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12 その後のこと

 ウィルバートが退院し、カイルを含むいつものメンバーが執務室に集まった。

 カイルは婚約者に裏切られ、恐らく一番ショックを受けているだろう。しかし彼はしゃんと背筋を伸ばして、冷静に話し出した。


「まず、残念なお知らせだ。例の暗殺者二人組は、自白魔法をかけようとした途端、魔術で自死したそうだ」

「は……!?彼らには、魔術封じの枷をかけたはずでは……」

「外的要因による自死だ。もしも捕まったら自動的に死ぬように、第三者から魔術を仕込まれていたらしい。あの枷は、嵌めた者自身の魔術しか制限できないからね」


 安静を第一に考え、ここまでウィルバートには何も知らされていなかった。アーシャも初耳のことで、とても驚いてしまう。まさか自死するなんて。

 ここで、リオンが話を挟んだ。


「死の呪いの魔術と呼ばれるものだ。これも、昔ローニュ帝国で開発された。現在は、禁術扱いになっている」

「くそっ…………」

「…………酷いことをするのね」


 ウィルバートとアーシャは肩を落とした。あの二人から引き出せる情報は、きっと沢山あっただろう。それを全て封じられたのだ。

 カイルは落ち着いた声で報告を続けた。


「ライザとその家族……侯爵家の一員は、全員捕縛されている。自白魔術によって、一家全体がローニュ帝国の間諜として働いていたことが明らかになった」

「……そうですか。その繋がりだけでも、明示されて良かったです」

「うん。少なくとも今回の暗殺未遂とローニュ帝国の関わりは、明らかになったよ。ノートン侯爵家はその昔、借金で傾いたところを帝国につけこまれ、それからずっと繋がっていたらしい。特にライザは、幼い頃から間諜としての英才教育を受けていたそうだ。ノートン侯爵家は、このまま取り潰しになるだろう」

「リオンの暗殺を依頼した主人については、口を割りましたか?」

「それが、ダメだった。とある人物が帝国に直接依頼したそうなんだが、依頼主についての詳細は知らないと。自白魔術を最大限にかけても吐かなかったそうだから、本当に知らないんだろう」

「そうですか……」


 ウィルバートは難しい顔で黙り込んだ。リオン暗殺を企む首謀者を追い詰めるには、一手足りなかったようだ。カイルの説明に、リオンが続けた。


「これについては、様々な思惑が絡んでいてややこしい面がある。依頼主が頼んだのは俺の暗殺だったんだが、帝国は素直に従わず、俺を生捕りにしようとしていようなんだ。俺の身柄を引き換えに、我が国を従わせようとしていたのかもしれないな」

「敵も、一枚岩ではなかったと言うことですね」

「そういうことだ。まあ依頼主については、俺は想像できているんだが……なかなか、尻尾を出さないな」


 リオンは苦笑いしている。依頼主は間違いなく、この国の中枢にいる人間。中でもリオンを一番邪魔に思っているのは、王妃と第二王子だ。なお第二王子については、『ゲーム』の中ではシロだったようなので、今のところ最も疑いがあるのは王妃である。

 最後にリオンは、からりとしたいつもの笑顔になって話をまとめた。


「まあ今回は暗殺者を退けて、捕まえるところまでいった。これで、敵もしばらくは派手に動けないだろう。結果としてこっちに被害は残らなかったし、上々だ」

「そうですね。リオンとシャロンを守れただけでも、良かったと思います」

「ありがとうな。結局ウィルを、一番危険に晒してしまったが……。本当に、体はもう平気なのか?」

「お陰様で。少し鈍ってしまったから、鍛錬が必要ですけどね」


 ウィルバートは微笑んで見せた。これには皆も安心したようだ。

 ひとまずは大きな危機を脱したということで、話し合いは終了した。

 

 

 ♦︎♢♦︎



 アーシャはその日、退院したてのウィルバートを自宅まで送っていった。彼の部屋で二人きりになると、後ろからふわりと抱き締められた。


「アーシャ、ずっと傍についていてくれて、ありがとう」

「…………っ。わ、私がそうしたかったから」


 すっぽりと大きな体に包まれて、アーシャはどぎまぎとする。そっと後ろを振り返ると、ウィルバートは金の目を細めて、とても優しく微笑んでいた。それにぼうっと見惚れているうちに、唇を塞がれる。


「ん………………」

「…………ずっと、こうしたかった。君を抱き締めたかった……」

「ウィ、ウィル……」

「ん?」

「私、体、変なの……なんか、全部びりびりする。ウィルに触られると……変になるの」


 ウィルバートは目を見開いて、その白磁の目元を赤くした。


「アーシャ。嬉しい……けど、あんまり男を煽っちゃダメだよ」

「……?」

「……これは、分かってないな。少しずつで良いか。婚約もまだ整っていないし……」


 ウィルバートは一人で何やら呟いてから、親指でアーシャの唇をそっとなぞった。その金の目は、なんだか妖艶な光を帯びている。


「そのうち全部、もらうからね?」


 その後もゆっくり時間をかけて、アーシャは何度も抱き締められ、繰り返しキスをされた。解放される頃には、腰砕けになってしまっていたのだった。

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