表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/3

プロローグ

ぼちぼち更新します。

 

「ようこそ、新たなる世界へ。」

 

 

真っ白な空間にただずむ私に、ソレは両手を広げて歓迎の意思を示した。

さっきまで病室のベッドの天井を霞む目で見ていた筈が、気付けばここに立っていた。

まわりを見回すが、何もない空間だ。

いるのは目の前の金色に輝く人影。

 

「君は前世で充分な徳を積み、次のステージに来た。よって新たな世界への扉が開かれる事になった。おめでとう!」

 

····徳?

そんなもの積んだ記憶サラサラないんだが、、、。

 

思い起こしても特に何かしたような記憶もなく、普通に生きて恋愛を経て結婚し、二人の子供に恵まれて89歳という高齢になってやっと人生が終わった。

そんな普通の人生だった。

徳を積むような苦労もなく、至って普通だった。

首をかしげる私にソレは言う。

 

「あぁ、君の世界での意味合いでなく、我々の世界での徳って意味だから気にしないでね!まぁ、その、とにかく、君は次のステージに来たから新しい世界へ行かなきゃならないんだよね!それはもう絶対の絶対でね?行かないとあれやこれやの色々がまー、そりゃ大変な感じになっちゃうのよ!いや、本当に!だからね?この通りだから、お願いしましす!お願いしますよ〜う!!」

 

ゴホンッと咳払いをし、説明しだしたのだがどんどん早口になり、こちらが何も言ってないのに終いには涙目で土下座までしだす始末。

どうした?神様なのに情緒不安定なのか??

それとも、私が何も言わないのが悪いのか??

 

というか、別の世界で産まれて人生をやり直すのに、強制じゃないのが驚きだわ!

お願いしますって、、、。

普通、こういうのって行けよって放り出される、もしくはチート能力あげるから〜ってメリットを付けて転生するんじゃなかろうか、、、?

生前読んだ転生モノは大概そんな感じで異世界に放り出されていたが。

もし、嫌だと言ったら今の世界で生まれ変わるんだろうか?

 

そこまで考えて、ちらりとソレを見ると何故かプルプル震えている。

あれ?もしかして私の心の声が聞こえてる?

神様だしありえなくはないね、便利だね~と言いたいところだけど、転生モノでは早めに君の心の声は聞こえてるよ的な場面があってしかるべきでしょ?

このままダラダラしていって、うやむやに異世界転生ライフを送らせようって考えなら私も黙っちゃいられないんだけど。

 

半眼になりながらじっとりと見つめていると、神様は体を縮こませたかと思うと吹っ切れたのか自棄になったのか揉み手をしながら、擦り寄ってきた。

 

「いや〜、流石、異世界転生ものを小説からコミック、そしてゲームまでくまなく網羅した猛者ですね!分かっていらっしゃる!そう、私は貴女の心の声も聞こえるし、今から貴女に伝えたいのも実はそれでね。どうかなファンタジー世界、行ってみない?」

 

バチーンとウィンクを飛ばす神様に若干引き気味になるけど、確かに言われてみれば私は異世界転生大好きである。

読むのも見るのも、ゲームするのも大好きだ。

しかし、現実問題で魔獣やらなんやらがウロウロしてる世界で私がどんな位置に産まれるか分からない上に下手したら死亡フラグが立ちまくるかもしれない世界と今まで居た世界を比べれば雲泥の差。

行かなくて良いなら行きたくないのが本音だ。

大体、何故私だけ?

 

「あっ、えっと。もちろん他にも徳を積んだ人達も行かせたよ!今回は君の番って事で、ぜひとも行ってほしいんだよね。ダメ、、、かな?」

 

両手を前で組み首を傾ける。

あざと可愛いポーズってやつだろうか?

しかし、全身金色なので威力は無いに等しいが。

まぁ、生前から頼まれれば断ることがほぼなかった私としては了承するしかないのかもしれない。

もしかしたら、それで選ばれたとかって事はないよね?

無いと思いたい。

とりあえず、返事をしなければずっとココに居なきゃならないのもアレだし、しっかりと要望くらいは聞いてもらわねば。

 

「分かった、けどてんせっ、、、うぶっ」

 

頷くのが早いか、ソレは言質を取ったと言わんばかりに両手を広げた。

途端に強風が身体にぶち当たる。

とっさに顔を腕で覆って飛ばされないように踏ん張るが、努力も虚しく身体が宙に浮く。

 

ちょっと待て!

まだ、話しがっ!

  

「ご了承ありがとう。貴女の役目は『勇者の花嫁』です。では、新しい世界へ。

どうか、、、今度こそは幸せにしてあげてくださいね。」

 

轟音と共に若干早口で神様の声が響き渡る。

飛ばされながら無駄だと分かっていたが、言わずにおれない罵詈雑言を叫んでいたためか、最後に聞こえた言葉は悲しいかな、私には聞こえなかった。

 

もし聞こえたなら、どういう意味なのか風の中、泳いででもしつこく聞いたのに。

強風にさいなまれ吹き飛ばされ意識を失った私はまだ知らない。

新たな世界への扉の先が、自分にだけ理不尽で過酷な世界だと言う事を、、、。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ