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*宗教的な話しが含まれます
「嘘吐きは舌を抜かれちゃうねぇ。痛いかなぁ。痛いだろうなぁ」
「それを説いたのは仏陀です。でも仏陀はただの人殺しですよ。だからそんなものはありません」
仏陀が人殺し…
ふふっペンギン、面白い
「仏陀は貧しい村に立ち寄った際毒キノコが入っていると知っている食事を食べて死にました。弟子に食べさせなかったこと、知らずに入れてしまっていた老夫婦を気遣って、と美談になっていますが、私はそうは思えません」
「仏陀は自らの立場に疲れて自殺したのだ、とでも言いたいのですか」
馬鹿な質問
「そこまでは分かりません。でも仏陀は自分が死ぬと知りながら毒キノコを食した。これが自分殺しでなくなんなのでしょう」
そう、「自殺」じゃない
あれは「自分殺し」
だって、分かってたんだから
「それに本当に老夫婦を思うなら指摘してやるべきでした。故意でないと証明する方法があるとは思いません。食そうが指摘しようが結果は変わりません。だったら老夫婦を人殺しにしてはいけなかった」
「それで、結局なにが言いたい。時間は限られている。不要な議論をしている場合ではない」
「すみません、ただ天国や地獄などというものは「犯罪者の戯言だ」と言いたかっただけです。仏陀も結局私たちと変わらない人殺しなんですよ」
「そうだねぇ、実際に手をくだした「魔女」を探してはいるけど、ボクらは等しく人殺しだもんねぇ」
「はい」
そう、もう言い訳は出来ない
私たちは人殺し
「ありがとう、ペンギン。じゃあ次ボクが言おうかなぁ」
…健気
「ボクは犬の第3回戦、投票部屋に行ってきたよ。行ったのはその1ヶ所だけ」
「理由を聞こう」
「さっき「魔女」に喧嘩売っちゃったからねぇ、勝てる証拠をって思ったけどそんなの分かるなら苦労しないよ。だから可能性をひとつずつ潰すことにしたんだ。投票部屋なら必ず誰か死んでるはずだから選んだんだよ」
「ホルンやスケボー、リボンという選択肢もあるだろ」
「2人はペンギンの仲間だからもし「魔女」だったら嫌だから行かないよ」
弱い人
「リボンは違うと思う。さっきの声、加工されてなかったでしょ。あの子が言ってた子ってリボンだと思うんだ」
「そうかもしれませんわね。あの声に心当たりがありますもの」
「言ってたっていうのはどういうことだ」
「親友の話しを聞いただけだよ。2人で残って話すこともなくて…そんなとき、あの子が語ったんだ。とても素敵な話しだったよ」
「どんな話しかは分かりませんが、お礼を言うべきですわね」
…寂しそうに、笑った気が、した
素敵な話し
でも、良い話しではない
そういうこと?
「じゃあまず文章のSSR共有するよー。NとRはなかったよ」
SSR『人狼は[犬]を襲撃しなかった』
「思うところはあると思うけど、SRの映像で分かるから黙って見てね」
全ての椅子に人が座ってる
初日の話し合い…じゃない
多分役職を確認してる
犬が背中からアップになる
俯いて読んでる内容が見えるようになる
『人狼に襲われた際は部屋にあるナイフで抵抗して下さい。双方を殺害した場合ペナルティとして死亡します』
「これで分かったでしょー?犬は妖狐だったけど襲われなかったから人狼を殺してない」
「でもこれだけなら処刑で殺したか分からないですよね。勿体ぶらずにURを共有して下さい」
…ウサギ、イラついてる?
「はいはーい」
まだ椅子には全て人が座ってる
初日の映像
また、参加者が死ぬ様子を…見せられる…
一番多く指さされた人物が痙攣して倒れる
誰かが「この椅子…まさか電気椅子…?」と言って映像が終わる
「これで犬も第3回戦での「魔女」の容疑は晴れたねぇ」
「そうだな。これで俺が「魔女」である容疑が晴れる」
「へぇ、聞かせてよ」
…挑発的
だって針鼠なら犬だけが「魔女」なら理想的な展開
だから多分、違う
理想は現実にならない
誰かが理想を描いた時点でそれは夢、虚構でしかなくなる
さっきあーちゃんと死ねなかったことと同じ
早く「魔女」を暴いて
ここから出て
一緒に死ぬ
全部なかったことになるのは死んだときだけ
…それなのにあーちゃん
どうしてリボンの会場になんて
あーちゃんなら会場3に行くと思った
だから会場4に行った
―――あ、そうだ
駄目
誰かに「魔女」に仕立てられる
嫌
だってあーちゃんと一緒に死ぬんだから
誰が持ってる
誰が私とあーちゃんを引き裂く
「嫌…!止めて…!」
あーちゃんの声で思考から現実へ戻る
画面に映るのは大きく開かれた窓から見える晴天
窓はとても大きい
床まで開いてる
一歩踏み出せば落下しそうな場所に立つ女の子
命綱なしでバンジージャンプを――した