1-3
「犬の前、わたし…良い」
「ああ」
犬も海月に続き海豚という以外な人物にであることに戸惑ったのか、それしか言わない
「ウサギ第1回戦会議室Aと第3回戦投票ルーム。それぞれN、R、SR。上が会議室A、下が投票ルーム」
6枚の紙が画面に映し出される
会議室A
N『2日目の10:00-ここで脱出についての作戦会議が行われる約束がされる』
R『参加者は1名のみ。残り1名と[ウサギ]は時間に遅れて行くが全員入れ違いになり開催されていない』
SR『提案者は[ウサギ]』
投票ルーム
N『初日の処刑までの時間は1時間だった』
R『自己紹介を提案したのは[ウサギ]』
SR『処刑される者に投票した回数は2/4、的中率は3/4』
「SSRとUR、映像」
内向きで円形に並べられた椅子
殺風景な部屋
これは「リアル人狼ゲーム」の映像だ
そして、全ての椅子に人が座っているということは初日
一番多く指を指された暴れる参加者を参加者2人が押さえている
ウサギではない女の子が注射器のようなものを打つと少しの間苦しそうにもがいて、やがて動かなくなる
「次UR」
さっきの映像の注射を打つ場面からだ
なにが違うんだろう
映像は苦しみ始めるまでで終わり、次の場面へ移る
女の子が自分で自分に注射を打つ
また注射を打たれるのは女の子
打った男の子が優しく抱きしめて息絶える
主催者側の人間が笑顔で2人の参加者の首を掻っ切る
それで映像は終わる
「処刑の方法、注射。勝負の決着ついたとき、運営側が殺した。ウサギ映像に映るの、全体か足だけか。だから、ウサギは誰も……殺してない」
注射を打った男の子…いや、まさかね
彼はそんな人じゃない
だってあの子が自殺した日の午後だって、普通に授業を受けていた
翌日だって普通に登校していた
彼には「無関心」という言葉が似合う
「3人とも、私のことが大好きですね。それとも私を疑っているんですか」
「ボクは一番「魔女」だったら怖いなって思っただけだよ」
「わたしも」
「同じ」
「そうですか。でもこれで少なくとも第1回戦、第3回戦共に「魔女」となる要素がないと分かってもらえましたね」
「いいえ、第1ゲームの最後の部屋。あそこでゲームマスターを撃っていれば話しは違いますわ」
「それなら誤解されやすいと思ったので自分で取りに行きました。公開しますね。UR音声ありの映像です」
ドラマで刑事が持っていそうな銃をウサギが構えている
向かいにいるのは主催者側の人間…ゲームマスターだろう
その人物がウサギの方向から撃たれる
ウサギは呑気に「えぇ~」と言いながらも駆け寄っている
「素人でも分かる。ウサギが持っていた銃とゲームマスターが撃たれた銃は全くの別ものだ」
「では第1回戦、第3回戦共に「魔女」となる要素がない、となりますわね」
「待って下さい。ウサギ、オプションは使っていませんね」
「この映像を入手するために使いましたが、それがどうかしたんですか?」
分かってとぼけているのか
それとも分かっていないのか
これを全員の前で言うのは避けたい
「この「魔女裁判」が始まってからこの「魔女裁判」のゲームマスターと2人で会話しましたか」
「していません。なにが聞きたいんですか?」
「言えません。でも…信じたいんです。だから確認しただけです。気分を悪くしたのならすみません」
「信じてもらえるならかまいませんが、気になりますね」
「ゲームに生き残れば教えますよ」
小さく笑う声が聞こえた
いや、声というよりは鼻で笑うような
「ペンギンはすっかり調子を戻したみたいだねぇ。ウサギが残り一ヶ所どこに行ったのか聞いた方が効率良いんじゃないかなぁ?」
「そうですね。もう一ヶ所は犬の第1回戦、最後の部屋へ行きました」
「俺か」
いきなり名前が出て驚く様子は疑いようもなく自然体だった
「他の人はどうだったんだろうって思いまして。ただそれだけです」
「俺がそのゲームに参加したかは分からないだろう」
「はい。でも9位で所持金が大きく減らされましたから、なにか残っていると思ったんです。[犬]は自分のそれを回収しに行かなかったんですね。全てあったと思います。引きが悪くてNは持っていないんです」
「ああ、俺が行ったのは――」
「まだ続きがあります。焦らないで下さい」
「悪いな」
「最後の部屋に行った人物は全員「誤解されるような証拠」が用意されていると推定出来ます。だから参加者として行ったことがある人は教えてほしいんです。そこには行っても意味がないってことですから」
背筋に冷たいものが走る
ゆっくり息を吸う音が聞こえた