3-1
私にはもう、やるべきことがない
犬と針鼠が「魔女」でないことは分かっている
リボンと海月、海豚も今回で証明出来る
残りの面々は全員「魔女」ではない
私の第4回戦は蝶が格好つけて出そうとしたが出せずに死んだと言えば良い
誰かに譲渡したが使えるものではないと判断された
候補が3人もいればバレない
どうして蝶が私に譲渡をしたのかは分からない
けれど、都合が良かった
ゲームを終わらせる方法はルールに書いていなかった
正確には「魔女」のみが生き残る、「魔女」を全員処刑する、という記述はあった
だけどそれを運営が知らせるとは、どこにも書いていない
つまり最後は自分たちで決める必要がある
その方法は考えてある
全員調査を終えた
さぁ、始めよう
私の生き残りを賭けた戦いだ
「えっと…誰も言わないなら、わたくしから」
話し合いの時間が始まっても無言では戸惑うのも無理はない
でもリボンが話さないと誰も話さないと思うけど
「わたくしは自分の第1ゲーム、展望ラウンジへ行きましたわ。指名に成功された者の末路は…とても残酷ですわ。覚悟して見て下さいませ」
参加者と思わしき人物が横一列に並んでいる
音声がないから分からないけれど、投票用紙らしきものを一枚ずつ読み上げている様子
ひとりの参加者が肩を震わせるとゲームマスターが背後から――
鈍器で頭を一撃
その後も何度も何度も鈍器を振り下ろす
頭の形は原型をとどめていない
ゲームマスターは興味がなさそうに死体を一瞥するとエレベーターへ向かった
「あたま、だけ?」
「え?」
「ぜんぶ、ぜんぶ、ぐちゃぐちゃにしないと、すぐにいきかえっちゃうよ」
「生き返る?どういう意味ですの?」
「気にしない。私、言う。これ、譲渡」
海月と海豚が1つのボタンを一緒に押し、床が落ちる
その上に立っていた参加者が宙づりになる
「ボタン、押した」
「わたしも自分のその会場、行った」
「ど、どういうことですの?!」
「全く意味が分からん。その会場では「魔女」でないとされたのに、どうしてわざわざ」
「ふふ、いいの」
「これが正しい」
意味が分からないけど、触らぬ神に祟りなし
「では[ウサギ]とわたくしが[海月]に、[犬]と[針鼠]が[海豚]に100%投票ということでよろしいのですわよね?」
「ああ、そうだな」
「そうだねぇ」
「投票の前に2つ良いですか」
沈黙で返事をするのは対面のときだけにしてほしい
「犬と針鼠はどこかへ行きましたか?海月は行っていなさそうですが、念のため確認させて下さい」
「行っていない」
「ボクも。必要ないからねぇ」
「同じ」
「私はペンギンの言葉を確かめるために、自分の第4回戦へ行きました。言った通り「記憶の欠片」はひとつもありませんでした」
「だからなんだ」
察しの悪い人は話さなくて良いよ
面倒だからリボン解説してくれないかな
「[ウサギ]が最初に行っていないというのが本当であれば、誰かが[ウサギ]の第4回戦の「記憶の欠片」を握っていることになりますわね」
流石
「それが出て来ないということは、[ウサギ]を「魔女」にしようとしているか、持っている人物が既にいないかのどちらかですわ」
「これはなんの確証もない仮定ですが、蝶が格好つけて出そうとして出せなかったのではないか…と」
「それならウサギは「魔女」ってことになるな」
「ですが、今この状況で誰も出さないということは、さっき処刑された3人の誰かに渡って「使えないと判断された」のではないでしょうか。少しでも怪しい行動をしていれば逸らすために利用するはずです」
「じゃあ…わたしが、受け取ったのは?」
「そうだ、矛盾するだろ」
「海月が受け取ったURは「自分が「魔女」なら確実に「魔女」であるという証拠」に過ぎません。では、譲渡された可能性のある「記憶の欠片」は「自分が「魔女」なら「魔女」でないという証拠」だったのではないでしょうか」
「それなら普通ウサギに譲渡するだろ」
「受け取ったのがペンギンなら…どうすると思いますか」
「敵意、剥き出しだった。可能性、ある」
そうそう、そうなんだ
ま、私が持っているんだけどね
「証明不可能な第4回戦以外で私は「魔女」でないと証明されているはずです。つまり、海月と海豚を処刑すれば、残りの4人は「魔女」ではないのではないでしょうか」
「ゲーム終了だ、良かったな。コメントはこれで良いのか」
そう突っかかりなさんな
確かに私は出席日数ギリギリの素行不良だったけどさ
「多分ですが、ゲームは終わらないと思います」




