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「ゲームの終了をゲームマスターが知らせるとは書いてありませんでしたよね…」
「でしたら、どうすれば終わると言うのですか」
「全員誰にも投票しない…なんて、どうですか?それが「魔女」はもういないという意思表示になるのでは…と」
「なんの損害もないんだし、一度試してみるには良い案だね。でも…」
やっぱり針鼠は気付くか
「いや、なんでもないよ」
「なんだ?時間は沢山ある。気になることがあるなら言えよ」
針鼠がゆっくりと息を吸う音がする
「本当になんでもないよ。ごめんね」
「…そうか。なら投票するか」
そう言うと投票完了と画面に出る
「良いのですわね?」
「うん」
2人も投票完了になる
あとは私が投票するだけ
引っかかりはある
でも、なんとなく大丈夫な気がする
全く根拠はない
感覚に頼るなんて私らしくないかもしれない
だけど、なんとなく、信じるしかないって思う
『全員の投票が終了いたしました。結果を発表いたします』
お願い
『[リボン]、[犬]、[針鼠]30%。「魔女」は[リボン]、[犬]、[針鼠]の3名です』
「どういうことだ!」
「これは消去法だよ。本当は誰も殺してなんてないんじゃないかなぁ」
「なるほど。全ての回答を検討し、正しくないものから消していく。残ったひとつが正解、というわけですわね」
そんなこと全く考えていなかった
「そうそう、テストで良く使うやつ」
「気付いていたならどうして言わなかった!」
そこなんだよね
でも普通に考えれば分かる
私と財力勝負で勝てるはずがない
それは計算なんてしなくても分かるはず
だけどそれが黙ってやられる理由になるかは別
言わない理由にはなっても、やれれる理由にはならないと思う
「消す順番だよ」
「は?」
同意
「まずルールを大して理解していないであろう蝶を消したのは、突拍子もないことを言って誰かに気付かれちゃマズいから」
全員蝶に票を入れていたと思うけど…?
「…かもしれない。単にみんなと同じで分かってないから邪魔だって思っただけかもしれない。だけど次、あの3人を消したのは正解だった」
「発言量が多く、的確だからですわね」
「それもあるけど、まとまった勢力を一度に消せるチャンスを逃さなかった。3人は頭が良いが故に逃れられないことを悟り、無駄なことをしなかった」
「では[海月]と[海豚]はなんだったのですか」
「さぁ?でもなんとかして2人にするつもりはあったと思うよ。そしてこの方法を提示してボクら3人を処刑する」
それは違う
私にはそんな方法なんてない
「それか、2人が「魔女」でないことを証明したら5人まとめてこの方法をとったのかもしれないね」
正解はそっち
「いつから消去法だって気付いてたのかなぁ?」
―――――
種明かしをする
種明かしをしない ←選択
―――――
「ホルンの第3回戦、投票部屋へ行き、URを見たときです」
「どうしてそう思ったのかなぁ?」
「あれで自ら手をくだしたと言うには、あまりに粗雑です。そこでふと、自分がしたことを思い出しました」
「ふーん…」
火はすぐ近くまで迫っているはず
それなのにこの態度
他の2人も妙に冷静だ
「「魔女」である者を見つける前に「魔女」でないと証明しようとした。全てのゲームでそれが証明出来れば必然的に「魔女」ではないことになります。だからこれは消去法だ、と」
「うーん…消去法って言葉を出したのは失敗だったかなぁ」
「どうだろうな。だが、お前よりも良い案は俺には浮かばない。仕方がない」
「そうですわね。最後まで戦っていただき、ありがとうございました」
「妙に冷静だとは思っていましたが、そうですか」
まだ火は放たれていない
ゲームマスターの接触があって私自らが「魔女」だと認めさせろとでも言われたんだろう
そしてこの勝負、彼らが死んでいないということはまだ終わっていない
あたかも終わったかのような台詞を言って油断させるつもりだ
「やっぱり第4回戦だね」
「私は殺していません。でも、消去法だと気付いてしまったんだから仕方がないじゃないですか」
「それにしてはウサギに都合が良いことが起こり過ぎだと思うけどなぁ」
「知らないんですか、運も実力の内ですよ」
早く終わって
迂闊に発言をすると足元をすくわれそう
「そっか、分かったよ。ウサギは自分の手で人を殺してない。それで良いんだね?」
わざわざはっきり質問する意味は?
私は「魔女」
最後のひとりになっても「魔女」を殺せなかったらこの「魔女裁判」は参加者の負け
参加者の負け…?
参加者同士で勝ち負けを争っていたはずなのに、どうして「参加者が負け」る?
落ち着け
落ち着いて考えれば分かるはず




