2-8
「実は――過去とても尊敬していた方は第3回戦で一緒になったわけではなく、第2回戦のゲームマスターだったんです」
全員の息を飲む音が聞こえる
ウサギは無視して少し弾んだ声で続ける
「彼に影響を与えられ、与えたことは多いと思います。ゲームマスターであった彼と言動が似ていることはなんの不思議でもありません」
理解が追い付かない
でもなにか言わないと
「私、そのゲームマスターに会ったことない。でも似てると思った。だから関係ない」
「美しい物語にしようと思ったんですけど、仕方がないですね」
小さくため息を吐く
「ゲームマスターは全員よく似た言動をすると思います。それはある程度の台本があって、正解を導く必要があるからです。つまり没個性というわけですね。似た言動をすることなんて簡単ですよ」
「意味、ない」
「それはどうでしょうか。残り時間に気を付けて発言していますか?」
思わずハッとした
残り時間はあと3分
さっきのゲームの時点でこのゲームのこと
少しも分かってなかった
制限時間があること、考えて…
いくらなんでも先のことを考え過ぎ
これに制限時間がなければ、こう言う
貴方に意味がなくても私にはあるんです
勝手に価値を決めないで下さい
…なんて人
「…分かった。一先ずホルンとスケボーの共有が先」
「自分は良いんですか?」
「…忘れてただけ。突っかからない」
「じゃあ俺から言うぞ。俺は海豚の第1回戦会議室AとB2つの会場に行った」
「わたし…?」
「お前等2人は滅多に話さないし伝わってくる雰囲気が…不思議?だからはっきりさせたかったんだ」
「ふーん?」
「会議室Aにした理由はウサギの第1回戦に行ったときAだったから海豚はAで指名があったのかと思った。だが、指名は行われていなかった」
「どうして会議室Bに行こうと思った」
「全員思っていることだろうが、2人はゲームが始まる前からの深い付き合いだと思う。もしかして第1回戦から同じなんじゃないか。だとしたら指名があったのは会議室B。視点が同じ方が良いと思ったから海豚で行った」
N『この部屋が使用されたのは二度のみ』
SSR『[海豚]は[海月]ぶハニートラップを仕掛けるように言う』
「URは音声だけだ。Rは分からないが、SRはなかった」
『本当は[海豚]の本名知ってる。でも怖い』
『死んだら終わりなんだからなにも怖くなんてないさ。殺したいなら殺せば良い。ホラー映画じゃあるまいし、怨霊になって出て来たりしないさ』
『そうじゃない』
『じゃあなにが怖いのさ』
『殺したら嫌いになる?』
『俺が?まさか』
『じゃあ好き?』
『興味ないね』
『[海豚]の方が好きな人、みんなそう言う』
『例えそうだとして、殺して俺が振り向くとでも?』
『思う。…代わりには丁度良い』
『そうかもね。でも俺は代わりを探していない。だけどそうだな…海月が殺すのが怖いって言うなら俺が殺しても良い。だけど条件がある』
『なに』
『きみの名前も教えて』
『うん、恋人なのにこんな呼び方変。あなたの名前は』
『楽しみはあとに取っておいて方が良い。その方が生きる力みたいなのが湧くと思わない?』
『恋人の名前も分からない世界なんていらない。…全員、殺しに行く』
『え?』
『本気。今から。そのあとあなたも殺すから安心して。この世界で2人になってから、ゆっくり…』
『わ、分かったよ。教えるから』
『…嬉しい』
「…ざ、斬新なハニートラップだね」
気を遣われた
それは分かった
でも分からない
「そうなの?」
「うちは「普通じゃない」。「みんな」言うから、そうかも」
「成功したなら、なんでも良いんじゃないか。「普通じゃない方法で成功したから駄目だ」なんてのは敗者の言い訳だ」
「パパと同じ」
「ママも好き」
「意味が分からないが、分かるように言ってもらわなくても良い。方法が間違いだと思わないだけで、好きだとは思わないからな」
…それも、パパと同じ
ママも好き
でもパパはママが大好き
なにが違う
「…そう」
「残念」
「時間がない、会議室Bの共有をするぞ」
本当にそれだけ?
この気持ちが少しでも伝わってる
それが急いでる理由でしょう?
スケボーは本当はパパ
私たちに気付いて庇ってくれてる
そうだよね?
ここは不思議な世界
なにが起こっても不思議じゃない
殺したパパがいたって不思議じゃないよ
驚かない
だから本当のことを言って?
あいしてるの、パパ