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権力と猫  作者: 央美音
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教会の力と前世持ち

 目の前で教皇が消えた後、サムディに予定を聞こうとしたら何故か妻に怒られた。教皇の事を聞かれたから帰ったと言っただけなのに、何故だ。


「あなた、教皇猊下がこの国へ訪れたのは実に数十年ぶりになるんですよ。構わないで良いとおっしゃっていても、会食くらいはお願い出来ないか聞くべきでしたわ」


 そうは言ってもな、教皇は向こうの話が終わるとすぐ消えたから聞く暇なんてなかったぞ。


「消えた? つまり、あなた。あなたは、聖女の力を目の前で見たと?」


 そういうことだな。なんだ妻よ。今にも倒れそうだな。これは部屋に戻った方がよいな。今日の予定は全部取りやめだ。

 教会には、聖女の子孫と言われる一族だけが使える力がある。一族には聖女が使っていた力を発現できる人間が生まれる。多数の力を持ち、人格者である者が教皇候補として選ばれているらしい。

 聖女の子孫、かなりの人数がいるから大陸中の教会に散らばっていても一族の勢力が衰える事はない。

 そんな彼らの力は教会の力や聖女の力など呼び方が多々ある。まあ、地域差みたいなものだ。

 教会の力は多岐に渡っているが、よく使われているのは治癒だろう。聖女の子孫は全員使える力で、もし使えなかった場合は一族から名前を消されるそうだ。

 初めて聞いた時は、名前を消すだけで済ませるとは、なんて慈悲深い一族なんだと感動したな。

 治癒は軽い怪我を治す者から欠損した部位を修復出来る者までとかなりの差がある能力だ。病まで治せる者は少ないらしいが、助けを求めて教会を訪れる者は途切れることがない。

 当然、聖女の子孫を国で使おうと考えた国王達がいなかったわけじゃない。だが、実行出来た者はいなかった。真面目に医者を育てた方がよかっただろうな。


「あなた、いつもの元気がなくなっていますよ。今日の予定を楽しみにしていたのなら、私を置いて出かけても良いのですよ」


 何を言うのだ妻よ。ただ、聖女の子孫について考えていただけだ。俺の方こそ考えなしに教会の力のことを話してしまった。まさか、君が倒れそうになるほどの衝撃を受けるとは思わなかったのだ。


「……あなたは、聖女の力を何度か目にしておりますからね。もう、気軽に話すのはやめてくださいまし」

 

 そうだな、卵の事もあるしな。君にもしもがあってはいけない。

 卵のことは夢で聖女に会って預かった話と共に妻とサムディに話した。二人には驚かれたが信じてくれた。

 その後教皇が来たので詳しい話はまだしていない。

 妻が落ち着いた時にでも先程教皇から聞いた内容を交えて話しておこう。サムディはまた警戒状態になるかもしれんな。休むとはままならぬものだな。

 

「今頃サムディも休んでますよ。あなたが命じたのならどんな命令でも必ず成し遂げる男ですもの」


 そうだな、サムディなら今頃お茶でもしているだろうな。


「私はしばらくは休みます。あなたも楽にしてくださいな」


 そうか、なら午後になったら起こすとしようか。その後、お茶にしよう。


「そうしましょう。あなた、おやすみなさい」


 よく休むと良い。

 ……さて、どこまで妻とサムディに話すべきか。卵から孵るものはおそらく猫だ。これだけ猫に執着しておいて別の生物でしたはないだろう。俺にはどの様な猫が生まれるのかが分からないと考えれば良い。猫、種類が豊富だったしな。よし、卵から孵るのは猫かも知れないくらいで話そう。あと、新しい種族の頂点になる存在だとは話して良いだろう。

 前世持ちの事情は絶対に言えないな。俺が選ばれた理由なんて聖女が選んだから、だけで十分だろう。事実だから詳しく話さずともよいだろう。二人はそこを掘り下げるようなことはしない。

 前世持ち、昔からこの世界に迷惑かけていたんだな。けど、それを持ち込んできたのが偉大なる神なのだから、これも偉大なる神からの試練だと思うことにしよう。

 俺が前世持ちだけどな。まあ、俺は前と変わらずに俺なので問題はないな。国王の地位でやれることなんて大体が大規模になるものだ。場合によっては迷惑どころの話じゃないな。

 最近だとプリュセ国が起こした騒ぎだな。前世持ちが迫害されてないか調べてみると、あの国は元々前世持ちから得られる知識で国が成り立っていたようだ。

 とは言っても元々あったものを改良したり、設備が整った場所での製作が可能なものを大陸中の国々に広めていたようだ。

 俺の国も、ビヴァーライセ国と他国を通して幾つか情報提供されていた。道路整備や建物補強など、酵母菌を使った食べ物もあった。

 プリュセ国とこのような接点があったとは驚きだな。

 俺は発信元を調べることはしないからな。

 どうやらプリュセ国民はこういった騒ぎには慣れているみたいで、よほどのやらかしで被害が出ても、元凶以外を迫害したりはしないみたいだ。

 前世持ちを迫害する風潮がある国は幾つか存在している。幸いにも俺が前世持ちになったからと国交断絶までする周辺諸国は出てこなかった。

 前世持ちの存在は複雑だ。今までと違う性格や生活習慣を変える者がいる。それに周りは戸惑うばかりで何もできない。

 何故かこの世界の人間は、前世持ちが分かる。隠そうにも見ただけで分かるのだから、前世持ちになる前から人と関わらない生活を送っていないと必ずばれるのだ。

 俺も前世持ちになった時はどんな風に変わったのかと怯えていたものだ。妻とサムディからほぼ同じと言われた時は安堵した。

 話が逸れたな。とにかく、俺は聖女から卵を預かった。卵から孵ったのが猫だった時は、新しい種族の頂点である存在を膝猫計画に使っても良いと聖女が言っていたのはきちんと話しておかないとな。何も言わずに実行したら妻に激怒されてしまう。

 さて、妻よ。そろそろ起きた方が良い。お茶にしようではないか。


「…………起きてますわ。あなた、少し身支度をしますから、先に行っててくださいな」


 では、先に行って準備をさせておこう。あそこでお茶にしようか、待っているよ。

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