表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不変と変遷  作者: 運命を定める者
2/4

忘れられた記憶

人間が絶えず変遷しているだけで、

不変のものは確かに其処に在る。

その国の王様は、あちこちに戦争を仕掛けては征服する覇王でした。

病弱な娘を、安心して住まわせることのできる場所を手に入れるためです。

王様は安寧の地を求めて、戦いに明け暮れます。

「すべては娘のために。私は如何なる戦いにも勝たねばならない」

王様は力を求めました。


そんなある日、魔法使いが王様のもとにやって来ました。

魔法使いは王様に言います。

「負けることの無い兵器を造りましょう」

王様はこれを承認。兵器の製造を命じました。


王様の勅命を受けた魔法使いは、国中の永くない人々を集めます。

その中には、王様の娘の姿もありました。

そして魔法使いは……

人々の心と肉と血と命を奪い、かき混ぜ、固めて不死身の魔物を。

残った骨は砕いて固め、純白の剣を造り上げました。

集められた生命力と怨念が、血肉を求めてやみません。

王様は魔法使いから「負けることの無い兵器」を受け取ると、その場で怒りに任せて魔法使いを斬り刻んでしまいました。

剣は純白のままでした。


やがて王様は決心して立ち上がります。

「もう戦争は必要ない。この剣さえあれば良い」

王様は臣下たちに国を任せて、魔物と旅に出ました。

娘を眠らせるに相応しい、おだやかな場所を探すために。

悄然とした王様と、それについていく魔物。

王様と魔物が旅をしていることはすぐに噂になり、行く先々で、ふたりには石が投げられました。気味が悪いからです。

ふたりは、それらに「強大な力」を返しました。

「もう放っておいてくれ!」

そうして行くうちに、噂をする人は減っていきました。


やがてふたりは、噂も届かないような辺境の村にたどり着きます。

「ここなら大丈夫だ」

別離と哀惜を込め、安息を祈りながら、王様は魔物に純白の剣を突き立てます。

魔物のからだを貫き、地に切っ先が届くまで。

魔物は縫い付けられて動けなくなりました。そして、からだはほどけて、切っ先が作った孔に吸い込まれてゆきました。

王様は村人たちにこれまでのことを話し、最後にこう言いました。

「忘れてくれ。安らかに眠らせてやってくれ」


帰国した王様を出迎えたのは、無数の刃と、冠を戴いたかつての臣下です。

王位を簒奪された者は、立ち去るしかありませんでした。




純白の剣は、永い時をかけて、少しずつ魔物を弱らせていきます。

やがて、魔物は力と理性を失い、不死身の命だけが残りました。


村人たちは、純白の剣を守るようになりました。

王様の最後の言葉は、村人たちに2つのことを忘れさせました。

魔物が眠っていることと、剣が忌むべき力を持つことを。


王位を簒奪された王様だった者は、さまよう旅人になりました。

流浪のさなか、彼について行く者も現れました。

旅人は、その魂の後継者へ、過去と現在を語り、未来を賭けました。




時間は残酷で、あらゆるものが変遷します。

不変だったのは、純白の剣の白さだけでした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ