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忘れられたジニア  作者: ゆうま
27/30

3-7

「なにも…思われないのですか」


―――――

はい

いいいえ ←選択

―――――


「さっきも言ったと思います。感情が分かりにくいと言われますが、ないわけではないので、答えは「いいえ」です」


「そうですか。それなら良いんです。良き未来があることを願っています」


「念のため聞きますが、戸羽さんのことは教えてもらえますか?」


「いいえ」


「そうですか。貴方に幸運があることを祈ります」


ホテルに来るときに迎えに来てくれた人と同じ人がドアの前にいる


本当は分かっている

彼は私があのドアから出て閉めた瞬間、殺されるのだと

だから彼の幸福を祈ることに意味なんてない


「…出て行かれないのですか」


「さようなら」


彼はなにも言わずに微笑んだだけだった


ドアを閉めた瞬間銃声が響く

せめて火炙りでなかったことを良かったと思う私は、間違っているのだろうか


車中、行きと同じようにぼんやりと窓の外を見つめ続けた

時間が遅くなり、辺りが暗くなり始めて初めて気付く


「すみません、家に行く前に銀行と服屋に行きたいです。寄ってもらえますか」


「服屋ですか」


「着替えされられたままなので、自分の服を着たいんです」


「かしこまりました」


確かに渡された通帳には22,000万円が入れられていた

トータルコーディネートをするにしても3万あれば十分良い物が買えるはずだった

そうして生活してきた


だけど、自然と操作して出て来たのは30万円だった

…金銭感覚が狂っている

元から狂っていただろうか

もうそれすらも分からない


なにも分からない

店員に言われるがまま服を試着し、それを購入することにする


「そのまま着て行かれますか?」


「そうします。その服、捨ててもらえますか」


「かしこまりました」


店を出て車に乗り込む

降ろされた場所は家ではなく、マンションだった


「既にお店はありません。生活は今までと同じように送っていただけます。こちらが部屋の鍵です。荷物は移動させてありますので。それでは」


仕事が早い

こうなることが分かっていたからだろうか

もう終わったことはどうでも良い

私は自由だ

自由を手に入れた


部屋は1LD

一人暮らしには丁度良い大きさ

家具は良い感じに配置されていて、私物が段ボールに詰められている

引っ越しの作業の7割は終わっているようなもの


「誰にも邪魔をされない新しい生活…」


笑い声が込み上げる

それを怒る人物はもういない

それだけでこんなに愉快になれるなんて、私は今までどれだけ母親という存在に自分の人生を邪魔されてきたんだろう


「戸羽さんは生き残ったかな。でもゲームマスターになるだけだったらいつ出られるか分からない。だけど戸羽さんはそんなんじゃないよね」


自分で探すのは面倒だし、お金もあるから探偵かな

運転手が「そのまま生活出来る」と言っていたということは、そう出来ない場合もあるということなのだろう

となると名前だけで探せるとは思えない

闇深いところに頼みましょうかね






                     ***






夕方来た、質素な恰好してたのにトータルコーディネートを現金払いしてった女の子の着てた服のポケットに入ってた手紙

それを私は眺めている


開けてはいけない

読んではいけない


そう、心のどこかが警鐘を鳴らしている

そんな気がする


―――――

読む ←選択

読まない

―――――


怖い物見たさと言うのだろうか

あの子の妙な雰囲気も気になってはいたし、少し興味があるのも事実

届けるにしても読まないことには、なにも分からない


あなたの参加した第5回戦のタイトルは『トルコキキョウを枯らさないで』

第6回戦のタイトルは『忘れられたジニア』…


「え、それだけ?なにこれ…」


「読んでしまわれたのですね」


急に後ろから声がして驚いて振り向くと男性が立っていた

遠くからだから分からないけれど、あの女の子の乗っていた車を運転していた男性だと思う


「ど、どうやってここに…」


いや、それよりも


「勝手に読んでしまってごめんなさい。住所とか書いてないから、なにか情報がないかと思って…」


「良いのです。物々交換といたしましょう。断る権利がないのはお分かりですね?」


後悔先に立たず

後の祭り


男性が持っているのは同じ封筒

震える手で手紙を差し出し、封筒を受け取る

恐る恐る開けると、そこには宛名が空欄になっているホテルへの招待状が入っていた


「そういえばお名前をお伺いしていませんでしたね」


嘘を許さないと目が、雰囲気が、言っている


「く、黒崎…美咲…です」


微笑むと漢字を聞きながら記入する


その招待状を持って指定された日時にホテルへ訪れる

行かない方が良いと分かってはいた

でも、行かなくても同じことが待っているような、そんな気がした


「お待たせいたしました、黒崎美咲様」

New Game

しかし彼女は知らない。これから始まるのが「名前当てゲーム」だと

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