表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
権力と猫  作者: 央美音
4/25

猫はどこにもいなかった

 バーバラ国軍の出番は無かった。その代わりにビヴァーライセ国担当の外交官が、素晴らしい手腕を発揮して、プリュセ国とビヴァーライセ国から賠償金をたんまりと奪ってきた。査問会での集団詰問がきいたかね。

 二国がやらかした出来事は、しっかりと周辺諸国の関係者一同に伝えている。

 これでビヴァーライセ国の平和ボケも治ったことだろう。プリュセ国と友好関係だった為に自分達に被害が出ないならと、プリュセ国の要求にあっさり応じた罰だ。

 長年、俺の国と戦をしていないからと日和見したことに対する平和的報復でもある。

 あの八人が、プリュセ国に戻ったことで起きた混乱など、こちらには関係ないのだ。何人かは死罪になったらしいが、詳しい話を知る気は無い。この数年で生き残りが出れば、そいつに対する警戒度を上げておけば良い。

 プリュセ国、このままだと前世持ちに対する迫害とか起きそうだな。既に起きているような気がするので念の為に確認はしておこう。

 ビヴァーライセ国担当の外交官からの報告にも目を通して、必要なら周辺諸国と連絡を取り合うか。

 二国からせしめたものをどう分配するかと、頭を悩ませている時、サムディから非常に悲しいお知らせが届いた。


「結論から申し上げますと、猫は存在しておりませんでした」


 そっかー、存在しなかったかー、いいんだ、わかっていたことだ。みんな知らなかったものな。

 猫、いないのか。俺の野望の九割は達成出来ないことが決まった。妻にも残念なお知らせをしなければいけないと思うと涙が出てきそうだ。 


「代替案を挙げますと、やはりドラゴンが最適かと。生まれたて限定ですが親ドラゴンから聖女が預かり、守り育てるのは名誉なことですし、頭には尖った角を持ち、丸まって眠る姿は愛らしく、身体に比べて頭部は小さく、しなやかで美しい尻尾を持ち、爪も普段は隠し、いざという時に使う。どうでしょうか旦那様、ご一考のほどよろしくお願いいたします」


 待って、サムディはどうしてそこまでドラゴンを推すの。初めて猫の話をした時も真っ先にドラゴンの話を出したよね。サムディがそんなにドラゴン好きだったとは、今まで知らなかったな。それに俺は聖女じゃないぞ、サムディ。ドラゴンは諦めろ。

 猫には角が無いし、丸まって寝る姿は同じだけど猫はその姿勢が基本じゃないよ。ドラゴンの実物なんて見たことないから、頭の大きさとか尻尾の美しさとか言われても分からないし、ドラゴンって爪を隠せるんだな、驚いたよ。


「旦那様も猫の実態を知らないと聞いておりますだからこそのドラゴンなのです偉大なる神の遣いとも言われているドラゴンの生態に詳しい人間などおりません猫と同じですねあと爪が出たままになることがドラゴンが立派に成長したの証だと言われており仮説です」


 うーん、すまんなサムディ。こんな風になるまで働かせてしまった俺の落ち度だ。少し休みをやろう。だから戻ってこいサムディ。


「いいえ旦那様このサムディ世界のあらゆる場所の生態図集を読み込みきっと偉大で勇大巨大なドラゴンは私が考えた素晴らしいドラゴンで」


 おい、誰かサムディを部屋まで運べ。……え、無傷でサムディを運べる者がいない?

 流石、有能鉄腕家令のサムディだ。毎年撃破数を更新している暗殺者殺しの名は健在だな。

 しかし、それだとどうするかな。今の状態だと俺の命令も聞こえないだろう。

 全く、サムディをこんな状態にする生態図集というのはどれだけ恐ろしいものなんだ。


「ご覧になられますか? 旦那様」


 お、戻ってきたかサムディ。とりあえず、俺が就寝前に軽く読み終わる程度をくれ。あとお前はもう寝ておけ。

 ……今度避暑地にでも行くか。国王としての責務をこなすのも大切だが、妻とサムディを連れて休むことも大切だろう。子供達までは連れて行けない。何があるか分からないからな、念の為というやつだ。

 王太子に俺の仕事を任せるか。そろそろ国王としての国内外別対処方法を宰相たちから学ばせないとな。


「旦那様、まずはこの生態図集大陸南部編その一をお勧めいたします」


 そうか、そんなに数がある図集なのか。ふむ、本の厚さはそこまでないな。サムディがここまで絶賛、いや待て、これを読んでサムディはああなったんだぞ。その一とはいえこのまま読んで大丈夫か?

 けど、サムディが俺に危険が及ぶものを見せるわけないしな。少しだけ、これだけなら読んでも平気だろう。


「旦那様、おはよございます。起床の時間でございます」


 待ってサムディ、俺はまだ寝ていない。軽くって言ったよな。軽く読んで寝るだけの分量だったはずなのに、何で朝になっているんだ。おかしいだろサムディ。

 何なんだこれは、南部特有の生態系を詳しく記入しているだけじゃなく、生物の挿絵まで緻密なデッサンで見るものを魅了する注釈までついている。

 これを寝る前に読み終わらせるなんて勿体なくて出きないぞ。

 こんなものがまだあるのかサムディ、さあ、早く続きを持ってこい。


「旦那様、起床の時間でございます。本日のご予定と国内外から集まった情報のまとめは朝食時に詳しくお伝えいたします」


 お願いだサムディこの続きは南部のどこの生態を記録しているんだ出来れば大陸最南端の話が

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ