下
世界は常に、変動し続ける。宇宙文明とであったのも、その変動の一つであり、また、宇宙が滅びるのも、その変動の中から見れば、常に起こりうる事である。
この世界が統一され、一つの政府の元、統治されるようになってから、早くも300年が経過していた。しかし、その時には、人類統一政府の政治能力は、著しく低下しており、やっとの事、周辺にある、軍事惑星と非軍事惑星の戦争をとめる能力だけしか持ち合わせていなかった。全宇宙的に、経済力低下が激しいのこ世界において、戦争こそが、全ての経済力復興の道しるべであり、また、方法であると言う、戦争論が語られだした時代でもあった。神は、それを止めようとした。しかし、人は、それを聞かず、目先の事に執着し始めた。こうして、全宇宙戦争が、惑星間戦争と言う形で始まった。
最初に起こったのは、軍事惑星と非軍事惑星だった。人類統一政府の話に耳も貸さず、一方的に開始されたこの戦争では、完全に軍事惑星の勝利となった。そして、軍事惑星は、非軍事惑星の技術力を元にし、さらに、さまざまな軍需品を製造し、さまざまな場所を侵略した。その時には、神の力も使っていた。つまり、魔法を使った最初で最後の戦争とも言える。
神は、それを止めようとしたが、軍事惑星は、今までたまっていた文化的停滞感を吹き飛ばすように戦争を続けた。莫大な戦費が使われ始め、世界は、戦争一色になった。次々と徴兵され、愛される者、愛する者を失った悲しみと言うのが理解できぬまま、人は、紙くずのように戦場で散った。そして、神の怒りも頂点に達した時、戦争は、やはり続けられていた。人は、本能のままに戦いをやめず、神は、この宇宙も失敗だと悟った。
そして、使用される魔法の数も質も高等化するにつれ、神の力は減少していった。こうして、宇宙を支えていた神の力がなくなってきて、宇宙は崩壊へと進んでいた。
軍事惑星首脳部は、その話を前々から聞いていたが、噂として処理していた。しかし、その実態が事実となるにつれ、どうしたら自らの命だけは助かるかを考え始めた。それが、神になる事だった。
マギウス神は、新たに神を作る事を禁じた。しかし、彼らは、神になりたがった。全宇宙で神になるための研究が始まり、そして、宇宙崩壊の秒針の音が頭の中で鳴り響いている最中、最初に、人類を束ねる神として存在していた人類神が消滅した。宇宙の神の3人の内、1人がいなくなった事により、加速度的に崩壊は進んだ。そして、光と時間を司る光時神が次に倒れた。こうして、時間は暴走を続け、今までの100年が、1秒になった。指数関数的に崩壊が進んで行き、最後の宇宙が消滅と同時に、マギウス神の体がはじけた。
そして、マギウス神の力を受けて、まったく偶然的に宇宙が生まれた。これこそが、最終的な宇宙へとつながって行く。
マギウス神は、オメトルへ向かう最中、今までの神のことを考えていた。
(今まで、自分が作り出してきた虚栄はなんだったのだろうか。ただ単なる、自己満足だったのではないか)
これまでの事、これからの事、何もかもが未知数である。しかし、神は、このオメトルで生涯を過ごす事になる。運よく、出られる者もいたが、それは、極々稀な出来事で、それが出来たのは、新しい宇宙が出来、その宇宙に高等文明が生まれたその前後と言われている。それまで、誰一人としてその空間から出る事に成功していないので、オメトルと言う、神々の墓場が、いかに強固に出来ているかが分かるであろう。
時は、何もかも忘れると言うが、出てこれた神は、その事を忘れなかった。それは、自身もマギウス神の代理人として神となっていると言う事だった。
「神なき世界シリーズ」のプロローグとして、この作品を発表させていただく事にしました。来月以降、1月1作品をめどに、誰も読まなくても勝手に上げていきます。よろしくお願いします。