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戦場で役に立たないと実家を追放された『農耕魔導師』の俺が戦争の歴史を変えました。後悔してももう遅い。

作者: 安藤ナツ

 大地は偉大だ。

 しかし、無限の可能性を秘めた奇跡そのものでもなければ、人類の為に尽くしてくれる母親でもない。

 大地が支えられる人間の数は決まっている。畑から取れる作物の量に限界が存在するからだ。時代が上がるにつれて都市部が広がると――つまり農業に使える大地が減ると――その問題はさらに重要さが増していった。

 文明が高度になればなるほど、人類は餓死の危険性におびえる事になると言うのは何処か皮肉な話だ。

 しかし人類はその限界点を少しでも高くするために、作物の品種改良を重ね、大地に栄養を齎す肥料の改善を繰り返し続けて来た。

 そしてその問題の解決に大きく貢献したのは、農家ではなく魔導師だった。

 元々は大気を操る“操風魔導師”と呼ばれていたボッシュは、大気中の窒素と自らの魔術を反応させることでアンモニアを生成できることに気が付いた。更に触媒を用いることで作成できる硫酸アンモニウムは大量の窒素を含む理想的な肥料――“硫安”であり、この“硫安生成魔法”は農業の歴史を変える伝説的な魔法となった。




 だが、この発見は発見者であるボッシュの身を窮地に追いやることとなった。

 かつては将軍を輩出した歴史を持つ武門の頂点であるハーバー家の扱う魔法として、“硫安生成魔法”は相応しくないとの声が上がったのだ。戦場で戦う軍人達にとって農業は下賤な行いであり、農家等は土を弄るしかない臆病者であった。そんな者達に高貴なる魔法を使うことは魔法に対する侮辱であり、独特なアンモニア臭が漂うこの魔法は高潔な風の魔術としても余りにも不細工だ。

 ボッシュの行いは全ての武家を敵に回す結果となった。

 無論、この魔法に感謝した者は多い。が、別に発明者であるボッシュしか使えないような高度な魔法でもない為、わざわざ武家を敵に回してでも庇う様な者はいなかった。

 国内に居場所を失ったボッシュは帝国を出て放浪し、数年後には小さな国の魔術顧問として収まることになった。



 十数年後。

 ボッシュが辿り着いた小国に、帝国から魔の手が迫った。

 国力の差ははっきりとしており、また魔導師の質も段違いだ。

 二つの国の明暗ははっきりと分かたれた――かに思えたのだが、ボッシュが開発した新たな魔術は事前の評価を覆し、小国に勝利をもたらした。

 アンモニアは確かに窒素を多く含み肥料に適した物質であったが、それだけが全てではない。アンモニアは硝酸と合成されると、硝酸アンモニウムへと変化する。これも肥料として利用できるが、ボッシュは帝国にはこの存在を報告しなかった。

 何故なら、この硝酸アンモニウムと言う物質は爆薬になりうるからだ。この爆薬を用いれば、魔法学園の卒業生達が唱える爆発魔法と同じ程度の爆弾を簡単に増産することができた。そんな破壊的な兵器を与えれば、帝国は必ず侵略に使うとわかりきっていたからだ。

 そんな帝国であるから、ボッシュは帝国が必ず攻めてくると確信していた。

 そして、この日の為にずっと準備を続けて来た。

 地道に爆弾の増産を続け、それを使った戦略を考え、訓練を繰り返した来たのだ。

 そしてそれは、ボッシュの努力は実を結び、戦争は変わった。

 限られた才能を持つ者による魔法の時代は終わり、誰でも扱える科学による兵器が戦況を動かすようになった。

 高貴な血統を持つ貴族達の為の戦場は、職業としての軍人の職場へと変貌する。




 貴変わり果てた戦場に帝国兵は後悔するが、もう遅い。

解説!


この世界で、アンモニアの生成により食糧問題を解決したフリッツ・ハーバーと言う科学者がいました。有名な『ハーバー・ボッシュ法』って奴ですね。

彼はこの発見と発明でノーベル賞をもらうのですが、これが大ブーイングを受けました。


肥料作成工場を、戦時に爆薬工場として利用しただけでなく、毒ガス開発までしちゃったからですね。


今作はそれをファンタジーっぽく落とし込もうとした作品になります。


ちなみに、彼はユダヤ人だったので、ナチスドイツが支配する当時のドイツから逃げ出しています。

リアル追放者だったわけですね。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 史実をファンタジー風に描くというアイデアは普通に面白い。そこにボッシュを持ってくるという選択も上手いです。 史実を知ってても知らなくても楽しめるようになっていると思います。 [気になる点]…
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