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「ウサギ、正直に答えて。ウサギは自分の手で人を殺した?殺してない?」
この真剣な問いにどう答えて良いのか、正直全く分からない
だけど、運命を決める問いなのだと直感している
―――――
殺した
殺してない ←選択
―――――
「殺してないって言っているじゃないですか」
どう答えるべきなのか考えがまとまらないまま口が勝手に答えていた
「…分かった。さようなら」
「さようなら」
「またね」
「え…?」
『「魔女裁判」の決着がつきました』
ほら、私の勝ち
これで全て終わり
『「魔女」を見つけられなかったため』
――ん?
『このゲームはわたしの勝利となります』
「どういうことですか!」
『そのままの意味です。貴方を含める「参加者」は「魔女」を「見つける」ことが出来なかった』
「自分が「魔女」だって言ったら処刑されるに決まっています。誰がそんなことをわざわざす――」
そうか
それを針鼠は気付いて…
背後にある唯一のドアがゆっくりと開く音がする
振り返ると、案内をした運営側の人が銃を持って立っている
「[針鼠]の質問に正直に答えれば…あなたが愚かだからいけないんです」
人に言った台詞が返って来るなんて
もちろん知っていて皮肉で言っているんだろうけど
「さようなら」
銃声が部屋に響いた
***
「ウサギ、正直に答えて。ウサギは自分の手で人を殺した?殺してない?」
この真剣な問いにどう答えて良いのか、正直全く分からない
だけど、運命を決める問いなのだと直感している
―――――
殺した ←選択
殺してない
―――――
「ペンギンの言う通り…第4回戦で殺しました」
理由は分からないけれど、正直に答えていた
いいや、理由は考えればいくらだってある
でもこの答えた瞬間、それを考えてはいなかった
「そっかぁ。やっぱりウサギが「魔女」だったんだねぇ」
「さっき、投票の前に気付いていたんじゃないですか。それなのにどうしてですか」
「だってボクらは絶対に「魔女」じゃないからね」
「…根本から間違えていたんですね」
「そうなんだ。失敗したよねぇ」
軽い口調ではあるけれど、本気で後悔しているのが私には伝わってくる
残りの2人はどうだろう
「もっと早く気付いていれば…」
「仕方がないよ。今回は運営にしてやられたねぇ」
恐らく自身にも言っていることなのだろう
「はい…」
「勝つのは「処刑されていない魔女」だけ…というわけですわね」
「だからゲームが終わる前に「自分が魔女である」と認めさせようとしたのか」
「せいか~い!ボクらもいつまでこうして話してられるか分からないからねぇ、そろそろヘッドフォンを外して良いよ」
「家庭科で出席日数ギリギリのときに調理実習が急遽入って教科担任に泣きついてたもんな」
「黒歴史をさらりと言いますね」
「はははっ、…ん?だが、お前の実家は紅茶店だろ。店の手伝いでなにをしていたのかは知らないが、平気だったのか」
そんなこと気付かなくて良いのに
「小さな火ですから、少々のことは我慢出来ます」
「さっきは妙に怖がっているように感じたが」
「…まるで現実で体験したかのように、はっきりと炎が見えた気が――」
まさか「やり直し」?
悟られてはいけない
いや、もう悟られているかもしれない
だけど、言わせちゃ駄目
「するくらい追い詰められていたんですよ。この作戦が上手くいくかという不安、焼け死ぬ3組の人間。感情が分かりにくいと言われますが、ないわけではないので」
「そうか」
妙な沈黙
気付かれてしまっただろうか
でも、私だって本当にそうなのか分からない
なにかを聞かれても答えられはしない
「じゃ、これくらいにしようか」
「そうですわね。良い旅を」
「ああ、じゃあな」
「さようなら。ありがとう」
『「魔女裁判」の決着がつきました。生き残った「魔女」がいたため参加者側の勝利となります』
この言い方…
針鼠の考えは正しかった
ただ生き残るだけでは駄目だった
でも
でも、私は生き残った
これで全部終わり
背後にある唯一のドアがゆっくりと開く音がする
振り返ると、案内をした運営側の人が封筒を持って立っている
招待されたときと同じ怪し気な封筒
「賞金の25,589万円から諸手続きの費用を差し引いた22,000万円が入金された通帳と登録用の印鑑です。詳細は封筒の中に」
「ありがとうございます」
受け取ろうとその封筒を持っても相手が離す気配はない
「なにも…思われないのですか」
―――――
はい
いいいえ
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