が誠司の胃をキュッと締め付けた。


「そなたらは勇者の義で召喚した勇者である!」

王様は大いに喜びながら祝福してくれた。


「俺らが勇者…?」

他の4人組はまだ状況が読み込めていないようだ。

いや、あれはきっとこれが夢だと思ってる顔だろう。


「ん?王様…勇者の義で召喚される勇者は4人のはず…5人いるようです」


「なんだ?4人も5人もあまり変わらんだろう?1人多いならより安心じゃろ」


何やら家臣の1人が不穏な話をしているが、王様は気に求めていないようであった。


「で、では早速ですが、手を前に出して『ステータスオープン』と唱えてみよ」


「「「「「ステータスオープン!」」」」」


すると目の前にゲーム画面のようなステータス画面が現れた。


「うわっ!」

隣から4人組の声が聞こえた。

どうやら他の人にも自身のステータスが見えているようだが、他の人からは見えないようになっているみたいだ。

4人組は目の前の何もない空間をマジマジと見ていた。


「目の前にステータスが現れたと思うが、ジョブを読み上げてって貰えるかな?」


「えっと…勇者だ!」

まさかの浦原が勇者だったようだ。


最悪だ、浦原が勇者の力を手に入れたら何をしでかすか分かったもんじゃない!

額に一筋の汗が垂れる。


「素晴らしい!そこのお嬢さんはどうかな?」

王様がまたも歓喜している。


「えっとぉ〜…聖女だって!」

浦原の彼女の浜松は聖女だった。


あんな性格の悪い聖女がいてたまるか!!

誠司は心の中で叫んだ。


「おお!まさしく聖女のような美しさだ!そっちの大柄な君は?」

王様は期待の眼差しを守屋に向けた。


「えっと…俺は神聖騎士…?」

守屋は騎士だったようだ。

確かに騎士に見合った体格なのでよく似合っている。

しかし、俺が気になったのはそのジョブの名前であった。

偶然にも俺がハマっていたゲームの中にも同じジョブがあったのだ。

偶然だろうか…?


「素晴らしい!騎士になるために生まれたような体格だ!きっと素晴らしい活躍をするだろう!そちらのお嬢さんはどうかな?」

王様はまたしても嬉しそうに答えると、椎名風子の方へと視線を向けた。


「えっと…神技師…?って書いてます」


「かみ…ぎし…?」

王様や家臣達が戸惑いを見せている。

唐突なテンションの差に椎名も不安になる。


「あ、あの…もしかしてゴッドハンドではないでしょうか…?」


俺は確信があったわけではないが、ゲームの中で同じ名前のジョブがあったのだ。

神技師と書いてゴッドハンドと読む。所謂(いわゆる)シーフなどの上位職のようなものだった。

罠を発見したり解除したり、敵を探索したりと冒険に役立つスキルを多く持っている。


「おぉ!ゴッドハンドの事であったか!」

どうやらこちらの呼び名は知っているようであった。

緊張が解けたのか、椎名もホッとした表情をしていた。


「そなたは博学であるな、よく今のでゴッドハンドと分かったな」


「いえ、たまたまです…」


「その博学な君はさぞかし優秀なジョブに違いない!さぁ、読み上げるのだ!」

王様は期待に満ちた顔をしていた。


「えっと…」



------------------------

名前 西郷 誠司

年齢 17歳

ジョブ『モンスター合成士』  ジョブLv1/50

体力108/108 魔力52/52

力37 魔10

防15 速10


【固有スキル】

『自動翻訳』『鑑定』『モンスター合成』


【魔法スキル】

なし

------------------------



な、な、なんじゃこりゃ?!?!?!

力37ってどう考えても弱いよな…?

それに、モンスターテイマーじゃなくて、合成士の方?!


「どうしたんだ?申し上げてみろ」

大トリなのか物凄く期待の視線を感じる。


「え…えっと……モンスター合成士です」


ざわざわ…

一瞬沈黙が流れたと思ったら辺りが急にざわつきはじめた。


「な、なんと穢らわしい…!!モンスターに関わるジョブなどもってのほかじゃ!誰かこの者を処刑せよ!」


王様は途端に不機嫌になると俺を処刑しようとしたのだ。


「え?!なんで?!」


「魔物と接点を持つなど穢らわしい!存在してはならぬのじゃ!」


「っぷ…」

浦原が俺を見て笑っていた。


「くくく…モンスター合成士だってさ、根暗のお前にはお似合いだな」


「やっぱ〜、西郷は異世界に来ても不要だったんだね〜勝手に呼ばれて処刑なんてマジ可哀想ギャハハ」

浦原と浜松は俺を見て笑っていた。


「なんで俺だけいつもこんな目に…」

どこに向けていいかわからない怒りで壊れそうであった。


「ちょっと待ってくれ!」


一際大きな声で待ったをかけたのは守屋であった。


「勝手に呼び出しておいて、そちらの都合で処刑するのはちょっと勝手が過ぎるんじゃないか?」


正直俺は何が起きたかわからなかった。

まさかいじめっ子グループの守屋が俺を助けてくれるなんて事があるはずが無いと思ったのだ。


「し、しかし…」

王様が(ども)る。


「お前何考えてんだよ…」

浦原が小声で守屋に話しかける。


「はぁ…」

守屋がため息を一つつく。


「考えてみてくれ、この先俺らは使命を課せられるだろう。きっと毎日がストレスのはずだ。ここでオモチャを壊させていいのか?」


「あぁ…」

守屋の説得に浦原が何か納得したような顔をした。


「それに、ここで西郷を助けた方が、より寛大な勇者としてみんなの目に映るだろう」


「な、なるほど…!」

どうやら説得は成功したようだ。


「そ、そうだな…勝手に呼んでおいて処刑するのは酷い話だぜ!」


さっきまでイケイケヤレヤレのテンションだった奴が何を言うか。

半ば呆れたが、どうにか処刑を免れる流れになりそうなので俺は口を(つぐ)んだ。


「こいつは俺が旅の仲間に連れて行く!それでいいよな?」


「むぅ…勇者様が言うのであれば今回はそれで良いでしょう」


なんとか浦原のパーティに入る事で処刑を免れた!


「ただし、今後何があろうともこの国に入れる事は不可とする。それでも良いか?」


「うーん、まっいいんじゃね?」

浦原は守屋に確認する。


「そうだな、それで問題はない」

守屋も同意した。

気のせいか椎名が心配そうな目で俺をみていた。


まぁ、実質追放処分だ。

だが、今すぐ処刑されるよりマシだろう。


「よかろう。では、話を続けさせてもらう」



〜〜〜〜〜〜〜〜



話を要約すると、ここはアルゴラと言う大陸にあるジェニス王国と言う国だそうだ。

そして、魔王と戦争を繰り広げていて、その魔王を勇者に討伐してもらおうと言う話であった。

まぁ、よくある話だ。


そして、浦原達は旅に出るまで一週間ほど戦いの指南を受けていた頃、俺は街を散策していた。

俺は戦闘職じゃないから一週間やった所で何も変わらないとの事だ。

まぁ、正直それは建前で、モンスター合成士と関わりたくないと言うのが本音だろう。


アルゴラ大陸と言えばゲームの大陸名と同じだ。

しかし、ゲーム内にはジェニス王国なんて無かった。

まだ、街を見回ってみたが、モンスターテイマーが1人もいなかったのだ。


やはり似ているだけで違う世界なんだろうか?

気になって、騎士の1人に尋ねてみた。


「すみません、モンスターテイマーと言うジョブは知ってますか?」


「な!なんて名前を出すんだ!耳にしただけでも悍ましい!」


反応からするとどうやらジョブは存在しているようだ。


「モンスターテイマーなら、分かった時点で処刑対象だ」


モンスター合成士の時の反応を見た時から薄々勘付いてはいた。

やはり、モンスターと関わりを持つモンスターテイマーも処刑対象であったようだ。


「とは言っても、本人達も処刑されるの分かってるから、見つかる前に外へ逃げた人もいると聞いた事がある。まぁ、戦う力のない奴らは逃げた所でモンスターの餌食となっているだろう」


モンスターテイマーはモンスターを手懐けさせるために、ある程度モンスターを弱らせないといけない。

しかし、当の本人の能力は決して高くない。

本来であれば弱いモンスターを捕まえて育てて、他のモンスターと合成させて強くするのだが、騎士の話からするとモンスター合成士と言うジョブは聞いた事がないそうだ。


つまり、この世界のテイマー達はモンスターを捕まえても、強くする手段がないに等しいようだ。


折角モンスター合成士になった所で、当のタイマー達がいなくちゃなんの意味もない。


「どうしてこんな世界に…」


誠司は頭を抱えた。






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